第29話 かいふく
2人のジャック、その因縁。
今回はとても短いですが。
いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
「嫌だ、と言ったら?」
仕事をしろと言われて、真っ先に浮かんだ言葉をジャック・ボーガンは口に出した。
「手術だな、そしたら」
ジャック・リーは懐からメスの束を取り出して、「チャキッ」と音を立てさせた。
「ナ、ナイフか!? それは!?」
「バカか。 ナイフじゃ手術はしないだろ、メスだ」
「切れるんじゃほぼ同じじゃねーか!! ……ッ」
ボーガンの右腕が、ずきっと一瞬傷んだ。思わず右腕を抱えてしゃがみ込む。
「古傷が痛んだか」
「ああ、お前につけられた、な」
「俺もちいと痛い傷をお前につけられてるんだがな。まあ、俺は治った」
「どういうことだ?」
ジャック・リーに傷をつけた覚えが、ボーガンにはなかった。逆はあるが。
「治った、は『治った』だ。今はピンピンよ。で、だ? やる気になったか?」
「やる気?」
「『仕事』だよ」
「全くやる気は起きねえが」
そう言って、ようやく痛みが治まったのでボーガンは立ち上がった。
「じゃ、『かいふく』が必要だな」
「そうだ、回復が必要だ、今は仕事する気分じゃねえよ。死神の仕事もな」
そう言うと、ボーガンは元居たベッドに寝っ転がった。
「残念ながら、ちいと違う」
「何がだ?」
「『かいふく』の文字が、だ」
なぜかジャック・リーは反対にメスを持ち直した。
「まさか……」
「その、まさかだよ。腹を開かせてもらうぞ」
メスを入れようとするジャック・リーの手をボーガンは慌てて押し戻した。
「何をするんだ!?」
ジャック・リーは驚いて大声を出した。
「それはこっちのセリフだ! ……あのな。俺に傷をつけられた者は二人しかいねえ」
「それがどうした?」
「一人はダニエル・ロイ・モルガンだ。俺が好きな女にキ〇しようとした時に邪魔しやがった」
「ふーん」
刺して面白くもなさそうにジャック・リーは流した。
「もう一人は、お前だ。ジャック、何とかさんよ。今はそう名乗っているが、過去、『畑中 倫太郎』という別の名で、人間の医者 兼 連関術師として生きてたな、お前?」
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