第56話 天然ほど最強なものはありません
三が日の最終日に、久しぶりのバッティングセンターに行ったら、スカった80キロのボールが後ろの衝撃吸収材に跳ね返って、首と頭の間の、押したらちょっと凹む箇所にジャストミートした作者です(#)Д`;;)イタイ!!!
しかも、同じ日に車に轢かれかけました。まぁ、でも、新年早々、挨拶のネタが出来たから結果オーライ!
そんなこんなで、新年明けましておめでとうございますm(*_ _)m
早いもので『主人公がチート過ぎてヤバイ件』も二年と少しが経ちました( ˙꒳˙ )ウン!!¨̮⑅*
これも一重に読者の皆様のブックマークやら感想やら誤字報告やらのお陰です(・ω・)و ウイッ
今年も、どうぞ『主人公がチート過ぎてヤバイ件』と『老紳士は魔王になっても紳士です』をどうぞ宜しくお願い致します。
それでは本編(*`・з・)ノ))ィッテラッタイ♪
陽がまだ昇っていない早朝。見張りの心配がなく、グッスリと眠ることができた行商人組と冒険者組は、ゴリアテが用意した簡単な朝食を採ると、設営していたテントなどを撤収させた。草を食べている馬に、固定式の金具を取り付ける。甲野は朝食を片手に、消えかかっている焚き火に手をかざす。焚き火は液体のように動く土に飲み込まれ、その痕跡を消す。これは盗賊対策のためである。焚き火はそこに人の痕跡を示し、その場に居た時間を知らせる為、移動の際は出来る限り、その痕跡を残さないようにする、
各々が忘れ物がないかを確認してから、荷馬車に乗り込む。先頭の荷馬車は行商人の声を合図に、ゆっくりと動き出す。アムドとウシアスも、その後ろをのんびりと付いてゆく。
「なんだか、これで良いんでしょうか……?」
馬車が動き始めて三十分が経ち、第一声はタリタスだった。タリタスの言葉にまともに反応したのは、お茶をすすっていたおじいちゃん──────、もとい、不死王で甲野の使い魔のブエルと、幌馬車と接続中のゴリアテだった。
「ん?何がじゃ?」
「僕、護衛依頼と言えば、凶暴な魔獣が人を襲ったり、荷を狙った盗賊が襲撃したり、そんなのを想像してたんですけど……」
『若干、誇張されてはいますが、護衛依頼と言えばそのようなイメージで良いでしょうね』
ゴリアテはタリタスの言葉に凡そ、同意する。タリタスの言葉は間違ってはいないのだが、実際、凶暴な魔物は森の奥地に多く生息する為、現在、甲野達が居る、街道などには滅多に出現しない。盗賊自体も、積み荷を奪う際に、自分達も命がけな為、奪う相手を吟味して行動を起こす。なので、今回のような、一角獣が二体もいるような荷馬車を襲おうなどは普通、考えない。余程、飢えていれば別の話だが。
「たまに鳥とか小さな獣とかを見かけるだけで、魔獣の”ま”の字もないんですけど……」
「あの二人が近づけないようにしとるからのう」
『えぇ。あの二人は優秀です。万が一にでも魔物を近付けるような事があれば、それは相当なものでしょう』
ブエルは自分のお茶を飲みながら、タリタスにもお茶を勧めた。タリタスは、ありがとうございます、と礼を言い、一口飲んだ。ゴリアテはすかさず、タリタスの傍に、茶菓子を置いた。ちなみに、ゴリアテの手作りである。
「……ふぅ。安全なのは良いんですけど、これじゃあ次に護衛依頼をする時に、対応できない気がして……」
「コーノ様宛に苦情が来とるぞぉ!!」
するとブエルは突然、甲野に向かって大声を出した。その内容に、タリタスは酷く慌てる。
「え!?ちょっと!い、いや!別に苦情とか!そういうわけでは!ブ、ブエルさん!!ぼ、僕に恨みでもあるんですか!?」
タリタスの慌て様に、ブエルはヒッヒッヒッと若干の引き笑いをする。楽しそうにバシバシと畳を叩いている。
「ブ、ブエルさん!笑ってないで訂正してください!コーノさんに殺されちゃうじゃないですか!!勘弁してくださいよ!まだ僕は死にたくないんですから!!」
『貴方も中々言いますね』
「……俺は悪魔かなんかか?」
タリタスの悪意の無い言葉に、甲野は苦言を呈し、他の甲野組は大笑いしている。
ちなみに、ロシックは我関せずという感じで、前足で床をバシバシと叩き、大笑いしているバステトを撫でている。
しかし、ここでロシックがとんでもない爆弾を投下する。
「……オッサンが悪魔?」
甲野以外の甲野組が吹き出した。
「ぷっ!コ、コーノ様が……オッサンっ!!」
「オッサンって……!」
「ゴホッゴホッ!ろ、ロシック……!お主……本当に最高っ!」
「にゃ……にゃにