2話
その声が聞こえた瞬間、地面が揺れた。だが、周りには何ら影響なんてないらしく、今違和感を覚えたのは私だけのようだった。
「何々…何だったの…?」
悲しみに浸る間もなく彼女の遺影やら何やらが倒れてきた。周りは何も起きていないのに倒れてきた遺影や花瓶に驚いていた。まぁ、彼女の両親と私しか今ここにはいないのだが。彼女の遺影は私がギリギリで抱えたためか無事だったが、周りにあった花瓶は不幸にも割れてしまっていた。そんな中、彼女の家族が心配していたのは彼女の遺影の安否ではなく費用のことだった。割れてしまった分の弁償代はどうなるんだと話しているのを聞いて、私の中では嫌悪感がどんどん増していった。彼女の両親からしたら彼女よりも大事なのは自分たちのための金なのだ。それなら、家族葬だけで終わらせればいいところを、なぜあの人たちはそうしなかったのだろうか。心から不思議である。建前だろうか、それとも気が変わったのだろうか。
「いくら取られるの?」
「ただでさえお金がないんです!」
どこまで、自分たちのことしか考えていないのだろうか。自分は娘の医療費をすべて浪費しておいて金が無いだなんて、なんともおかしな話だろう。娘に散々高い鞄やら服、靴やらを買い与えていたくせにもう一人の娘にお金を落とすのは惜しいのかと思うと本当に理解ができなかった。それでも、よその家に口を出すのは申し訳ないし気が進まないので、一言だけかけて帰宅することにした。
「それでは、今日はここで…」
「あ、うん、見苦しい姿を見せて、ごめんなさいね、流里ちゃん」
「いえ、大丈夫です。それでは…」
そう言った瞬間、またあの声が聞こえた。そしてまた地響きが起きる。ただ、さっきと違ったのは彼女の家族にも実害がでていたことである。
「うわっ、なんだこれ!」
そういって怯える父親。
「何なのさっきから!おかしいじゃない!」
そういって怒る母親。
「お母さん!お父さん!どうなってるの!?」
そういって両親に訴えかける娘。
「あのー、花韮様…?」
そういって困惑している職員。
「…………」
それを見て何も言えなくなっている自分。
そんな空間に耐えかねて私は、その場所を飛び出した。家までの道を自転車で走る。気が付けば雨が降り始めていて、着ていた制服は水を含んで鉛のように重たかった。
そこからの記憶はない、気が付けば家についていて、着替えて、ベッドの上に居た。
「何だったんだろうあれ」
そう考えながら、天井を見つめる。普段は見慣れていたはずの光がいつも以上に眩しく感じた。今はもう何も考えたくなんてなかったが、それでも頭の中に今日の鳴き声、地響きの瞬間、そして彼女の家族の困惑の声だった。
「彼女の恨みが出たのかな…。だとしたら、二回も襲われた私は随分と恨まれてるんだね。ごめんね、紫苑…」
彼女のあの手紙も実は私に対する、恨みつらみなのではないかと思い始めていた。けれども、私にはもう何ができるのかすら分からない。だから、私には彼女の手紙に書かれていた『生きて』という言葉の通り生きるしかなかった。




