第4話 元の姿に戻せ
藤桜芽です。
『生かし神と霊感術師』をお読みくださりありがとうございます。
霊医は『れいい』というもので、実際にいます。
髪の色の再現がイラスト制作者の限界でできていないのがちょっと残念です。
もっと精進します。
いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
「何をしたんですか!?」
右手には、今、図らずも少女・坂巻青葉に打ったばかりの空っぽの注射器。
「ちいと強引で申し訳なかったけどよ」
言いながら、ダニエルの肩を左手でポンポンと叩いた。
「けど、何です?」
ダニエルは、右手でその手を振り払った。
「お前に『生かし神』に戻ってもらった。さっき俺がちいと噓ついて、『霊医』だと言ったけどよ。実はお前は『生かし神』って言う、俺とは別の職業だ」
「何をおっしゃっているのか……」
「自分の姿を見てみろ」
ジャックはぴしゃりと言った。
「……!?」
言われた通りにして、ダニエルは絶句した。
光も通さぬ漆黒の髪が、暗がりの中のわずかな光で「銀色」に光っている。着ている物は黒いマントと装束のままだが。
「瞳の色も、元通りになったぜ」
「元通り……?」
「ああ、きれいなエメラルドグリーンの色だ。お前、やっぱりそっちの方が似合っているよ」
鏡がないので瞳の色は確認できなかったが、肌の色は浅黒いままのようだ。ダニエルはそれで少し安堵した。
しかし、この姿の変わりようは……。これでは、ドリム様に気づいて頂けなくなる。いや、逆に死神は皆、瞳も髪も黒、そして装束も黒な者が多いので、逆に目立ちすぎるかもしれない。増してや、自らの瞳がエメラルドグリーンとは……。
「ついでに、その服も変えてほしいところだがな。生かし神が、死を連想する黒い格好なのは、ちいといかんからなあ」
そういって、ジャックはダニエルを上から下まで眺めまわした。そして同じように自らの格好も腕を伸ばして眺めまわす。
やがて、何か思いついたように、ぽん、と手を叩いた。
「俺のと変えるか? 下も含めて」
「断ります」
ダニエルは即答した。ジャックが着ているのは、つぎはぎだらけの茶色い作務衣だ。そして足元は下駄だ。
「……そうだよなあ」
ジャックはそう言って溜息をついた。
「とにかく、私の姿を、元に戻していただけませんか? これではドリム様のもとにも帰れません。他の死神にも怪しまれます」
「だーかーら!」
ジャックは軽く舌打ちをした。
「それが、その姿が、『生かし神ダニエル・ロイ・モルガン』、お前本来の姿だって―の!」
ダニエルは食い下がった。
「納得できません! だいたい生かし神って何なんですか!? 霊医も何なんですか?」
「霊医はな、人間の病気を霊的に、つまり人間の目には見えない世界上で、治す医者だ。俺はこのメスで人間の霊体にくっついているガンやポリープ、心の病気などを切るんだ。まあ、人間にとっては見えない世界の手術者だな。天界では俺らのような者を『霊医』と呼ぶ」
「じゃあ『生かし神』は何ですか?」
「一方で生かし神はなー……っと、青葉ちゃんが起きるようだから続きはまた今度だな」
ジャックは青葉に吸い込まれるようにして、その場からすうっと消えた。
お読みくださりありがとうございました!
次回をお楽しみに!