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Phase.4 疑惑の秘書

 私はすぐ、市警のダド・フレンジーに連絡を取った。ダドは現場に出ていて忙しかったが、追ってすぐ連絡が取ることができた。事故のあらましは、とても単純なものだったのだ。

『西海岸の別荘近くを秘書と走行中、スピード違反を咎められ逃走、そのままカーブを曲がり損ねて、崖下に車ごと転落。事件性はなし。警察は事故で事件を処理。それだけだ』

「遺体は見つかったのか?」

『それは照会してみんと分からんな』

 しかし西海岸から送付されたファイルに、死体の検案調書はついてなかった。もしかすると遺体は発見されていないのかも知れない。

「運転は秘書がしているな」

『お前も知っていると思うが、あの男はガンをやってる。代表を解任されたストレスで参っちまって、それから表舞台には出てこなくなった』

「私もそのように、聞いている。ジェイムズ・ダーヴァニーは再起不能と言われたんだ。会社を手放し、本人も大病を患った。でも、それで終わりじゃなかったんだな」

『似たようなもんだろう。その西海岸の別荘も、売却を進めている最中だった。記録では職務質問の最中に逃走、パトカーを振り切って崖をダイブしたことになってるが、引き揚げられた車のダッシュボードからドラッグが発見された』

「ジェイムズがドラッグを?」

 それはますます、解せない話だ。

「あの男は薬物アレルギーで、風邪薬さえ受け付けない体質だった」

『だが、ガンともなれば話は別だろう。医療用マリファナの世話にもなっていたようだし』

 私はふと、ファイルに含まれていた秘書の写真を見た。ずいぶん若い(めす)のシャム猫だ。この顔もやはり見慣れない。

「どうにも解せないな」

『事実は事実だ。材料は提供した。…そこから何か考えるのが、お前さんの仕事だろう?』

 なるほど、もっともだ。だが、ここまで分かれば、よすがのたどりようはある。


 アネット・モンテローズ。

 それがジェイムズとともに死んだ新しい秘書の名前だった。死亡当時の年齢は三十歳とある。東海岸の出身で、学歴も申し分ない。犯歴はもちろん、どこか引っかかるような経歴があるわけでもない。だが、気になるのである。免許証の写真と言うポートレートに映ったアネットのサファイアブルーの瞳を、私はしばらく見つめてみた。


「それでまた、わしとこ来たっちゅうわけかい」

 そうなると頼れるのはやはり、緑の狸だけである。最近すっかり、マフィアの矜持を失くしたと言うか、警察にも興味を持たれていないヴェルデだが、さすがに昔のことには詳しい。

「大した用事じゃない。ただ、ダーヴァニー家の関係者に紹介してほしいだけだ」

「あれは、親父の代からの付き合いやど。まー最近疎遠やけど、そういやビアンカばあさん亡くなったとき香典もろうてたかな…どれ」

 また辛気臭いことを言いながら、ヴェルデは、自分のスマホを探った。

「オットー・シモンズはどないや。もうとっくに引退しておるが、話くらいは出来るやろ」

「生きてる?あのオットー・シモンズが?」

 私も驚きだ。教えてもらった住所はなんと、街はずれの福祉施設だった。本当に大丈夫なのか。

「まー、ぼけてへんとは思うで。ばあさん亡くなったとき、弔電くれてなあ。あとで電話で話したんやけど、昔のままやったで」

「すごいな」

 何しろシモンズは、先代からのダーヴァニー家の執事だ。創成期からダーヴァニー家とノワール・タッソの闇のビジネスのすべてに関わり、そのあらゆるトラブル処理の窓口になっていた男だ。私がジェイムズと知り合ったときにはもう、かなりの年齢だったと思うが。



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