第32話 何者
とうとうダニエル、闇落ち!?
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「夜闇がないのに、どうして死神として人間を殺すことが出来てたの?」
エレミー・リーはダニエルに訊いた。
それは私も知りたいこと。とダニエルは思った。
「私もそれを知りたいんですけど」
「それにあなた、ヒロシでもあるの?」
その名を訊くと、一瞬だけダニエルはクラッとめまいがした。足元がふらついて、横の木に右ひじがぶつかった。
「痛っ」
「だ、大丈夫、ダニエルさん!?」
エレミーが駆け寄る。ダニエルは顔を下に向けたまま、動かない。
「どうしたの、ダニエルさん……?」
エレミーはダニエルの顔を覗き込もうとした。
そうだ、オレはヒロシだ。そう思った瞬間、エレミーの腕を掴んでいた。
「やめて!! やっぱりあなた、ヒロシでもあるの!? ダニエルさんはどこに行ったの!?」
「今は、『中』にいてもらってるよ」
もがくエレミーをヒロシは両腕で押さえつけた。
ヒロシは言った。
「あんたの持ってる夜闇、オレにくれないか?」
「あなたダニエルさんじゃないわよね!? いやよ!!」
「オレはダニエルだよ」
「ダニエルさんは『オレ』って言わないわ!!」
「いいからその荷物貸せよ」
エレミーはリュックサックを取られそうになって、必死で抵抗した。
私がダニエルなのに。ダニエルはそう思ったが、ヒロシの行動を止める術がない。止めようと動こうとしたが、見えない縄で縛りつけられているようにダニエルの腕は動かない。
ダニエルに見えているのは、エレミーの荷物から何かを取り出そうと、いろいろ荷物を引っ張り出し違うものを放り投げている自分の姿と、それを止めようとしているエレミーの手だ。
「あった!! こいつだな!?」
ヒロシは目的のもの――夜闇のはいった三角フラスコ――を掲げて、叫んだ。
「やめて!! 何する気なの!?」
「それはあんたに言いたいことだよ。あんた、こいつで実験するつもりだったんだろ?」
「……そうよ」
エレミーは渋々という感じで答えた。
「オレも実験するつもりなんだよ。あんたと目的は多分同じだ。なあ、オレに協力してくんない?」
「……するわけないでしょ!! 何の協力かも知らないのに!」
「それもそうだな。うーんとね、簡単に説明すると、オレの仲間を増やす計画?」
「どういうことよ?」
「だってオレ、ずっと独りぼっちだし。ずっとずっとあん時から」
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