第1話 殺せない女の子
ダニエルは一体何者?
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「何やってんだい、ダニエル!!早くしな!!」
死神の女王、ドリム様の罵声が聞こえる。
死神にとって、火なんてものは全く熱くない。人間にとっては熱いだろう。それは汗をかいている少女、坂巻 青葉の様子からも分かる。
火が熱くないどころか、何を触っても、何も感じない。何を食べても、何も感じない。あるのは、「人間を殺す」という仕事だけ。予定通りに殺さなければ、ドリム様もお命が危うくなるからだ。
* * *
「今日から、ダニエル・ロイ・モルガン、あんたはあたくしのために人間を殺すんだよ。分かったね?」
漆黒の髪を大胆にうねらせ、胸元の開いたドレスをまとった大きな釣り目の女性、ドリム様は言った。
「……」
自分がなぜそこにいるのか、その時は全く思い出せなかった。だから、返事をしないでいると、怒号が飛んできた。
「返事ぐらい、しな!!」
大きな胸とは不釣り合いな細い腕で投げられた、ヒールの高い靴が片方、ダニエルの頭に当たった。
「……はい」
痛かったので、仕方なく返事はした。
「フン。それでいいんだよ。それと、こいつを着るんだ。死神なのに、そんな白いものを着られちゃ、たまらないからね」
漆黒のマントに、ドクロの飾りがついていた。髪も黒。瞳も黒。それで全身黒だ。
そうですか……。私は死神なのですか……。
そう理解していた。なのに。
少女はか細い声で言った。
「あなたは、パパと同じお医者さん、だね……。僕を、なおして、くれるの……?」
そのまま少女は意識が無くなった。
……死んだのでしょうか? ダニエルは、一度ひっこめた手を少女の手首へとやった。
……生きている。少女の手首が、ドクドクと速く、苦しそうに脈打っていた。まだ青葉は生きている。
なぜ、私のことを、死神である私のことを、「お医者さん」だと言った? なぜ?
考えたってわからなかった。とりあえず、この青葉を殺さなければ、ドリム様のお命が……。
ダニエルは持ってきたカバンから、針山と黒い瓶を一つずつ取り出した。黒い瓶のふたを開け、針を中へと突っ込む。銀色のドロリとした液体が針に付いた。
それを少女へ刺そうとしたその手を、ダニエルは誰かに止められた。
「おっと。ダニエル、お前に青葉ちゃんは殺せないよ?」
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