第12話 聖ラミア病院の塔
聖ラミア病院の「ラミア」とは
体の癒しをつかさどる大天使「ラ」ファエル
全ての負のエネルギーから守る大天使「ミ」カエル
人間の生死を司る大天使「ア」ズラエル
というところからつけております。
大天使は皆のために真実の愛をくださる、人間に一番近い天使です。
いつもありがとうございます。
よろしくお願いいたします。
天下一食堂では、ダニエルは結局何も食べなかった。たこ焼きはジャック・リーが食べた。加えてダニエルは天界の金銭である「ゼル」を持っていなかったので、お代もジャックが払った。
なおも奇妙な者を見るような視線を感じながら、それを我慢して、ダニエルは歩いた。一方のジャックはというと口笛を吹きながら歩いていて、そんな視線にはお構いなしだった。
ジャックが目指してきたのは、街の中心地にある塔だったらしい。
「着いたぞ。ここだ。聖ラミア病院。ここが俺の勤める病院だ」
赤やオレンジ、黄色、ピンク、紫など色とりどりの花が咲くこんな綺麗なエントランスに入るのかと思って、ダニエルは塔を見上げた。優に60階はあろうか。塔の上にはなぜか大きな天使の翼がある。
「こっちだ」
「あ、はい!」
慌ててジャックの後を追いかけると、エントランスではなく、そこは裏口へと続く道らしかった。
被り物で口から下しか見えない警備員が素っ気なく言った。
「入館証」
「はいよ」
作務衣の中からジャックは入館証を取り出して提示する。
「よろしい。しかしそちらのお方は?」
「ご存じないか。生かし神のダニエル・ロイ・モルガンだ」
警備員が口をあんぐり開けた。
「!? あの、ダニエル様、ですか!?」
先ほどまで素っ気なかったのに、いきなり「ですます調」に口調が変わった。ジャックはニヤリ、と口の端で笑った。
「そうだよ。こちらがあのダニエルだ」
「そ、それは大変失礼いたしました!!」
警備員に最敬礼をされて、ダニエルは慌てた。
「いや、こちらこそご無礼をいたしました。このような汚い格好で、こんな素敵な病院に入れていただくなんて……」
ダニエルは、警備員の最敬礼をやめさせようとした。
「ま、いいから。ほら、入れ、ダニエル。警備員さんよ、ダニエルの入館証は近いうちに作らせるから」
「はい、かしこまりました!!」
何も気にしていないであろうジャックが、ダニエルの左腕を無理やり引っ張った。連れていかれた先には中にもう一枚扉があった。ジャックは自らの入館証でそれを「ピッ」と開け、ダニエルを招き入れた。
途端に、ダニエルのマントが閉まる扉に引っかかった。「ビー、ビー、ビー」という警告音とともに再び扉が開く。
ジャックはそれを見て怪訝そうに訊いた。
「どうした?」
「マントがまた、破れました……」
ダニエルが言いながら、丁寧に扉からマントを外すと、扉はようやく閉まった。
「おっちょこちょいだなー。あんまりそういうやつは見たことないぞ。とりあえずその格好はやめてもらう。そのボロボロのマントともおさらばだ。そんな格好で、お上にお会いできないからな」
「お上ってどなたですか?」
「この病院の一番偉い人よ。ここではそう呼ぶ」
「そんな方に私が何の御用時があると……?」
「ま、見てろ」
言うや否や、2人の乗っている床が上に向かって動き始めた。エレベーターだったのだ。
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