第2話 死神と霊医ジャック
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声がする方を見ると、禿げ頭でサードアイのところに青色の勾玉のマークがついている、茶色い作務衣を着た男が右手を挙げていた。耳には大きな丸い飾りがついており、その風貌から、明らかに自分の仲間、つまり死神ではないと分かった。
「誰ですか……?」
ダニエルがそう言うと、男は半分まゆをさらに下げた。
「何だ? 本当にわからないんだな。俺だよ。ジャックだよ」
「ジャック……?」
死神界にも「ジャック」という名前の男はいた。彼はもっと、髪がボサボサで、いつも大きな剣を背にしているはずだ。目の前の男は、その「ジャック」とは似ても似つかない。
「そなたは、ジャックではないでしょう?」
ダニエルはそう言った。
「失礼だな。っていうか、本当に忘れちまってるんだな。俺は『ジャック・リー』だよ。お前と同じような霊医だ」
霊医とは。霊界、つまり天界の者たちの医者に当たる者たちのことを言う。
「私は死神です」
「おお、そうかい。なら、ずっとそう思ってたんだな? だからお上の命を忘れて、人間を殺しまくってるんだな?」
目の前の男の言っていることが、ダニエルには理解できなかった。
「そなた、何をおっしゃる?」
「つまり、俺とお前は知り合いなんだが。これも忘れちまってるか、そうか」
その時、少女、青葉が咳込んだ。外の方で水音もする。この火を消されたら、少女が助かってしまう。
「おっと、俺は青葉ちゃんを助けなきゃなんない」
ジャックはそう言って、袂からメスを取り出した。
「私は、青葉を殺せと言われているのです」
「お前の本来の上司は、死神の女王様ではなく、お上だと言ってるだろうが。だいたい何だよ、その恰好? そんな恰好をしているから、身も心も死神になっちまうんだよ!!」
「ドリム様を侮辱することは許しません!!」
ダニエルは珍しく声を荒げた。
「おうおう、悪かった、もう言わないよ。その代わり、お前の本当の役割は、青葉ちゃんを通して思い出させてやらあ。どけっ!!」
ドン! とダニエルはジャックに突き飛ばされて、手に持っていた黒い瓶をまだ燃えているがれきの中へ落としてしまった。それを探しているうちに、視界が開けて、消防士が入ってきた。消防士はこちらには、霊医ジャック含めて全く気付かずにいる。
少女は消防士に抱きかかえられ、その場から去った。
このままでは任務が完了できない。ダニエルは焦った。とりあえず、黒い瓶は後で探しに来るとして、少女の乗った救急車を飛んで追いかけた。
「待て!」
後ろから霊医ジャックも追ってくる。
「殺させはしないぞ!」
「それは、できません!」
ダニエルと霊医ジャックは口々に言いながら、救急車を追った。