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たった一つの・・・

作者: 鈴木 湊

たった一つの・・


 自分はいじめられっ子である。自分でも分からないほどである。誰の気持ちもわからないような愚かな人間である

 助けてなんて言えないような奴である。

 四月。入学式が間近に迫っていた日。小学校のいじめっ子と共に中学校に入学である。この時、既に先が思いやられるグチャグチャな心である。玄関に着いた自分。そこには嫌いな、いじめっ子の奴らがいた。一瞬目を合わせると、ニマッと笑った。どうしたらいいか分からなくとりあえず教室に向かった。


  一章

           孤独

 クラスに向かい、教室前の名簿表見た。愕然とした。いじめっ子全員が1年1組だった。泣きそうな気持を抑え自分の席に座り、「入学おめでとう」と書かれた黒板をじっと見つめた。まるで何かにとりつかれたかのように・・・

 担任と思える先生が入り、入学式についての説明を始まる。全員が緊張で凍り付いていた。出席番号で並んだが、後ろからのいじめっ子の熱く、そして痛い目線を背中で感じた。

 体育館の扉の前に待機し、司会の指示で扉が開かれる。吹奏楽部の演奏の音波で飛ばされそうになった。のしのしと歩き、担任の指示で座った。初めての式。初めての匂い。全てが緊張と、これからの中学校生活の哀れさと悲しみ、悔しみが感じられたかのようだ。担任が一人一人の名前を呼び始めた。まもなく自分の番。緊張してきた。でも、すぐに緊張が絶望に変わる。自分が返事する瞬間、いじめっ子の母親がおもいっきり嘘の咳ばらいをした。自分の返事は誰にも聞こえない。伝わらない。

「もう学校なんて、行きたくない。」

涙ながら、小声で小さく発したあと、下唇を強く噛み、膝の上に置いてある両手に思いっきり力を入れた。自分の周りだけ次元が違う空気があった。誰もいない。孤独な空気。重さで潰れそうになっていた。

 今日は入学式のみで下校。明日から教室は戦場となる・・・。


   二章

           日々

 中学校最初の授業は国語だった。担任の専門教科でもある。たんたんと授業が進んでいくしかし自分はそう、行かなかった。なにやら後ろから手紙が飛んできた。初日からノートの端っこを使うとは、いい度胸である。二つ折りにしてあった手紙を開いて恐る恐る読んでみた。

「先にトイレ行っていろ。」

ただそれだけ書かれていた。目の前が真っ白になった。指示に従えば必ず奴らは何かやってくるし、指示に従わなければクラス全員に嘘情報流され周りから誰もいなくなる。どうしたらいいか分からなく、頭から汗がタラ―ッと流れる。自分の異変に気付いた先生は、

「どうした?トイレ行くか?」

あぁ、奴らの思いどおりになってしまった。行かなければいけない空気になりしぶしぶ、

「はい、トイレ行ってきます・・・。」

「では、僕たちがついていきますよ!」

元気にいじめっ子達が発した。

「わかった。お前。お大事にな?」

先生の言葉に頷くことしかできなかった。そして自分はいじめっ子に先導されるがままトイレに向かった。

 トイレに着いた我々は個室に全員入ってきた。するといきなりズボンを下まで下げられた。下半身パンツのみ。上着でギリギリ隠れるように対処するしか道は無かった。

「おいおい、中学生にまでなってまだこんな柄パンツはいていんのかよ。」

一人が大きく笑ったそれにつられて周りもクスクスを笑った。ただ聞くことしか出来なかった。

「中学生ならスポーツメーカーのだろ?普通。」

自分に目線を向け、語ってきた。だが聞くことしか出来ない。すると思いっきりパンツを下げられ自分の息子が露わとなった。

「うわー。毛生えてねーのかよ(笑)」

イライラした。個人差がある事を笑うなど人権を知らないのか。いや、自分には人権もなにも、元々無いのだろう。人権。それは生きる人間全員に与えられる権利だ。不自由な人も、赤ちゃんも全員にある。だが自分には無いのであろう。そんなことが分かったこの頃である


    三章

            恋

 こんないじめられっ子にも恋心はあるものだ。相手は、同じクラスメートである。その人を1さんとしよう。可愛い。性格も自分に厳しく相手に優しい。完璧な1さんであった。告白。なんてできるわけがない。だから羨しがりながら妄想を膨らませていた。そんな日々が変わったのはついこの間である。いきなり

「図書館に付き合ってくれる?」

顔を赤く染めながら1さんは言ってきた。もちろんokをした。楽しみで仕方がなかった。

 土曜日。駅で待ち合わせをしていた。緊張で吐きそうであった。図書館ごときで。時間ピッタリに1さんは来た。私服。可愛い。自分は、ドキドキしながら

「じゃあ、行こうか。」

「う、うん」

一体何なのか、今の間は。その間について考えているとろくな考えにならなかった。それは、告白?

