35)電話対応のいろは
入社した会社は、法人向けに携帯電話を販売する営業会社だった。
お客様が自ら足を運んで契約をするショップとは違い、営業は内勤と外勤で分かれ、内勤担当はリストに載っている客先にひたすら電話をかけまくり、アポが取れたら外勤担当が客先に出向き、契約書を交わす、といった流れだった。
私はコミュ障で電話対応が苦手だったので、ハローワークでは「電話対応」と書いていない求人を探して応募していた。だがしかし、現実は甘く無かった。
営業の内勤担当はひたすら電話をかけまくり、とにかく数字を積み上げる事に専念していたため、顧客からの入電は全て事務員が対応していた。
早速私は、営業の部長から電話対応の研修を受けた。
トークマニュアルは完備されていたが、トーク内容は「担当の者より2時間以内に折り返しさせて頂きます」というものだった。
契約内容の説明等は一切事務員からは答えてはならず、その場で直接営業担当に繋ぐことも許されず、ただただ要件を聞いて折り返す旨を伝える流れだった。
「ついさっき担当者とは電話で話したばかりなんですけど・・・」と言われても、あいにく席を外しておりまして、と言って徹底的に折り返し案内を強いられた。
当たり前だが、こんな対応をしているとクレームも多かった。
電話研修でもクレームの受け流し方を教わった。部長は初っ端から怒鳴り散らし、良いから担当を出せや!と言った。それをどうにかこうにか宥め、最終的に折り返し案内をする、というのが事務員のミッションだった。
電話研修でOKを貰い、実践が始まると、最初は頑張って入電を取っていたが、段々とささやかな質問に対してもいちいち折り返し案内をしなければいけないこの無駄な作業が嫌になっていった。
実際のクレームも、部長よりもドギツいものが沢山あった。2時間以内の折り返しでは全く納得してくれなくて、どうしても収集つかない時だけ営業担当に直接電話を繋いでいた。
変質者からの電話も1度だけ受けた。電話を受けても何も言わず、「はぁはぁ」と興奮した呼吸音だけが聞こえてきたので、お電話繋がらない(あなたとはまともな会話が出来ない)ようですので失礼致します、と言って切った。
そんな事を繰り返す内に、以前にも増して電話対応が苦手になってしまった。




