第16話 私のしたことの意味
端末は天界の者が共通して持っているものになります。
実際天からは、その場所に行かなくてもいろんな場所のいろんな様子が見えるようです。
いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
「ジャック、お前さんよ」
ジャック・リーは少しビクッとしたように、ダニエルには見えた。
「は、はい」
「余計なことを、先方に申したな?」
「何が余計なことだったんですか?」
ダニエルは訊いた。
「『夜闇の死んだ元死神』と申したな?」
「はっ」
「こちらで、夜闇と元死神を回収していることが、危うくバレるところじゃったじゃろう? いや、もうバレているかもしれん」
それは、十中ハ、九バレているのでは。とダニエルは思った。
「も、申し訳ありません!!」
ジャックは勢いよく頭を下げた。勢いが良すぎて、大きな金の円い耳飾りがちぎれて飛んでいきそうだ。
「え、じゃあ、ジャック・ボーガンも回収されたのですか?」
ダニエルは疑問を口にした。
「ほうよ。その手配はジャック・リーがやったがな」
お上は、髭の先に右手を当てて伸ばしながら言った。
「いつの間に。知りませんでした」
「ほうよのう」
お上は、咳ばらいを一つすると、付け加えた。
「ちなみに、ここにいるエレミー・リーはの、死神の魂の仕組みを解明した、霊医 兼 研究者じゃ」
「そうだったんですね」
「はい、その通りでございますわ、お上」
エレミー・リーは、バレたかというように舌をぺろりと出した。
「そしてその研究は、次の段階へと来た」
「……次の段階、とは何でしょう?」
ダニエルは問うた。
「坂巻青葉に打った注射、あれが何だか。生かし神、お前さん分かるかの?」
……分かるはずがない。
「分かりません」
ダニエルは素直にそう言った。
「あれはの、人間が、死神を殺す能力じゃ。それ以上は今は言えん」
ここで、ジャック・リーがなぜか嬉々として言った。
「つまり、俺と同じ能力を、ダニエル、お前はあの注射を通して青葉ちゃんに渡したって訳」
ダニエルはハッとした。
青葉の青白く光っていた左手。吹っ飛んで行ったボーガンの体。あれは、あの幼子の手で、死神ボーガンを殺した、ということだったのだ。
「何故……」
ダニエルはわなわなと震えた。私の、したことは……。あの注射を、半強制的という形だったにせよ、青葉に打ってしまった。それは、まだ5歳の幼子に、『死神を殺す』という、とんでもない能力を与えてしまったという意味だった。
「まだ5歳ですよ!? そんな幼い子供に、よくそんな能力をお与えになろうと思われましたね!?」
「生かし神よ。能力というのはな、幼子であればあるほど、開花しやすいのじゃ。現に、坂巻青葉は既に覚醒段階に入っておる」
お上が操作したのか、ダニエルの端末のウィンドウが、また開いていた。青葉はその中で、じっと自分の手を見つめていた。
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