春眠暁を覚えず~天倉暴走ver~
なんとなく、このバージョンもいいなと思って書いてみました。
多分他のもじきにこうなります。
ある日の堕落部。
「なぁ天倉、君は『春眠暁を覚えず』という言葉についてどう思うかい?」
霞ヶ原 怜先輩の大人びた容姿から問われたからか、僕は余計に意味深に思えた。
「春は心地がよいから、夜が明けたにのにも関わずに眠ってしまう。とかそんな意味じゃなかったでしたっけ?」
「確かにそういう意味だな。でも私は意味を聞いたつもりはない。『どう思うかい?』と聞いたのだよ」
「この時期にぴったりの言葉だなって思います。こうも部室でやることがないと余計に」
僕は慌てて返事を取り繕う。
「そうだな。やはりこの時期の堕落部にぴったりの言葉だな。そこで、『春眠暁を覚えず』の続きを言ってくれたまえ」
「確か『処処ていちょうを聞く』でしたね」
何かを思い出すときは上を見るというのは人間の癖というのを昨日のテレビで聞いたが、どうやら本当のようだ。
人間上を見上げるときは、何かを思い出すときと美少女が落ちてくるときと決まっている。
「つまり、君は処女から丁重にお願いを聞くってことだよ」
「いや、処女じゃなくて処処です。濁ってないですからね!」
「君も知ってるのではないか? 同じ漢字を2つ重ねたら濁ることを。散々とかな」
「いや、そんな暴論通りませんよ・・・・・・」
「暴論も論ではあるからな」
「ところで、先輩って処女なんですね?」
僕は切返せるところを見つけると飛びかかってしまう癖があるのだが、この時はそれが出てしまった。
この癖は今後も色々と面倒なことのきっかけになるから覚えておくように。
えっ、あんた誰だって? 僕は語り手の天倉ですよ。
ささっ、続きをどうぞ。
「そうだがなんだ? 逆に私の純潔は既に汚れているとでも思っていたのか?」
「いや、そういうことでは──」
僕は罠にかかったことを悟った。
「むしろ君は私の純潔に興味があるのかい?」
自分でも頬が紅くなっているのが分かったため、無言でやり過ごすしか無かった。
無理もないよね。
当時の僕は純新無垢な青年だったのだから。
「処女のお願いを丁重に聞くという話だったよな。処女のお願いといえばアレしかあるまい。」
僕はあの霞ヶ原先輩とという期待と、きちんと出来るかという不安が混じった固唾を喉に流し込む。
霞ヶ原先輩の口が開いた瞬間まで、僕は先輩に釘付けだった。
「────ちょっとあの漫画の最新刊買ってきてくれないか?」
人間は当たり前の返答が来ないと頭がフリーズするのだと実感をした。
「──分かりました」
こうして僕は漫画買い出し係になったのであった。
今も僕はパシリに──おっと誰か来たようだ、今日は失礼するよ。