地獄の始まり
***「本当に大丈夫……いや、きっと君なら乗り越えてしまうのだろうね。でも君はこれから自分の力を百分の一も出せなくなる。それをしっかりと覚えておくんだ。」
これまで何度も世話になってきた恩人。
「無理しちゃだめだよ……?絶対っ、ぜったい無事に帰ってきてね……?」
まだ幼さが抜けきらないその泣きそうな顔が私たちを見上げて来る。
「俺のやりたいことはご主人のやりたいことだからな!どこだってついていってやるぞ!」
腰に携えたそれはいつだって私の隣にいてくれる。
「残念だけど君はついていけないんだ。君の力はあまりに強大すぎる。この度の目的をもう忘れたのかい?」
「ちぇっ」
「ありがとう。絶対に戻ってくる。それじゃあ……」
大きく息を吸い込む。
私を助けてくれた、そしてこれからもう一度出会うであろう人たちが笑顔で私を送ってくれている。
その期待に応えるように私は大きく声を出す。
「いってきます!!!」
そう言って私はその空間が捻じ曲がったような何かに足を踏み出した。
______________
???【・・・・・・・・・対象の生存を確認】
【システムを組み変えます。】
【•••••】
【完了しました。】
【これより【試練】を開始します】
…………。
(不思議な感覚だ まるで深い水の中にいるような……)
自分の中の大事な部分が少しずつ溶け出していくような感覚が身を包む。
朦朧としていた意識が少しずつ回復していく。
ゆっくりと開いた瞼に眩い光が差し込んでくる。
ひどく懐かしい森の匂いに、名前が思い出せない鳥のさえずりが耳に優しく飛び込んでくる。
戸惑いながらも少しずつ状況を把握できてきた。
状況を把握していくにつれ、自分がいかに危険な状況かを理解する。
知らない間に腰に携えてあったそれは今の私の身を守るための唯一の道具だろう。
どうしてこんなものを持っているのか思い出せない。
でも漠然とした安心感がある、
これさえあればどうにでもなるような。
「っつ……」
ズキリと痛む頭を抑えつつゆっくりと立ち上がり周囲の様子を確認する、
どうやらここは森のようだ。
鬱蒼と生い茂った木々はまるで私を閉じ込めているように私のことを囲んでいた。
立ち上がって初めて気づいた。
大きな木がある。
見上げても先が見えないような大樹だ。
少しばかり目を奪われていたがふと我に帰った。
痛む頭で今やるべきことを整理する。
そして一つの結論に至った。
「とりあえず人を探すか」
-数時間後-
「誰もっ!いなかった!」
それどころか動物の気配さえない。
完全に周囲と切り離された異様な空間だった。
なんじ間も歩いたが結局大樹のところに戻ってきてしまった。
もう日が暮れてきたよう。
朱色に染まり始める空を見上げながら今後のことを考える。
火は起こせる。
食料は携帯していたものがまだ数日分持っている。
まあその食料は硬くて塩辛い干し肉だが。
「どうしよ……」
地獄のサバイバル生活の始まりである。
読んでくれてありがとうございます。
たまにでいいんで見に来てくれると嬉しいです。
投稿頻度は死ぬほど遅いと思います。
今忙しいんで(主に勉強)。




