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ゴミ虫

 別の日の堕落部。


「天倉ぁ、霞ヶ原先輩になんてこと聞いてんの!?」


 鶴見(つるみ) 花凛(かりん)はまるで非常識なことを聞く奴にするような目で僕を見てきた。


「そういうわけで、天倉は堕落部の漫画買い出し係になったということだ。鶴見も何か頼むといい」


「じゃあ天倉、アンタ校舎の屋上から飛び降りなさい」


「僕のこと殺す気か?」


「霞ヶ原先輩にあんなこと聞いておいて、楽に死ねるだけ感謝しなさい」


 鶴見はそう言って、手に持っていた黒板消しを僕に向かって全力で投げて来た。


 僕は黒板消しの射線から身体をズラした。


 鶴見とは小学生からの付き合いなのだが、暴力的になったのはここ最近である。


「当たったらどうすんだ?」


 僕は黒板消しが当たったときのリスクも考えられないのかと、呆れながら鶴見に問う。


「そしたら、アンタが痛がる様子を楽しむに決まってるじゃない!」


 僕に黒板消しが当たるのはむしろリターンだったらしい。


 そんな様子を霞ヶ原先輩は笑いながら見ていた。


「鶴見はツンデレだからな。天倉も将来大変そうだ」


「「なんてこと言うんですか!?」」


「ほら、息ぴったりだからな!」


 霞ヶ原先輩は鬼の首を取ったかのように僕らの方を見てきた。


「アタシは将来先輩と結婚するんですからね! あんなゴミ虫なんかどーでもいいんです」


 そんな鶴見の様子に、僕はイラっときて攻勢に出る。


「ゴミ虫をそんな風に扱ってるとな、夜お前の家にゴミ虫が大量に湧いて出てくるぞ!」


「天倉はゴミ虫のボスか何かか?」


 霞ヶ原先輩の適切なツッコミによって形勢が入れ替わる。


「ゴミ虫、いやゴミ虫のボスには霞ヶ原先輩は不相応よ」


「おいおい、何で僕が霞ヶ原先輩とくっつこうとしてる前提になってるんだ?」


 こちらもツッコミで形勢を立て直す。


「では、天倉は私のことが嫌いということか?」


 霞ヶ原先輩の発言で、立て直すはずの形勢が崩れ落ちた。


「──僕はそんなことないですよ」


「天倉ぁ!!」


 鶴見のその声と共に、黒板消しではなく黒板消しクリーナーが僕の横顔に向かって宙を舞う。


 僕はとっさにかがみ、黒板消しクリーナーが髪の毛と接触したのを感じた。


 大きな物が壁にぶつかったような音がしたのはそのすぐ後だった。


「ゴミ虫のボスなだけはあるわね、やるじゃない!」


 これは明らかにやり過ぎである。


「黒板消しクリーナーは反則!  当たったら本当に怪我するだろ。僕をなんだと思ってるんだ!?」


「────知らないわよ」


 しばらくの間、鶴見はこちらに目を合わせてくれなかった。

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