7話
翌日、学校に向かうと教室荒れ果てていた。机やいすは倒れ、割れたガラスの破片や、倒れた机から飛び出したであろう教科書が散乱していた。一部無記名なものもあったため、これから迷子になる教材が増えるだろう。
「うわ、最悪。教室大荒れなんだけど、今日朝地震なんかなかったよな?」
「ほんとだ。おう、地震なんてなかったぞ」
「……っ!」
後ろから聞こえてくる男子の声にやはりかと確信する。彼女にあのネックレスを貰ってからずっと様子がおかしかった。クジラの声なんて聞こえていなかったのに、やはり私が億劫だと思った場所に地響きが起きるようだった。
「さぁ、この状況どうしようかねぇ」
「とりあえず直す?」
「そうすっかぁ」
そう言って私の隣を通り過ぎて机を起こし始めるクラスメイト。申し訳なくなって私も少し手伝い始める。でも、彼らの方がやはり仕事は早く、さっさと机は原状復帰していった。いつも対格差を見せつけられる。
「あの…。ご、ごめん…」
「ああ、彼方さん。なんで謝るの?気にしなくていいよ、な?」
「そーそー、別に気にするまでもないよな」
そう言って彼らは荷物だけを置き、教室を出て行った。そこに立ち止まっている間にクラスメイト達がどんどんと入ってきて自分の教材を自分で回収して、席についていく。
その光景は一定の動きを繰り返すロボットにも見えて、それは奇妙さを超えて気持ち悪さすら覚えるほどのものだった。少しの不快感に目眩を覚えていると、私の友人である優妃が話しかけてきた。
「流里?大丈夫?」
「あ、優妃。うん、大丈夫だよ」
「て言う割には、顔色悪いけど…。本当に?」
「ホントだよ。心配かけてごめんね」
「謝るくらいなら保健室に行って?心配だから」
「大丈夫なんだけどなぁ…。まぁ、分かった」
「うん、行ってらっしゃい」
彼女の優しさにまた甘えて私は保健室に向かう。私はいつも誰かの優しさに甘えてばかりだなと思う。今までは紫苑に、そして今は優妃に甘えてしまっている。そんな自分に対しての嫌悪感を取り払うことは難しかった。もう、誰かに甘えすぎるのもよくない気がして、保健室に向かうとは言ったものの引き返して教室に戻ることにした。もちろん優妃には心配されたが大丈夫だからと言ってすぐに離れた。これ以上誰かに迷惑はかけたくないし。頼りすぎてしまうのも嫌だった。顔色が無駄に悪いのも感覚的にわかってはいる。でも、保健室の先生にすらも今は迷惑をかけたくなかった。迷惑のかけ方すら忘れてしまえば、私も楽になれるのだろうか、それとも楽になる方法なんて実はないのだろうか。
なんて考えている間に、また地響きが起きた。




