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乙ゲー世界に転生したので課金アイテムで遊んでみた  作者: ぱっぴぃ
最上級で最底限な生活
2/6

Lv.1




 皇宮、華やかな人達が憧れる場所であろう。それを裏付けるように皇宮の辺りはいつも賑やかだ。色んな意味で。


 ……ああ、ほら、今日だってまた一人門の前で揉めている。


 女性だ。番人らしき者に門の外へと追いやられている。嵌められたのだろうね、でなければ皇宮から追いやられることなんて滅多にない。


 番人の後ろには上質そうな服を着たもう一人の女性が見ている。これで何度目だ、皇后様ではないか。



「土地代が変に安いと思ったらこういうこと……?」



 この家は皇宮の目の前だ。隣を覗けば門が見える、嫌でも見える。だから今日も元気に修羅場を見ているんだ。


 ここは『とある大きな国』。ふざけているとかではなく、ゲームの中ではその表記しかなかった。別に国名を知った所で何も変わらないから、私は死にかけても『とある大きな国』と言い続ける。


 簡単に言うと私は所謂転生者だ。しかも課金アイテムが無限に使えるらしい。証拠に毎日レア度の高い服を買う為の宝石が2万個も贈られてくる。ログインボーナスみたいなものだと思っている。



「何か毎日見させられると胃が痛むよ……まあ買ったのは私だし、周りの人も止めてくれたけど」



 頬杖をついて眺めていた窓から離れ、この世界で唯一の天使を迎えるためにのろのろと歩いた。


 それにしてもこの服は美しくてお気に入り。三次元にいた時もお気に入りだったし、この世界に来た時は一番最初に買ったくらいだ。


 長い廊下を奥まで突き進むと、小さめの扉が視界に写ってきた。誰が見ても子供部屋なのが分かる良心設計。



「結葉、入っていい?」



 ――返事は返ってこない。まだ寝ているのか、今日は皇宮で女官か官女になる試験があるからそれを言わないと。


 女官も官女も字がひっくり返っただけなのに意味が全く違うから面倒臭い。私は人のお世話なんてできっこないから女官がいいんだけど。


 軽くノックしてから部屋に入る。そこはまだ薄暗く、陽の光が申し訳程度に入ってるくらいだった。


 窓の近くにある私が買い与えた高級な寝台で気持ちよさそうに眠っている天使もとい結葉に声をかける。



「おはよう結葉。もう朝だから起きて」


「……んん、あとすこし」


「今日は皇宮に嫌々行かなければいけないの。だから起きて」



 そう言うと「わかった」と眠たげに言って起き上がった。


 相変わらず天使だ。今日も今日とて可愛らしい、ついた寝癖も愛らしく見える。



「ねえさま、ほんとうに、いくの?」


「うん。行かないと陛下に怒られてしまうから」


「そっか……きをつけてね、かえってきて」


「大丈夫。結葉を置いてどこかに行かない」



 それだけだから、と早々に立つと不安げな眼差しで見上げてくるから、思わず頭を撫でてしまう。


 補給は完了した。あとは好きに殴るなり蹴るなりすればいいさ。ゲームだと皇宮で働かなきゃいけなかったけど、私には逆らう選択肢が常にある。皇帝も皇后も知らない、勝手に幸せになってくれ。



「じゃあ、行ってくるから……お隣さんの馬とか動物のお世話、手伝えたら手伝ってあげてね」


「うん、わかってるよ。ぜったいにかえってきてね、まってるからね」



 もういっかいねるの、と再び毛布に潜り込んだ結葉を邪魔しないよう最大限の注意をして静かに外へ向かった。


 外へは結葉の部屋の方が近いから、外出するときはいつも結葉と何かしらの会話をしてから出る。私はそれを補給と呼んでいる。


 変な所は無い、髪も大丈夫、従者はいないけど……いつか金で無理矢理雇う、よし。



「行ってきます……ああ」



 着く頃には無理にでも明るい性格でいないとなあ。

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