第11話 天下一食堂にて
今年もよろしくお願いいたします。
今年は50話まで更新するのが目標です。
手元のノートでは41話まで書けて、現在スランプ中です(汗)
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「やだあ、何あの格好?」
「しー! 聞こえるぞ」
「天界の者ではないようだな」
「あれって、もしかして死神……?」
悪口というのはわざとこちらに聞こえるようにいうものなのでしょうか。ダニエルは聞こえてくる声にそう思った。
ダニエルは「天下一食堂」という店名の、天国の食堂に連れてこられていた。
長い銀髪、エメラルドグリーンの大きな瞳、通った鼻筋、薄い唇、そして浅黒い肌。そんな全身を包むような長く黒い、ところどころ破れたマント、にドクロの飾り、その下の黒装束。
「……そんなにおかしな格好でしょうか?」
ダニエルは素直に疑問を口にした。
「まあなー、天下の人々って何故か白を好むからなあ。目立つんじゃないか?」
レタスのサラダをむしゃむしゃとほおばりながら、ジャック・リーは答えた。
確かに周りを見ると、白いローブを着た人が多かった。そして目の前のジャックは茶色いボロボロのつぎはぎだらけの作務衣。そして頭は禿げて光っている。確かにそれでは余計目立つかもしれない。
「そういえばお前、天界を去る時も、何故か黒着てたな。下〇だけど」
何故それを知っているのですか……? と口に出したくなるのをダニエルはこらえた。代わりに、次の言葉を口に出した。
「私は、本当に天界の住人だったのですか?」
「ああ」
と言って、ジャックはコップの水をがぶりと飲んで、付け加えた。
「お上の命が下るまでは、な」
「覚えておりません……」
『お上』というのが偉い人なのは分かるが、どんな顔していたかもわからない。
「ま、それはしょうがない。今となっちゃあ。っておい、聴いてるか?」
ダニエルは聴いてなかった。左横で開いている端末のウィンドウの中で、少女・坂巻青葉が起きだしたからだ。
「青葉が目を覚ましました」
「知ってる。俺も見てるから。それより、食えよ、たこ焼き。好物だろ?」
そう勧められて、ダニエルは目の前のたこ焼きを見た。
たこ焼きはアツアツの時期を過ぎたらしく、しぼみかけている。カツオ節の踊りも、だんだん減ってきている。青のりはぺったりとくっついている。つまり、ちっともおいしそうじゃなかった。
「いや、好物はラーメンです」
「あれ? 誰かと間違えたかなあ? 何せお前と食事すんの12年ぶりだからなあ」
誰と間違えられたのかがちょっと気になるが、ダニエルの腹はそこまで減っていなかった。というより、死神なので何を食べてもおいしく感じないとわかって以降、ほとんど何も口にしていなかった。
と、ウィンドウに青葉とよく似た顔をした若い男性が現れた。後ろに女性もいる。青葉の父と母だろうか。男性は女性ごと、青葉を抱きしめた。よく見ると、男性は涙を流していた。
「ご両親と会えたようです、青葉」
「そうだな。ん-と、じゃあ下界のことはいったん置いといてだな、俺の勤めてる病院に行くか!」
突拍子もないジャックの提案にダニエルは驚いた。
「何故ですか?」
「紹介したいからな。それに、その恰好を何とかせにゃあ」
果たして誰に紹介されるんでしょうか。面倒なことにならなければいいですが……。と、そっとダニエルは思った。
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