第42話 あと3万キロ
今回はお馴染みになりました、同名コンビのコントでございます(?)
彼らは一体どこに行くんでしょうか? まだお楽しみに!
いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
「何だって!? 本当か!」
端末で通信をしながら突如大声を出したジャック・リーに、右隣に座って運転していたジャック・ボーガンは驚いて目を向けた。
「それならば、リザ・バートを行かそう。あいつはまだ霊医としては見習いだが、メスで魂の治療ぐらいはもうできるはずだから」
ボーガンは、『リザ・バート』の名に聞き覚えがあった。
「おい、リザ・バートってのは……俺も知ってるが、元死神、か?」
「ご名答。そうだ。俺の殺した死神の一人だ」
「じゃあ、もう白いのか? 眼鏡まで?」
そう言ってボーガンは白い彼女を想像してみた。小柄な、黒縁眼鏡のおかっぱ頭の女死神だったはずだが。さすがに眼鏡までは白くないだろう。
「そうだな、今は眼鏡の縁は赤いな」
赤か。うまく想像できなかった。
ボーガンは話題を変えた。
「なあ、俺ら天界を飛び出してどこに行こうとしているんだ?」
「どこへ行くかもわかってないで、ボーガン、お前運転してたのか」
ジャックはため息をついた。
「お前が教えなかったからだろぅが」
「いや、お前カーナビに書いてあるだろ!? そこ見てんのかと……。案外、お前抜けてんな」
「お前に言われたかねェよ。言ったろ、俺はお前だ、って。いや俺はお前だって、だったかな?」
ボーガンは言いながら混乱した。
「どっちでもいいけどよ」
「良くねえ!!」
そう言ってボーガンがハンドルをバン! と叩くと、『ビー!!』とクラクションが鳴った。しかし鳴らすようなものは今はどこにもない。つい先ほど、10分ほど前か、宇宙ゴミっぽいものにはぶつかりかけたが。
「あっぶねえな。そろそろ俺が運転代わるか?」
ジャックは通信を切ると、ぐいとボーガンの方に体を寄せた。ボーガンは驚き、狭い車内で逃げた。
「お前の運転はな、ちいとトロいんだよ。しかもフラフラだし」
「宇宙なんか運転するのは初めてだから仕方ないだろうが! この狭い車内の中で運転代われるもんなら代わってみやがれ! ったく、後ろの荷台はすごい長いトラックの癖に、何でこんな車内が狭いんだよ!?」
「そりゃあ、おチビさんの女房と仕事するための車だからだよ」
ジャックがそう言うと、ボーガンはイラっとしたように舌打ちした。
「女房自慢しやがって。俺の『トレードマークを返せ』って言っとけ!」
「あ、でもこんな長距離ランデブーはしたことないな。何でお前が初めてなんだよ!」
「それはこっちのセリフだ!」
とここで、ボーガンはカーナビを見て、素っ頓狂な声を上げた。
「えーと、『ハニエルの家』まで、あと3万キロ!?」
最後までお読みいただきましてありがとうございました!!




