第38話 陽(はる)の計画書(ブループリント)
タヌカさんと言うのはですね、知り合いの方に、「タヌキを出してください」と言われて
考えたキャラクターです。
見た目はまん丸です。いつかイラストにしてお見せします。
いつもありがとうございます。
よろしくおねがいいたします。
もうすぐだ。陽と名付けられることになった名無しのボクちゃんは、ワクワクしていた。
「タヌカさん、まだあ? ボクの番」
待ちきれず、陽は訊いた。
「あと5人ぐらいですよ、陽くん」
タヌカさんと呼ばれた、ピンクのひらひらエプロンを着けた、まん丸お腹の狸の女性は、そう言った。
陽の今回の人生は、坂巻青葉、つまり主に陽の姉を助けるために選んだ。でも、魂の計画書によると、越えなければならない、厳しい試練があるらしい。魂の計画書は一部、黒く塗りつぶされていて、読めないところがある。それは、どんな人生を選ぶかによって、しだいにはっきり読めるようになったりするらしい。
「ボクの計画書、黒いとこ多いなー、今回」
独り言のつもりだったのが、ボブに聞かれていた。
「おいらのも多いよー」
ボブはだらんと長い計画書をを見せた。1メートルはあるか。
「わたしのもー」
「ホントだ―」
皆で互いに計画書を見せ合って、確かめ合う。「歌手」、「アクション系俳優」、「AIエンジニア」、といろんな職業がある。
「皆、それぞれ、頑張ろうねー!」
「うん」
「おうよ!」
「でも陽くんの計画書、短いねー」
「そうだねえ」
そう言われてみてみると、職業の欄が空白だった。
「ボクはお姉ちゃんの側にいられれば、何でもいいんだ」
陽は言った。
「でも、そんなに短いと、多分すぐ『ポコ』だぜ?」
そう言って、ボブは手で首を切る真似をした。「ポコ」とは死のことを意味しているらしかった。
「うん、でもそれでも何とかするよ。だって未来は100万通りあるんでしょ?」
「そう習ったけどなあ」
「でもこうも習ったよ。魂の計画書は、基本的には変えられないって」
キャシーがボブの言葉にかぶせるように言った。
「そうだねえ」
うーむ、と陽は自分の計画書を見ながら、唸った。
終りの方を見ていると、その黒いとことが光って、文字が浮き上がった。
「え……?」
その文字が正しければ、陽の人生は3年弱しかないことになる。
信じられない思いだった。やっと、長く傍にいられると思ったのに……。
「はい、陽くん、順番ですよー!! ……陽くん?」
呆然としているといつの間にか、タヌカさんに心配そうに覗き込まれていた。
「あ、はい! 今行きます!」
「あ、その前に、その計画書、破って食べて!」
……そうだった。しばらく下界へ降りていないせいで、そのヤギみたいな作業があることを忘れていた。
陽は自分の計画書を豪快に破くと、口の中へ全部放り込んだ。一生懸命噛んでいると突然、しまい神様の叫び声が聞こえた。
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