勇者を止めよ
前話に出てきた剪紙成兵術はいわゆる式神で、この場合は絵に描いたものを式神として使役しているくらいに考えていただけると幸いです。
ちなみに剪紙成兵術は道教の秘術でもあるそう。秘術なのに名前が広まっているのはいかに…。
「やりすぎました‼︎」
戦い(?)が終わり、倒れるバルドフェルドに歩み寄る。
まさか一撃で終わるとは思いもしなかった。
モモハが傷つかないようにと覚えておいた術がこんなにも高威力だったとは。というかこの世界に来てもっと威力が上がっていた気がする。
「《若返りの秘薬》」
何かあった時用にポケットに入れておいた瓶を取り出し、その中身を彼の口に入れる。
不老不死の秘薬、その劣化版、されどある意味進化版である若返りの秘薬は、ほんの少量飲むだけで、あらゆる傷を治すという希少なものだ。
「ファット‼︎‼︎」
快活な声とともに飛び起きるバルドフェルド。
「おはようございます」
「貴様は、そうか、私は負けたのか」
俺の姿を見て、自分の身に何が起こったかを理解するバルドフェルド。
「申し訳ない、思いのほか仙術の力が強くなっていてな、思わず怪我をさせてしまった」
「いや、それはいい。それほどまで強い者がガイル様の近くにいるのであれば、我々も安心できるというものだ」
穏やかな笑みを浮かべて答えるバルドフェルド。なるほど、コレがイケメン補正か。
「俺はイツキです。霊萊樹」
「バルドフェルド=オーウェンだ。ぜひバルドと呼んでほしい」
「わかりましたバルド殿よろしくお願いします」
手を出し、握手を求める。バルドには結構きつい物言いをしたのだが、彼はそれでもなお俺に友好的な態度をとった。
「うむ、2人が友誼を結んでくれるのならコレほど嬉しいことは無いな」
ガイルも俺たちを見て満足そうに笑っている。
「では私はこれから勇者の居場所を探します。なので出来れば部屋をひとつ貸して頂きたいのですが…」
ドゴオォォォォォオオン‼︎‼︎
「どうやら必要ないようですね。ではいってくるとしましょう」
リュックの中に入っている軍服を装備し、灰色のローブを羽織り、鴉のお面をかぶる。
万全の準備を整えてから音のした方へと向かう。
命を奪って良いのは、奪われる覚悟のあるものだ。それを勇者気取りのバカに教えてらやねばなるまい。
・・・次こそいい感じに締めくくれた。