観光?
「なんだか騒がしいな」
ノワが着替え終えてからすぐに3人で街に行くことにした。
コレはノワの希望だった。
外に出るのが初めてだったらしく、世界のことを少しでも知りたいのだと言っていたので街に出ようといえことになったのだ。
昨日の貴族はまだしばらく眠っているはずだからノワを連れて出歩いても問題はないだろう。というかそもそも、あそこまでボロボロにされたノワが今五体満足で生活しているなんて考えるはずがない。
よって貴族に追われる心配もない、多分、きっと。
「2人は何が見たい?」
手を繋いでトテトテと隣を歩くユリアと半歩ほど後ろを歩くノワに尋ねる。
結局ろくに観光をしていない。任務はあるのだが、肝心の中央塔の扉は開きそうに無いし、しばらくは緩んでも大丈夫だろう。気を抜ける時に気をぬくことが、楽に生きるための方法らしい。
「にー様と一緒ならどこでも」
「ご主人と一緒ならどこでも」
うん。嬉しい事を言ってくれるが、それでは困る。
俺個人としては地下迷宮や迷路迷宮でひたすら魔物と戦ったりしたいのだが、そんな事をして2人が喜ぶとは思えない。
景色的には貴族街が綺麗だったが、俺とユリアは昨日行ったばかりだし、ノワも自分が捉えられていた場所にもう一度いきたいとは言わないだろう。
よって却下だ。
「適当に商業区でも行こうか?」
しばらく悩んだ末に出てきた答えはそれだった。
***
商業区は塔から見て西側に位置している。ギルドをはじめとして様々な商業的施設が並んでいる。
ちなみに朝、宿屋周辺がうるさかったのはこの島を統治する貴族が昏睡状態で発見されたかららしい。
おわかりの通り、あの豚貴族である。
それに伴い勇者パーティーが貴族街周辺を警備しているらしい。
そっちに行かなくて正解だった。
「人が多いから離れないようにしようか」
2人の手をギュと握った。
「はい‼︎」
「あっ…」
ユリアは嬉しそうにはにかみながら、ノワは少し恥ずかしそうに頭のケモミミをピクピクと動かしながら、手を握り返してくれた。
しばらく露店を見て回る。祭りの屋台のように様々な店がある。食べ物系だと串焼き肉や、ジュース、少し変わったところなんかはケバブなんてのもあった。
それらを1つずつ買い、3人で分けて食べた。
「上手いな。全体的に質が高い」
「ご主人、イールパースは海産物も取れるから其方もおススメです」
「んじゃ、そっちの方にも行きますか」
2人と手を繋ぎながら歩いていると、一瞬首筋に痛みが走る。
かつて女神ルチアが顕現した時と同じ、自分より圧倒的に上位の存在である事を告げる痛みだ。
しかしそっと周りを見渡して見てもそれらしきものはいない。
「にー様?どうしました?」
「ご主人、少し痛いです」
いつのまにか2人の手を強く握ってしまっていたらしい。
「ああ、ごめん。なんでもないよ」
少し気がかりではあるが、今は置いておくとしよう。
もしかしたら気のせいということもあるだろうし。
***
もう日が傾き、夕方になってきたあたりで、出店でアクセサリー類を見た。
「お、兄ちゃん家族で買い物かい?安くしとくよー」
店を開いていた男が得意げに自分の店の商品について解説をして行く。
2人の方を見るとノワが1つのチョーカーを興味深そうに見ていた。
「特にこの首飾り、なんとこれ魔術を使用するための媒介にもなる優れもの‼︎」
ノワの視線に気づいたのか少し興奮気味に商品の紹介をしてくれる店主。
イールパースを空から見たらこんな感じかなって思うようなアクセサリーだった。おそらくミスリルをベースに細かい部分に宝石をちりばめた芸の細かい一品だ。
そのくせにお値段もかなりお手頃だ。しっかりとした店で買ったらもっと高いだろう。
よし。これは買おう。
「それじゃあそのチョーカーと、あとそこの髪飾りください」
「毎度ありぃ!」
店主に支払いを済ませて早速チョーカーをノワにつけてやる。
まるで最初からそこにあるのが自然だとでも言うように似合っていた。
もう1つの髪飾りはユリアへのものだ。
黄金色に輝く三日月型の髪飾りをユリアの頭につける。
こちらもよく似合っている。ありふれた例えをするのなら月の女神といったところだろうか。ユリアは女神だしあながち間違いでもない気がする。
「2人ともよく似合ってるよ。それじゃあそろそろ戻ろうか」
気づけば日もほぼ沈みきっており、空には月が浮かんでいた。
ノワが独り立ちできるまでこんな幸せな日々が続けばいいなと思う。
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次回の更新は再来週の土曜日17時を予定しています。
…週一更新に戻したい。




