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その3 はぢめての戦い。



 がっしゃーん!


 と、閉ざされる城門。

 門番兵士らの冷たい視線が刺さる中、しばらく呆然なって、その高い高い扉を見上げていた。

 妹を庇って隕石の衝撃で死んだはずが、目覚めると何故か勇者になっていて、ワケの分からぬまま王謁見の広間を引きずり出され、そのまま投げ捨てるように外へ放られた、俺。

「まぢホントこれからどーすりゃいいんだ……」

 独り泣き言していても始まらないので、仕方なく俺はとぼとぼと歩き出す。

 確か――、

 街に出て人々の話を聞けば自分の使命も分かるだろう――、そんなコト言ってたっけな、あの王のオッサン。

 となると、情報収集か。

 果たしてこの俺に出来るだろうか。一抹の不安が俺の頭を過る。

 するとそこへ、

「ぴぎーッ!」

 なんと!

 モンスターが あらわれた!

「え、ウソだろ。もう魔物出るの? 俺まだ街にも着いてないんですけど……?」

 ちなみに、俺が目覚めたあの城と今向かっている街はちょっと離れていた。てか、街はもう目と鼻の先なんですけど。

「ま、まぁ、出たのが一体だけなら、なんとかなるかな……?」

 現れたのは、青くてぷるぷるっとしたグミのようなゼリーのような巨大な単細胞生物だ。

「ぴぎッぷしゅるるるー!」

 と、威嚇? してるようだが…………、よし、いける!

 巨大っつってもスイカ一個分くらいの大きさだし、単細胞だからどんな攻撃も効きそうだし、見るからに弱そうだ。コイツぁは多分、下級モンスターだな。うん、いける。

 俺は拳をグッと握りしめ、助走をつけ殴り掛かった!

「うおおおッ! お前を経験値にしてやろうかーぁッ!」

 ゆうしゃの こうげき!

 ミス!

 ダメージを あたえられない!

「なにぃッ?」

 避けられた。コイツ意外とすばしっこい!

 勢い余って俺は盛大にずっこけた。ちょー痛い!

 と、

「ぴぎゃーッ!」

「うぉわッ!」

 モンスターの こうげき!

 モンスターは ゆうしゃに からみついた!

「この、放せッ! く、苦じいぃ……ッ!」

 ただのゼリー状だと思ったのだが、粘着質でゴムのようなその体が的確に俺の顔面に張り付いて来た!

「む~! む~! む~!」

 目も鼻も口も塞がれた俺はもがき続けるしかなかった。

 引き剝がそうにも、それはそれはよく伸びよく縮み、ぬるぬるねばねばしてて気持ち悪いし離れない!

 ていうか、

 息が、出・来・な・い……!

「ぐ……、ぐふ……ッ!」


 ゆうしゃは しんでしまった!


 ちーん。



  *



「おお、なんということだ。死んでしまうとは情けない」

 聞き覚えのある仰々しい声がして、俺は目覚めた。

 え~っと、もしかして、ここは……?

「さぁ、今一度立ち上がり、旅立つのだ――、勇者よ!」

「…………まぢですか?」



「つぅかさぁ、早すぎじゃね? 戻ってくるの。え、なに、何にやられたらそんなにすぐに死んじゃうの?」

「あの、青くてぷるぷるした、でっかい水玉みたいな、ヤツです、はい……」

「は~~~ぁ? アレにやられたの? あのアレだよね、誰もが最初に戦う雑魚中のザコモンスターに~~~ぃ?」

 呆れた顔で俺を見てくる王。

 痛すぎるその視線に俺は、ただただうつむくしかなかった。

 どういうワケか知らないが、俺はまた蘇り、王の間に居たのだ。

「俺も、そう思ったンすけどね、はい。なんか、すっごく強くて、ですね。……油断したと言うか、なんと言うか……」

 まさか窒息死するとは思わなかった。てか、城から出て一時間と経ってないぞ。

「おいおいおいお~い、噛みつけばいいじゃんよぉ、そういう時はぁ!」

「いや、初っ端からそんなアグレッシブな戦い方、出来るかっての……」

「あ? そんなん誰でも知ってる常識だぜ~? え、なに? お前、子供以下? つうか村人以下じゃん、赤子じゃーん! しっかりしろよぉ勇者のくせに~ぃ!」

「いや……だから、俺は勇者なんかじゃないし、むしろ村人だったし、てか目覚めてすぐなら赤子と言っても過言じゃないし……」

「なにぶつぶつ言ってんだよぉ……おい、大臣!」

「はっ。いかがいたしましたか、王よ」

 今まで傍らで黙っていた大臣オッサンが王の前に出た。

 王が大臣に問い掛けた。

「どうする、コイツ? こんなに弱かったっけ?」

「ふむ。どうやらこの者、丸腰のようですな」

「あ、ホントだ。素手じゃん。武器ないじゃん」

「おそらく、全滅を繰り返した挙句、所持金が底を着いてしまったのでは? もしくは装備禁止の縛りプレイ中とか」

「おい~、そーゆーのは上級者のすることだろぉ。駆け出し勇者はまず真っ当に冒険しろよなぁ」

「いやはや、不思議なこともあるようですな。普段なら勇者の名を盾に片っ端から金銭巻き上げて全身最新装備を貢がせてやるとか言っているくせに、今のこの者からは昔懐かしき骨のある若者の気配を感じられますぞ」

「おい、アンタらの勇者の定義ってなんだ? 相変わらず失礼なこと言ってるだろ、よくわかんないけど」

 オッサンふたりに再び軽蔑の眼差しを送る俺。

 そんな俺に王はしぶしぶと言った感じで、

「ったく、しゃーねぇなぁ、おい、アレを持て」

「はっ!」

 王の命に兵士が何かを持って来た。大きな木箱だ。

「勇者よ、その宝箱を開けるがよい」

 俺が王の言葉どおりに箱を開くと――、

 なんと!

 金貨が十枚入っていた!

「え、良いンすか、コレ……?」

 日雇いだった頃の日給の数倍はある額だ。てか俺、金貨なんて持ったことないや。

「それを持ってさっさと街へ行き、旅の支度を整えるがよーい」

「あ、ありがとうございます……ッ!」

 思わず素直に感謝してしまった俺。

 こうして俺は再び城を出た。

 


 つづく!

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