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アングレカム  作者: ボイラーじゅんいち
15/21

魔法の概念

後日。例の喫茶店前にて。


響子きょうこさん、こんにちは」

「こ、こんにちは。ず、随分と早いわね…」

「響子さんと会うために、今日は予定を早めてきました!」

「そう……それじゃあ人目につかない場所に行きましょうか」


私がそう言うと、王寺さんはモジモジしだす。え、なにその恥じらい…何か変なこと言ったっけ…?


「そ、そんな人目につかないところなんて……うふふっふへへへ…」

「……っは!違うよ!?変な意味じゃないわよ!!??それ私が捕まっちゃうでしょ!!??それに私たち女の子同士……だよ?」

「ふふ、分かってますよ」


いたずらっ子風に笑う王寺さん。くぅ…またからかわれたわ…ッ!


「とりあえず…公園とかでいいですか?」

「も、もう……前のところね、いいわよ、そこに行きましょう」


王寺さんの提案を素直に受け入れ、二人で公園へ足を運ぶ。


「あ、魔法を教える前に…魔法の概念って知ってるかしら??」

「魔法の概念…??」


不思議そうな表情を浮かべる…ということは、恐らく知らないのだろう。

当然と言えば当然…。自分たちの世界にないものの概念なんて知らないわよね。


「教えてあげるわね。魔法を使う上では重要だからよく聞いてね」

「…は、はい!!」

「まず、魔法は強さによって階級分けされているの。一階級から十階級まで。さらに十階級で表せないレベルの魔法を真階級と呼ばれているの。ここまでは知ってるかしら?」

「い、いえ…初めて聞きました」

「知らないのも無理はないわ。…私のいた世界では、この魔力階級こそが強さとしての証。今日は王寺さんの階級も測定してあげるわね」

「ありがとうございます!楽しみですねー!」

「ふふ、そんなに気を張らなくてもいいわよ」

「そ、そうですか?……あ、着きましたよ!」

「人は……いなさそうね…よし」


ここで王寺さんの魔力階級を知れるのはかなり有益だ。

私と比べてどれだけ戦力差があるのかが明確に分かる。

ものの五分で到着した公園の、中央付近で足を止めて会話をふる。


「さ、まずは魔力測定からやってみる?」

「お願いします…!」

「肩の力抜いてねー」


魔力の流れを意識し、王寺さんと向き合う。みるみる王寺さんの魔力を感じる…。一階級…二階級……。しかし、私の予想とは裏腹に、そこで数値の上昇はストップした。


「…………二階級…かしら」

「そ、それってどれくらいなんですか??」

「うーん、日常で魔法を使うのに適している程度ね…例えばライターの火だったり、のどが渇いたときに飲む水を、コップ一杯分出したりとか」

「あはは…やっぱりその程度なんですね……」

「ま、まぁこの世界の人のほとんどは魔法なんて使えないし…?すごいと思うわよ!」

「…そうですかぁ?……ちなみに響子さんは何階級なんですか?」


やっぱり教えないといけないわよね…。王寺さん、今はまだ階級を測定できないようだけど、今後できるようになるかもしれない。嘘の階級を教えてもバレちゃうのは時間の問題だし…。


「…………七階級よ」

「……な、七!?それってすごいんじゃあ…??」

「…そんなことないわよ。いくら七階級って言っても私、戦うのとか苦手だし…」

「それでもすごいことですよ!!ちなみにどんな魔法が使えるんですか??」


ぐいぐいと王寺さんは距離を縮める。その熱意に負けてしまい、私はすんなりと答えてしまう。


「ち、近いわよ!例えば…強力な破壊魔法とか…??」

「教えてください!!!」

「教えないわよ!!!??」


危ない危ない。とてもじゃないがそんな魔法をこの子に教えるわけにはいかない。敵をパワーアップさせてどうするの私!!


