第26話 二人のジャック
ジャックが二人いるのが、この話で生きました。
いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
ジャック・ボーガンは、突如目を覚ました。
……どこだ? ここは?
高い天井の向こうに光が見えた。その光にまぶしさを感じながら、ゆっくりと起き上がった。あちこちに自分の姿が映っているのが見えた。鏡だらけの部屋のようだ。
ふと、自分の、あんなに長く伸ばしていたぼさぼさの黒髪が、手で触ってみると、ないことに気が付いた。いや正しくは、短く刈り取られていることに気が付いた。
「トレードマークがなくなっちまったじゃねえか……」
ぼそりとジャック・ボーガンは呟いた。
そしてハッとした。
…そうだ、剣は!? どこだ?
ジャック・ボーガンは辺りを見回した。と、その時、自分の着ている真っ白なローブが目に入った。
……? どういうことだ?
ジャック・ボーガンには「死んだ」記憶がなかった。その記憶を奪ったのは……。
ガチャリと扉が開く音がして、誰かが入ってきた。ジャック・ボーガンは身構えた。
「よう、お目覚めか?」
「誰だ?」
逆光で人物が良く見えないが、ジャック・ボーガンは声のする方をじろりと睨んだ。
「ジャック・リーという者だ」
ジャック・ボーガンは近づいてきたジャック・リーの光る禿げた頭を見て、心底、禿げにされずよかったと思った。
「俺の頭を刈ったのもお前か?」
「いや、俺の女房だ」
「ハァ?」
「髪の毛が汚らしいというんでね」
「な…っ。たったそれだけのために、俺のトレードマークを……。 お前ぇ!」
ジャック・リーは、ジャック・ボーガンがベッドから降りて掴みかかろうとするのをするっと避けた。その勢いでよろけたジャック・ボーガンは、目の前の鏡にぶつかりそうになり、そこに映った自分の髪の白さに驚いた。
「俺に何をした!?」
「魂を抜き取らせてもらって、ちいと細工して、元に戻したまでよ。ほら、お前のお気に入りの剣はそこにあるぜ?」
ジャック・リーがどこから取ってきたのか、ジャック・ボーガンに剣を投げてよこした。ジャック・ボーガンは慌て、どうにか左手だけでキャッチした。
それを上段に構える。
「何の真似だ?」
ジャック・リーは不愉快そうに眉間にしわを寄せ、半分眉を上げた。
「お前をここで殺ってから行くこともできるな、ってことだよ」
「そいつは無理だね」
「何故だ!?」
思わず動揺して、ジャック・ボーガンは剣を降ろした。
「その剣にも細工がしてあるからだよ。それに俺がこの部屋の鍵を持ってる。お前を閉じ込めたままにしてもいいんだぜ」
「何だと!?」
「お前をここから出すには条件がある」
「何だ?」
「お前にはその剣を使って、ちいと大事な仕事をしてもらう。こいつは天界も死神界も揺るがす大仕事だ。どうだ? 協力してくれるよな?」
最後までお読みくださいましてありがとうございました!!




