第17話 罪な女の子
久しぶりに青葉ちゃんパートです。
ちょっとハラハラするシーンになってます。
いつもありがとうございます。
よろしくおねがいいたします。
青葉は、母親の桐子が病室に入ってくると、手をじっと見るのをやめた。
「どうしたの? 青葉、手なんかじっと見ちゃって……」
ママに見られてた……!! 青葉は慌てた。
「だ、だいじょぶ!!」
青葉は笑顔を作った。
でも、ママにも視えてるんだろうか、この何かわからない、青白い炎が、青葉の左手からもやあっと出ているのが……?
青葉は不安だった。その不安を隠すように、ベッドから立つ。
「青葉?」
「おトイレっ」
桐子から逃げるように病室を出た。
「待って、トイレはこっちよ!」
桐子の声が追ってきた。青葉は聞こえないふりをした。
ガラガラと点滴機とともに走って、走って、エレベータに突き当たった。思わず「1」と「▼」を押す。すぐに扉が開いたので、中に無理やり点滴機を引っ張り込んで扉を閉めた。一人で荒い息をする。
と、3階になったところで、ポンと音がしてドアが開き、誰かが乗ってきた。松葉杖の男の人だということは、毛むくじゃらの手で分かった。
しかし、その人は、右足が何かで真っ黒だった。
いやだ……。この人、怖い。足が、真っ黒……! そう思い怯える青葉をよそに、男の人は何か言って、エレベータの中で近づいてくる。
「お嬢さん、大丈夫か? 顔色が……」
男の人はそう言って、毛むくじゃらの手を伸ばしてきた。その手が、足から登ってくる黒い影に覆われていく。
思わず青葉は、左手を伸ばした。
それはエレベータが1階に着いて扉が開いたと同時だった。
ドン!! と大きな音がして、突然男の人がエレベータの外の方へ吹っ飛んだ。青葉は左手を伸ばしただけだ。しかし、男の人から黒い影が散り散りになって消えた。青葉はひとまずほっと胸をなでおろし、その場に座り込んだ。しかし顔を上げたあと、また怯えたような声を上げた。
そこには、内科医である父親の稔がいたのだ。買い物をしてきたのか、手に白い袋を下げている。
「え? あ、青葉、どうした!?」
青葉は何も言えずに男の人を指さした。稔が目をやった先には、男の人が白目をむいて、口から泡を吹いて倒れていた。
怯える青葉を尻目に、稔は男の人をエレベータから完全に外に担ぎ出し、脈をとった。
しかし、脈がなかった。男の人のパジャマをはだけると、稔は胸の中心あたりをぐっ、ぐっ、ぐっと両こぶしで押し始めた。
青葉はその様子を、息を殺して見つめていた。
「青葉、この病院の誰か呼んで来なさい!! 誰でもいいから!! 早く!!」
稔が怒鳴ると、青葉は弾かれたように立ち上がり、点滴機を持って走り出した。
最後までお読みくださいましてありがとうございました!!




