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第23話 失われたもの

青葉ちゃんパートを母親、桐子の視点から書きました。


いつもありがとうございます。

よろしくお願いいたします。

 この子、こんなに暗い目をしていたかしら……。


 東京の自宅への帰り道、電車の中でぼーっと窓の外を見るともなく見ている青葉を横目にしながら、桐子は心配になった。


 桐子には、何の特別な能力もない。特別な力、というのはいわゆる超能力を言っているが。今ほど、そういう力が欲しいと思ったこともなかった。


 あの老婆。福子さんと言ったっけ? 青葉に施術をしている間は、予約した旅館に帰るよう言われた。見ててはいけないのですか、と問うと、そうです、と頷いた。


 そして言われた通り、青葉を福子のもとに残して、稔と旅館で待った。計3日間。


 3日後、旅館に福子から電話が来た。

「どうにか、終わりましたよ」


 不安で眠れなかった3日間が終わって、桐子は電話の声を聴きながら、初めて眠くなった。稔が、崩れ落ちそうになる桐子の体を横で支えてくれた。


 迎えに行った青葉は、左手の上腕部に包帯のようなものをつけていた。


「青葉!! 怪我したの!?」

思わずそれを見てそう訊くと、青葉は、ふるふると無言で首を横に振った。


「痛いの?」

また、青葉は無言で首を横に振った。


 東京にいたころの青葉は、まだ不安げで不安定ながらも、言葉を話した。しかし今は、離そうともしないのだ。離れていた3日間の間に起きた幼い娘の突然の変化に、桐子は戸惑っていた。


「ねえ、青葉は一体、何を考えているのかしら?」

桐子は、車内放送で居眠りから起きたばかりの稔に訊いた。

「え? あ、何考えてるか? うーん、難しいなあ」

そう言って、前に両腕を伸ばした。


「楽しい事とか、バカみたいな笑えることとか、考えてくれてると嬉しいけどなあ。そういう顔じゃないよなあ……。 俺にもわからん。でも、表情がないのと、喋らないのが気になるなあ」

「やっぱりそうよねえ」


「うーんそうだなあ」

と言って、、稔は周囲に聞こえないよう桐子に耳打ちした。


「精神科とか心療内科に連れていくべきかもな」


「ええ!?」

桐子は思わず稔から身を引いた。


「仕方ないだろう。俺はただの内科医なんだから。とにかく早めに連れてこう。何か、分かるかもしれないから。知り合いに、いいところがないか、訊いてみるよ」

「そうね、ありがとう」

桐子はそう言って、稔に微笑みかけたが、うまく笑えなかった。


 青葉の方を見ると、座席にもたれて眠り始めていた。その寝顔は、いつも見る寝顔で、桐子は心底安心した。

最後までお読みいただきましてありがとうございました!!

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