第3話 頼みと抵抗
お久しぶりです。藤桜芽です。
現在下書きノートは第35話までかけたのですが、
ようやく少しずつ公開していこうという運びになりました。
1週間に1話公開出来たらいいかな、と思っています。
コロナがなければこの『生かし神と霊感術師』は発案できませんでした。
その理由がこのエピソードをお読みになるとお分かりになると思います。
いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします!
少女、青葉は手術を終えて、いろいろな機会につながれたまま個室に移され、そこで昏々と眠っていた。夜の中。
「ここ数日間が山です、って言われています」
ダニエルは青葉のそばで眠っているジャックに隠れて、ドリム様に無線機で連絡を取っていた。
「そうかい。いいかい? その青葉は、あたくしの命の、いや運命の要だ。必ず命を取れ」
「はい、承知いたしました」
「必ずだ。分かったな!?」
そんなに叫ばなくても分かっている、と言いたいのをこらえて、
「はい」
とだけ言い、通信を切った。
戻ると、ジャックが起きていた。
「どこ行ってた?」
「そなたには関係のないことです」
ダニエルは素っ気なく返事をした。
「関係ないことないだろ? ドリム様、か?」
「……」
黙るということは答えたも同然だった。
青葉の命を頂くには、まずジャックと青葉を引き離さねばならない。どうしたものでしょうか。と逡巡した。
ダニエルは、ちいさくふうとため息をして言った。
「頼みがあります」
ダニエルは頭を下げた。
「1分でいい。青葉と二人きりにさせてくれませんか?」
できない相談だ、と言われるに決まっていた。しかし、実直に頼むしか手立てはないと考えたのだ。
しかし、意外な答えが返ってきた。
「俺の頼みを1個聞いてくれたら、ダニエル、お前の頼みも聞いてやる」
ダニエルは訊いた。
「頼み、とは?」
ジャックは黙って、ダニエルの右手に注射器を握らせてから言った。
「それを、青葉ちゃんのお〇に刺せ」
「え、お〇に!? そんなこと出来ないです!!」
「……いや、冗談だ。腕だ」
「……よかったです。でも出来ません」
注射器には、水色の液体が充填されている。ダニエルはその水色をどこかで見たことがあると思った。しかし、どこであるのだかが思い出せない。思い出そうと、手元にある注射器の水色の液体をぼんやりと見つめた。
やがて焦れたようにジャックが言った。
「刺せないか?」
「これは何ですか?」
「見ての通り注射器だ。刺せないなら、俺が手伝ってやる」
気が付くと、腕の細いジャックのどこにそんな力があるのか、ものすごい力で後ろから、右手と左手を抑えられて青葉のベッドのそばまで連れていかれた。ダニエルは抵抗するが、そのまま力任せに青葉の左腕下部にブスリと注射器の針が刺さった。
「……っく、離し……」
「おっと、そこじゃないぜ」
ジャックは一度、ダニエルの右手を上げさせて針を抜き、そのまま注射器を青葉の左手上腕部に刺しなおした。そして、ダニエルの親指ごと注射器の頭を押して液体を注入していった。
こうして、ダニエルは無理やり青葉に訳の分からない注射をさせられた形になった。見る見る間に水色の液体が無くなり、終わった。
注射が終わるとジャックの手はようやく緩められ、ダニエルはようやく羽交い絞めから解放されたのだった。