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点P

 また別の日の堕落部。


「あーもう分かんない!」


 鶴見の叫びが響き渡る。


「何で点Pは動くのよ。じっとしてられないの!?」


 ちゃぶ台の下で足をばたつかせる鶴見をよそに僕は漫画を読み続ける。


「点Pが動かないと問題にならないからな」


 勿論、僕は茶々を入れる好機を逃しはしない。


「天倉に言われなくても、そんなこと分かってるから!」

「でも、数学って親しみが持てないというか、感情移入が出来ないのよ。歴史とかなら徳川慶喜はこういう気持ちなのかなって感情移入出来るんだけど……」


 このタイミングで、待ってましたとばかりに霞ヶ原先輩が切り込む。


「鶴見、点Pを天倉だと思え!」


「霞ヶ原先輩、それじゃあ余計に親しみが持てないと思います」


「今から鶴見はスナイパーだ。鶴見は原点Oから狙撃を行い、天倉は点Pの通るルートで移動する。鶴見なら天倉を撃ち抜けるよな!」


「そう思ったら、この点Pに殺意が湧いてきました。先輩、ありがとうございます!」


 鶴見は殺意が溢れんばかりの笑顔で感謝していた。


「──たまには天倉も役に立つわね」


 そのようにボソッと鶴見の声が聞こえた気がした。


「──────でも、何で点Pなんですかね? 点Aとかじゃなくて」


 しばらくして、先に無言に耐えられなくなったのは僕だった。


「点PってPointの頭文字、つまり点という意味の英単語から来てるのよ」


 どうやら鶴見はこういう雑学には詳しいらしい。


「確かにその説もあるな。だがそれだと何故原点は点Oなのか説明がつかない」


 やはり雑学は霞ヶ原先輩の方がもっと詳しい。


「点PはPrincessの頭文字、つまり姫から来ている。姫というのはおてんばに動きまわるから、動き続ける点にピッタリなのだよ」

「原点のOはOtakuの頭文字から来ている。オタクは部屋で引きこもってるから、動かない原点にピッタリというわけだ」


「原点Oはまるで天倉みたいね!」


 鶴見が茶々を入れて、霞ヶ原先輩が続ける。


「だから点Pは原点Oに戻ってこないというわけだ」


「いや、そんなわけないですよね!?」


 僕は意を決して霞ヶ原先輩にツッコミを入れる。


「ああ、今のは嘘だ」


「あっさり嘘だと認めるんですか!?」


 霞ヶ原先輩は不敵に笑いながら言葉を続ける。


「そうだな──点Pだって原点Oに戻ることがあるかもしれないな」

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