「ちぇーー…」

「そ、それに…仮に教えても使えないわよ?魔力階級足りてないし…」

「た、たしかに」

「と、とりあえず、二階級でできる魔法…雷の攻撃魔法はどうかしら?」

「それかっこいいですね!早速お願いします!!!」


まぁ雷魔法って言っても、ちょっと強い静電気くらいだけど。


「じゃあ、まずは人差し指を前に突き出してちょうだい」

「……こうですか?」

「そうね。次に雷を…電気を指先にイメージするの。そして、強く【願う】…電気を放出することを…ね」

「強く…強く………………はぁ!!!!!」

「ひゃ!!??」


刹那、王寺さんの指先から放たれた電気…いや、雷は公園の遊具を塵とした。

おかしいわ…。二階級の力を遥かに凌駕りょうがした魔法…まるで父さんの魔法……。


「……………再生リザレクション…」

「わぁ!すみません!!遊具が……って、あれ??直ってる…」


私の魔法で遊具は新品同様に再生された。それよりも気になるのはあの威力。

………父さん程ではないかもしれないけど、少なくとも殺傷能力はある攻撃魔法だった。


「…王寺さん、今の魔法って……」

「……あぁ〜………たぶんこれですね…」

「…それは……!」


彼女が首元から取り出したネックレス…神晶だ。能力は知らなかったが、まさか魔力を底上げする神晶なのだろうか…?しかし、私が神晶について知っていると何かと面倒だ。ここは知らないフリをして…。慎重に……。


「な、何かしら…?」

「【夢の神晶しんしょう】っていうんですけど、夢に描いたこと…強く願ったことが現実になる力があるんです。それで電気を放出することを強く願ったので、威力が増したのかと…」

「…正直言って規格外ね…今の魔法……。とてもじゃないけど、二階級では放てない威力だったわ…」

「そ、そうですか??えへへー褒められちゃったぁ」

「…すごいことよ。誇ってもいいわ」


私は驚愕のあまり、しばらくその場を動けなかった。あの魔法が放出された瞬間、階級が一気に上昇した。数値で言えば六……。神晶の力…いえ、夢の神晶の力でしょうね。願えば思い通りになる力。時間の神晶よりも危険かもしれないわね…。


「私にも魔法の才能があったんだ…ッ!!」

「それは言いすぎよ」

「なら見せてもらいましょうか…本物の魔法を」

「だから言ってるでしょう?私は特に………………あ」


攻撃魔法は苦手だが…………一つ。王寺さんを驚かすのにいい魔法を思いついた。

王寺さんにちょいちょいと、手招きし、王寺さんの手の甲に、そっと手を置く。


「………………?響子さん??」

「よく空を観ててね………星河一天せいがいってん!」

「空って……ッッッ!!??」


空を見上げる王寺さんの横顔ときたら、それはそれは満足のいくものだった。

お昼時、見上げる空には星の川。

これはこの世界の住人には、とてもじゃないが体験できない奇跡だろう。


「星が………………こんなに………………」

「ふふ、私の一番好きな魔法よ」

「なんだか……すごく………………すごいですね…………」

「すごいしか言ってないじゃない」

「だって……こんな幻想的な世界…………………あっ」

「は~いおしまい!どうだったかしら?七階級の実力は」

「なんだかこう………………………………すごかったですッッッ!!!!」

「もう、それしか言わないんだから……ありがとね」


王寺さんの心はまだ幻想の中だ。

ものの数秒でふと我に返ったのか、目を輝かせて迫ってきた。


「っは!響子さん、私も今の魔法、使えるように頑張ります!!!」

「あら、言ってくれるわね。七の壁は大きいわよ?ついてこれるのかしら」

「精進します!!」


夕日が沈み、夜のとばりが下りて来る頃。王寺さんに別れを告げ、急ぎ足で帰路に着く。すぐさま私は、父さんの部屋の扉を叩き、今日の出来事を伝えた。


「ふむ…夢の神晶か…」

「うん、夢…目標を強く願えば、それが思い通りに、現実になる力よ」

「神晶…我々が思っていた以上に厄介かつ強力かもしれんな……」

「で、でも今は順調よ!?だから私………私まだできるわ…!!」


父さんの考え込む姿に、つい焦ってしまい、声を荒げてしまう。


「……誰もお前を責めとらんよ。良き情報を入手してきてくれた。引き続き頑張ってくれ」

「…っ!!………ありがとう、父さん…明日も頑張るわ。おやすみなさい」

「…おやすみ」


父さんは私を久しぶりに褒めてくれた。そう、私が欲しかったのはこれだ。褒めてほしかったのだ。愛情が欲しかったのだ。王寺さん………とんでもない力を秘めているようだけど、まだまだ才能が開花していない。このチャンスを逃すまいと、私は新しい計画を立て始めた。




「聞いていたか。タナカ」

「はい」

「響子には悪いが………ゆっくりでいい。後は任せたぞ、他の三人にも伝えてくれ」

「…………了解です。失礼します」

「………………神高会四天王とも呼べる力、どこまで進むもんかな……」


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