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アリとキリギリス 3rd END

作者: たからご こころ

 むかしむかしあるところに、アリとキリギリスがいました。

 ある夏の暑い日に、アリたちはせっせと食べ物を巣の中に運んでいました。その途中、アリたちは楽しそうに歌っているキリギリスと出会いました。

 キリギリスは尋ねました。

「おはようアリちゃん。何をしているんだい?」

「私たちは冬に備えて食べ物を運んでいるのです」

 アリちゃんは答えました。

 キリギリスは言いました

「どうしてそんなことをしているんだい。食べ物はあるし、そして何より冬までたくさん時間があるじゃないか」

 アリちゃんは

「冬は寒いですし、今ある食べ物もなくなってしまうからですよ。だから今のうちに」

と答えました。

 キリギリスは笑いました。

「まだまだ夏だし、寒くなったらその時に何とかすればいいさ。それじゃあまたね!」

 そうしてキリギリスはまた歌いながら歩いていきました。


(今からしておかないと、後悔することになるのです)

 キリギリスに答えたアリちゃんは思いましたが、何も言いませんでした。

「さあ妹たち、キリギリスは放っておいて私たちは食べ物を集めましょう」

そう言ってまた食べ物を運び始めました。


 秋になりました。寒く厳しい冬がもうすぐやってきます。

 アリたちは夏からずっと食べ物を集め、運んでいました。そしてキリギリスは、夏からずっと歌っていました。そして久しぶりに出会いました。

「こんにちはアリちゃん、元気にしていたかい?」

「こんにちはキリギリスさん、ご機嫌いかがですか」

「僕は元気さ。楽しい毎日を送っているよ。そっちはどうだい」

「私たちはずっと食べ物を集めてきました。冬が近づいてきましたが、備えは万全ですか」

「たぶんだいじょうぶさ。今までいろいろあったけど何とかなってきたからね」

「そうですか・・・。私たちには生まれたばかりの妹がいるので、慎重で臆病なようです」

「はは、人生楽しくいきないとね」

(それでも私たちは集めましょう)

「・・・それではごきげんよう」

「うん。またね!」

「それでは妹たち、行きましょうか。もう少しで十分な量が集まるはずです」

 アリたちはまた運び始めました。キリギリスは手を振っています。

「じゃあね!」

 キリギリスはアリたちが見えなくなるまで手を振り続けました。


(今まで何とかなってきたから冬も何とかできるだろう。それまで歌っていればいいさ)

 キリギリスは歌いながら歩いていきました。


 冬が来ました。水は凍り付き、草木は枯れ、虫はいなくなっています。キリギリスは食べ物が日に日になくなって行くので困っていました。

(おなかすいたな。どうしようかな)

そこでキリギリスはアリちゃんたちのことを思い出しました。

「私たちは冬に備えて食べ物を運んでいるのです」

「私たちはずっと食べ物を集めていました」

(そうだ、アリたちに助けてもらおう)

 キリギリスはアリたちの巣に向かって歩いていきました


 そのころアリちゃんたちも食べ物が少なくなって困っていました。一番上の妹のイリちゃんと2人で話し合っています。

「姉さんどうしましょう。少し足りないです」

「どれくらいなのです?」

「2日に1回配給するくらいです。十分ではないですね」

「それでも外に出たところで見つからないと思うのです」

「ご飯の量を少なくするしかなさそうです」

 そのとき巣の外からキリギリスののんきな声が聞こえてきました。

「アリちゃんたち、いるかーい?」

「食べ物の目途が立ちましたのです。至急全員狩りの用意。食堂に集めてください」

 アリちゃんは巣の入り口に歩いていきました。

(姉さんは頼りになりますが時々怖いですね・・・)


 巣の外に出ると、そこには雪をかぶって震えているキリギリスがいました。

「や、やあ、アリちゃん、こ、こんばんは」

「こんばんはキリギリスさん。ご機嫌いかがですか。震えていますが」

(痩せてあまり肉は付いていないのです)

「い、いや、た、食べ物が見つからなくてね。アリちゃんたちなら持っているんじゃないかと思ってね」

「そうですか。それはお困りでしょう。けれど、私が言ったように、食べ物を集めていなかったからこうなったのですよ」

(それでも逃げられたらいけないのです。大勢で出てきたら警戒されてしまいます)

「うう、アリちゃんたちの言うことを聞かなかったのは悪いと思っている。けれど今回だけは僕のことを助けてくれないかな」

「・・・しかし、何もしない人を養えるほど食べ物は潤沢ではないのですよ」

(まあ、なにか役立てるなら非常食として飼っておいてもいいのですが)

「僕にできることは何でもするから。珍しい歌を歌うし、楽しいお話を聴かせてあげる。楽しいよ」

「ふむふむ。まあいいでしょう」

(私たちには必要ないのです)

「あ、ありがとう。中に入れてくれないかな」

「はいはい、さあさあおなかにお入りください。これからご飯なのでみんな食堂で待っています。全員あなたのことを歓迎すると思いますよ。もしよろしければあなたの歌を聴かせてくださいね」

(ええ、心の底から貴方(えさ)を歓迎します。(ひめい)を聴かせてください)

「本当にありがとう。アリちゃんたちは命の恩人だ」

「照れますね。早くいきましょう」

(言葉が薄っぺらいのです。妹たちが待っています)

 アリちゃんはキリギリスを巣の中に招き入れました
































それからそのキリギリスを見たものは、誰もいませんでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そう言われてみれば、アリは雑食でしたね・・・・・・・。 暑い夏なのに少し涼しくなった気がします。 現在の子供に教訓を与えるためには、これくらいのインパクトがあった方が良いかもしれないとも思…
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