第10話 脅迫仕合(しあい)
ジャック・リーは敵なのか味方なのか。まだよくわかりませんね。
2024年最後の更新となります。
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「何を……!!」
ダニエルは無線機をジャック・リーにぶん捕られた。
「ドリム、今から俺はダニエル・ロイ・モルガンを人質として、お前を脅迫する」
「そうか」
ドリムはあっさりそう言った。
「良いぞ」
「良いってよ?」
ジェックは言いながら、流し目でダニエルの方を見た。
「良いんですか!?」
ダニエルはびっくりした。
「青葉を殺す命令を無事に果たしたのなら」
「おう、それは果たしたな。おい、両手を上げろ、ダニエル」
言いながら、無線を持っていない方の左手で、ジャックは『静かに』というようにダニエルの口に人差し指を当てた。ダニエルはしぶしぶ両手を上げた。
「ならば、ダニエルは用済みだ。ただし、ダニエルが持っていた瓶があったろう? それはあたくしのもんだから、別の死神に取りに行かす。3時までに、焼けた青葉の家まで持ってきな!」
「おい、要求をするのは、脅迫者の方だろう、普通!?」
ジャックは目を丸くした。
ドリムはふふんと鼻で笑った。
「あたくしはあんたに脅迫されなぞしない。命令をするのは、あたくしだ。持ってきな!」
「お前の言うとおり、ダニエルはその瓶を持ってた。だが、失くした」
「失くしただと!? あれが、あたくしにとってどれだけ大事なもんかも知っているくせに……! おのれ、許すまじ!! ダニエル・ロイ・モルガン!!」
ドリムの怒鳴り声を一通り聞いた後、ジャックは、「ふー」とため息をついた。
「話を最後まで聞かないオバサンだなあ……」
やれやれ、とジャックは首を振る。
「俺が。持ってんだよ、今」
「返せ!!」
ドリムが怒鳴ったら、どこか遠くで雷鳴が鳴った。ジャックもそれを聞いているように、何も言わない。すると、だんだん空が暗くなってきて、雨が降り出した。
「やだね。ドリムがペラペラしゃべってくれたおかげで、この瓶の大事さがよーく伝わった。だから、返す気はさらさらないぜ。ダニエルも用済み、でいいんだな? お前、バッカだよなあ、ダニエルに瓶を持たせていなければ、この瓶の秘密が俺にばれずに済んだのになあ?」
そんなに挑発していいのでしょうか、とダニエルはハラハラした。
「無礼者!! 何を知った!?」
「言うかよ。それこそ本当のバカだ。いいか、ドリム、この無線機は今からぶっ壊す。よってお前からは俺には連絡できない。俺からの連絡は、夜闇の死んだ元死神を通してする。せいぜい、黙って受け取って、その元死神の言うとおりにしろ。さもなければ、ダニエルどころか、お前の命は、いずれ亡くなるぞ」
ジャックはそう言うと、「何ィ!?」とドリムの金切り声の響く無線機を、ブンっと空高く放り投げた。狙ったように稲妻が、無線機を目掛けて走ってきた。たちまち無線機は、炎を上げ始めた。ダニエルはその様子を黙って見ていることしか出来なかった。
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