 図書館について一緒に小説家の話をした。まさか同じ作者が好きだとは心が熱くなり鼓動の周期が早まり音が耳に伝わった。

1さんがいきなりこんな質問をしてきた。

「ねー。聞いていい?」

「いいけど・・・」

「・・・・・誰か好きな人いないの?」

耳元で囁かれた一言で自分の息子は剣へと一瞬で変身した。すぐには返事が出来なかった。体が石になったようだ。1さんは早く聞きたそうに続けて聞いてきた。

「いないの?」

「・・・・・いるよ?」

「誰?」

どうしようか迷う。誰だって緊張どころの話ではない話である。心臓がキツイと言ってきた。頑張れとしか言えなくなっていた。

「誰だと思う?」

逆に聞いてみる作戦に出てみた。すると思わぬ回答が。

「もう、分かっているでしょ。あなたが好き。」

ななななななななな。頭はパンクしていた。何を言っているのか見当がつかなかった。なんせ、初恋の人に逆告白なんて、こんな自分に与えていいのか、神様を疑ったりもした。

「付き合ってくれない?」

相手も相当緊張している。顔にしっかり書かれている。

「こんな自分。いいの?」

「うん。」

成立。こんな幸せは初めてであろう。その日は眠れないどころか、目が冴えていた。

 しかし、一瞬で崩される。薄く分かっていたことである。すっかり忘れていた。自分はいじめられっ子であった。

 月曜日。気持ちを切り替えるように深呼吸をして教室に入ると。

「あんな奴と付き合って何がたのしいの?(笑)」

1さんが、机に貼り付けにされていた。顔にはアザが出来ていた。

「おっ。本人のお出ましか?」

全員自分を見た。1さんは動いていなかった。その時、いじめっ子が自分に殴りかかってきた。しかしなぜか避けることができた。

「生意気だなぁ随分。」

その時何かが自分に入って来たような気がする。拳に力を入れ思いっきり走った。いじめっ子の腹に向かって。相手は避けられなかった。強く腹に突いた拳は深くまで入った。何が起きたのだろうか。自分も情報が錯綜し、整理できていなかった。とにかく一人をダウンさせた。

「う・・・うぅ・・・」

そうとう痛いであろう。ずっと動かなかった。

「にっ・・・逃げろー!!」

いじめっ子の連中は気が狂ったように逃げていった。

「あ・・・ありがとう・・」

1さんが涙を流しながら自分言ってきた。とにかく保健室に連れて行かなければいけない。いわゆる、お姫様抱っこと呼ばれる抱き方をして、保健室に連れて行った。

 自分は学級で保健係をやっていたため1時間目はずっと1さんの隣にいる事が出来た。保険の先生が、

「ちょっと見ていてあげて。湿布切れていて、買ってくるから。」

「はい。わかりました。」

なんだこの展開は、1さんが健康状態であれば18禁なことが出来るシチュエーション。しかし相手が寝息を立てて寝ている。顔はアザだらけのまま。自分のせいで相手をボロボロにしてしまった。自分が悪い。自分に対してなぜ1さんは恋心を作ったのか。


    四章

           真実

 1さんはすっかり元気になりアザもきれいになくなっていた。そこで自分は聞いてみた。

「なぜ、あの時いじめっ子の奴らが付き合っていること知っていて、1さんがボコボコにされていたの」

すると、

「あの時は、いじめっ子の1人が『あいつって本当にバカだよね』って言ってきて、イライラして、『私はあの子のことが大好きだよ!』って言っちゃってさ。したら『それで?付き合ったとかか?』『ああ!そうとも、私から告白しました!』って勢いで言っちゃって。したらいきなり殴られて机に貼り付けにされたあげくね、気絶させられた。」

そんな話をきいていた自分は崩れ落ちた。今まで親にさえ大切にしてもらえず、先生方はらは問題児扱いを受けていた自分。今までこんなに大切にしてくれる人がいなかった。しかも自分のために自らの体を犠牲にしてまで反抗してくれた。

「ありがとう。本当に。ありがとう。」

1さんはニコッとして、

「これからもよろしくね。」

って言ってくれた。言葉が出てこなかった。



     五章

            大切

 自分に初めて大切なものが出来で、1年が過ぎている。いじめは完全になくなった。仲良くはなっていないが、いじめが無くなったことに大変うれしかった。自分は今まで死んでもいいなんて思っていた。しかし、いじめは無くなり、安定したが学校生活が出来ている。自分の心は、今日の空と同じ、雲一つない快晴だった。なにも心に隠すものが無い。こんな幸せがこの世にあったなんて14年の人生の中で無かったことである。とくに1さんには本当に感謝している。自分のことを好きになってくれただけじゃない。自分を守ろうとしてくれた言葉と行動に感謝している。自分にはなかった、

             たった一つの大切なもの。

                            完




        あとがき


 こんにちは、鈴木湊です。もはや音ゲー関係ないですね(笑)

二回目の投稿作品になるのかな?読んでくれてありがとうございました。

 この作品は『自分』という主人公の気持ちの変化について出来るだけわかりやすく書いたつもりです。なんせ国語は苦手な人なので、多分出来てないと思います(笑)

音ゲー大好きマン的には、この物語書いていて、改めて人とのつながりについて考えさせられました。人間関係を続けるのが苦手なもので。書きにくい部分もありました。ですが、自分はこの作品は趣味範囲で言うと好きですね。

 次回は。どうですかね?まだわかりませんが。もし次回がありましたら、目を通してやってください。

 


      (この物語はフィクションです。)


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