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第一話その1 角っ子、拾いました。

 積もった雪が溶け、空が青く澄み渡る季節、春。俺はいつものように部屋のカーテンを開け、日の光を目一杯浴びる。今日も良い朝だ。こんな日は決まって良いことが起きる。根拠はない。俺はそう信じることにしている。何故なら俺はそういう男だからだ。


「レオン、朝だよ……って、もう起きてたんだ」


 そう言って眠そうな目を擦って出てきたのはスーパーハイパーなんでもできるよく出来た俺の双子の弟こと笠谷(かさや) 紫苑(しおん)


 そしてこの俺こそがポジティブしかとりえのない男、笠谷(かさや) 玲音(れおん)。俺たちはこの2人でアパートの管理人をやっている。何故管理人をやっているかと言えば、世界中をhappyに飛び回っている親の代わりだ。


 かと言って親を恨んだことはない。たまに奇妙なお土産を持ってきてくれるし。最近どっかから送られてきた謎の置物が20個を越えたが。何かあるごとにhappyそうな手紙と写真が送られてくる。最低でも一ヶ月に一回。俺はそれをとても楽しみにしている。


「朝ごはん作るよ。レオンは今日玄関掃除の日だよね」

「ああ、そうだったな。朝食は任せたぞ我が弟よ!!」


 はーっはっは!と高笑いをしながら顔を洗うために洗面所へ向かう。俺を超える超ポジティブな近所のお兄さんによれば、喋り方や高笑いはポジティブの必須らしい。そう教わったので俺は小学校の頃からこの喋り方を貫いている。


 顔を洗い、小便を済ませ、部屋に戻り着替える。今日は休みなのでパーカーにジーンズだ。春とは言えまだ風が冷たく冷える。風邪をひいてはいけないので上着を羽織ると箒とチリトリを手に取る。


 玄関から顔を出すと予想通りの強風だ。扉を開けようと力を込めれば、立て付けの悪い扉はガタガタと揺れ音を立てて開いた。


 そこに合った光景に、俺は目を奪われた。まるで外国人のような金色の髪に、ベルのついたワンピース?のような服を着た子供が倒れていたからだ。その子供の額にはツノが生えているのがわかる。外国人というか、もはやファンタジーだ。目は固く閉じ、息をしているのかもわからない。


 行き倒れ? 誰かに襲われた? 何故うちの前に? と色々疑問が湧いては消える。その前にまずは生きているかの確認だ。俺はその子の口元に手をやる。微かに息がある。まずはこんなところじゃなくて暖かい場所――部屋の中にいれるか。


 その体は子供とはいえ軽く、ちゃんと食べているのか不安になる。俺はその子を背負って部屋の中へ戻った。シオンはなんと言うだろうか。怒られるかもしれない。だが、俺の正義感がコイツを助けろって煩いんだ。


「おーいシオン、なんか行き倒れてたから人拾ってきた!」

「はぁ? それってどういう――うわ、ほんとに拾ってきてる」


 黒髪に眼鏡をかけた我が弟は心底驚いたような表情をして、俺に背負われている角っ子を見た。我が弟なら『まずは警察』とか、『どうして持って帰ってきたの』とか言いそうなものだが、彼は静かに「とにかく目を覚ますまで温めてあげよう。俺布団用意してくる」とパタパタ自室へ走っていく。


 さすが優秀な我が弟。俺の正義感が止まらないのもわかってらっしゃる。


 だが、これが俺たちの人生を変える一手になるとは、俺もシオンも、もしかしたら俺に背負われているコイツも知らなかったんじゃないかと思う。

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