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第一話その2 こにちは

 アパート玄関掃除を全速力で終わらせた俺は、リビングに寝かされているソイツをマジマジと見る。


 くうくうとストーブ前で寝息をたてる角の生えた子供――少年? 少女? を眺めているとその目がぱっちり開いた。開いても開いたで性別がわからん。


 それより言葉が通じるのか不安だった。目の前の子供――10歳くらいだろうか。その子は首元に巻かれたマフラーを口元を隠すように巻き直すと、「こに、ちは」とぎこちない言葉を話す。今のはこんにちはでいいのだろうか。


「ああ、こんにちは」


 当たっていたのか、桃色の瞳を細める。笑っている、そう確信した。と言うか声でも性別がわからん。声変わりをしていない男の子のようでもあるし、女の子のような声でもある。


「こにちは、レオン」


 そう俺を指さした子供は、とても楽しそうに笑った。いやいやちょっと待て。そんな流暢に俺の名前を呼ぶな。初対面では? 俺はこんな角っ子を見た記憶全くないんだが!? 考えを巡らせていると頭がオーバーヒートしそうだ。こういうのはシオンばっかりに任せてきたからなあ……!


「レオン、レーオン」

「は、はーい! こ、これでいいのか?」


 まるで小さな子供のように俺の名前を繰り返す。俺が考えることをやめた瞬間――ふわり、と細い腕で抱きしめられた。


「ありー、がと……レオン」


 かけられた言葉と、その行動に俺は「どういたしまして!」と訳もわからず抱きしめ返す。抱きしめには抱きしめで返す!これが礼儀である!!


 内心驚いたが好意には好意で返さねばならない。これも近所のお兄さんからの教えだ。何もわからないが、なんとでもなれ、と思った。


 その時、足音が聞こえた。振り向くと、微妙そうな表情をして立ち尽くしている我が弟、シオンの姿があった。声からこの子が起きたことに気づいてマグカップに入れたスープを三つ運んできてくれたのだろう。だが、何故こんなにも微妙そうな、どこか不機嫌な表情なのだろうか。


「はい、スープ。熱いから気をつけてね」

「あ、ああ……ありがとう、シオン」


 その時だった。この子の視界にシオンが入ったらしく、俺を飛び越え今度はシオンに抱きついた。俺は粘度のあるコーンスープに指が入り火傷にのたうち回っていたが、「シオ! シーオーンー!」と言う声だけが聞こえた。


 どうやらこの子は俺とシオンのことを知っているらしい。その事に驚いたが、それより彼?彼女?が寝ていたところにあった封筒が目にはいった。


 封筒を掴むと、いまだにシオンに抱きついているその子と、顔を好調させているシオンに向かい「これ、なんだ?」と問いかける。その子は俺の言葉に振り返ると、「レオンとシオンへおてがみ」と屈託なく笑う。俺とシオンへ手紙?


 その封筒を開けて中身を読もうとした。その見覚えのある筆跡に驚きを隠せない。

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