第一話その3 手紙
そこには達筆な文字でこう書かれていた。
『拝啓 親愛なる我が息子たちへ
やあ息子たち。happyかな?
お父さんとお母さんはとてもhappyな毎日を過ごしています。アマゾンに行きワニと戦ったり、クマに襲われたり、まあ大変なこともありますが、元気にやっています』
さすが母さんと父さん。どんな時でもhappyな精神を忘れない人たちだ。俺は改めて感服する。手紙はまだまだ長く綴られていた。
『この手紙を読んでいると言うことは、ツノちゃん(仮名)は無事貴方達の元へ辿り着けたと言う事になります。ツノちゃんはとある遺跡に行った時に倒れているのを偶然見つけたのですが、過去の記憶がまるまるないらしく、私たちは力になってあげようと決めました』
俺の父親は考古学者もやっているらしく、たまに出土された埴輪などが送られてくる。今回は埴輪じゃなくて完全に人だったが。まあ、さすが我が親ながら正義感が強い、と言ったところか。俺たちのもとに送ればいいと言う考えは少々理不尽だが。
『レオンとシオンならきっとツノちゃんを家族として可愛がってくれると信じています。あと一ヶ月ちょっとで帰れると思うので、ツノちゃんをよろしくお願いします。増える食費やら何やらはいつもの口座に振り込んでおきます』
理不尽だ、やっぱり理不尽! 落ち着け俺、ポジティブになるのだ。この不思議なツノちゃん(仮名)と一緒に暮らせるのは普通ではありえないこと、つまり未知との遭遇だ。
『少し早いけれど、2人への誕生日プレゼントになれば幸いです。ハッピーバースデートゥーユー』
前言撤回。いつもながらhappyすぎる母親と父親だ。俺たちの誕生日は一週間ほど後だが、やはり帰ってきてくれないのか。
『P.S.ツノちゃんの性別ですが、お医者さんに見てもらったところ両性具有のようでした。くれぐれも手は出さないように、気をつけてくださいね』
両性具有? ホワッ? そう言う人がいることは耳にしたことはあるが、実際に見るのは初めてだ。つまり女でもあり男でもある、ということだよな……?
「シーオーンー」
「わ、わかったから一旦離れてくれ……!」
俺の後ろではシオンとツノちゃん(仮名)が一進一退の攻防をしているところだった。改めてツノちゃんの容姿を見る。
長めの金髪で、編み込みが入っており、額からは生える角は羊のように太く、丸まっている。服装はふわふわした上着を羽織り、口元を隠すようにマフラーを巻いている。やっぱりどちらかと言うとファンタジー世界の獣人だよなあ。