第36話 晴らし屋になった理由
今回はエレミーが主の話です。彼女の過去が明らかに……。
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着替え終わったダニエルを見て、エレミーはますます盛り上がっている。
「ダニエルさん、かっこいいー♡」
ヒロシは言った。
「オレ、かっこいいか?」
「『オレ』?」
エレミーは首を傾げた。
お上が頭をポリポリかきながら言った。
「やれやれ。わしが繋ぎ間違えたばっかりに、ヒロシを起こしてしまって、生かし神の意識が遠のき始めておるようじゃ」
「お上、何とかならないんですか? あたし、さっきみたいなことは怖いし……」
「仕方ない、また繋ぎなおすかの」
そういうと、お上は小さくなり始めた。
「その必要はないぜ、お姉ちゃん、お上さんよ。 あんたたちがオレに、夜闇の入ったフラスコをくれりゃあいい。そうしたら手荒な真似はしない」
と、ヒロシは口の端でニヤリとしながら言った。
「主人がいないからって、ヒロシったら、勝手なことを言って……! ダニエルさんを出して!!」
「オレは『畑中 寛』だって言ってんだろ!? ヒ・ロ・シ!! ダニエルじゃねえの!!」
「あたしもよ?」
エレミーは目を見開いて、言った。
「何がだ? お姉ちゃんよ?」
「あたしも、畑中姓だったのよ」
今度はヒロシが目を見開く番だった。
「『だった』? お姉さん、オレの母ちゃんなのか!?」
「ええそうよ。でもあたしは別の人と結婚して、畑中をやめたのよ。正確には『捨てた』のよ」
「ほうじゃったか……」
「風のうわさで、末っ子が死んだと聞いた。だけどその時あたしは、新しく結婚した人の子供を身ごもってた。臨月だった」
エレミーは、そこに子供がいるように、やさしくおなかをさすりながら言った。
「だから、オレの葬式に来なかった?」
エレミーはこくん、と頷いた。
ヒロシは叫んだ。
「そんなん理由になんねえよ!!」
「いや、なるのじゃ。ヒロシ、身重の女性とはな、動くのも大変だそうじゃ」
「知らねえ!! お上さんはこいつがどんな母ちゃんか知らねえだろ!? こいつはな、たった一度もオレを見舞いに来たことがねえまま、まだ3歳だったオレを見捨てたんだよ!! だからオレは……」
「そうよね、あたし働いてたもの。お父ちゃんが戦争で死んだから。病院のお金と、3人の家族を養うためにね……。 だけど2年ほど経った頃、そんな生活に疲れ果てて、ある日倒れてしまったのよ。その時に助けてくれたのが、新しい旦那様よ。そういうことを、あなたは全く知らないわよね?」
「知らねえよ!!」
「知ってたら、あんなこと。あたしを子供ごと殺すなんてこと、しなかったわよね。あなたは呪われた運命の子だったの。あなたを救いたかった。でも救えなかった。だからあたしは、他の人を救おうと思った。一人でも多く、呪いの運命から解放しようと思った。だからあたしは、『晴らし屋エレミー』になったのよ」
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