第40話 アノオニイチャン
とうとう40話まで来ました。今年の目標の50話まであと10話。
更新頑張ります!
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よろしくお願いいたします。
一体いつまで泳げばいいんだ!?
しまい神の口に入ってからというものの、少しだけ明るい海の中を、気づけばヒロシはずっと泳いでいた。
魚たちはいるにはいるが、ヒロシも同類だと思われているのか、寄っても来ないし、かといって攻撃もしてこない。それはありがたいのだが、ヒロシは自分がどこへ向かうのかもわからず、ただ手足を動かして泳ぎ続けている。そんな状態で、もう20分ぐらいは泳いだだろうか。
と、後ろの方で声がした。
「待てえーーーー!!」
泳ぐのをやめて振り返った。
黒髪の小さな男の子が、ものすごい勢いで泳いで追いかけてきている。
「そっちはお姉ちゃんのほうだ!! 行かせないよ!! お魚さんたち、あのお兄ちゃんを止めて!!」
「アノオニイチャン……?」
魚たちは泳ぎながら大きな輪を作るように回転し、しゃべった。
「アノオニイチャンッテ、ダレ?」
「そこの黒髪の坊やのことだぜ?」
近くに群れていた魚たちに向かって、ヒロシは言い放った。
「行け!!」
「違うよ、ボクじゃないよ! そこの銀髪の長いお兄ちゃんだよ!!」
「ワカッタワカッタ」
「ギンパツノ、オニイチャン」
「ボクジャナイ」
魚たちは口々に言いながら、てんでばらばらの方向へ泳ぎだした。
「もう! 違うってばー!!」
男の子は焦れたように言った。
「こいつでも食らえ!!」
ヒロシはみぞおちを自ら叩くと、夜闇を一部吐き出した。イカ墨のように真っ黒なそれは、魚たちを覆いつくし、途端に魚たちの目が赤く光った。
赤い目の魚たちは一目散に、黒髪の男の子を目掛けて泳いでいく。
「うわあああ! お姉ちゃーん!! ママー!!」
黒髪の男の子は、しだいに魚たちに襲われ始めた。
「あのお兄ちゃんをママのお腹に入れちゃダメーー!!」
男の子は叫んだ。
すると、男の子を覆っていた魚たちが、突然男の子から離れた。いや、正確には男の子から吹っ飛ばされた。その魚たちは目も赤くなくなっている。
何が起こったんだ!? ヒロシはその光景を理解できずにいた。
気が付けば男の子は、上の方にある光へと泳いで上っていく。
そうだ、あの光の先にオレの求めるもんがあるはず! とっさにヒロシはそう思い、男の子の方へと方向転換して、その光の方へと泳ぎ始めた。大人の体を持っているヒロシの方が泳ぎは速い。もう少し、もう少しで男の子の足に手が届きそうなところまで来た。
やった! そう思ったが遅いか早いか、光はなくなり、男の子の姿も消え、ヒロシはものすごい衝撃波を受けて、意識が無くなった。
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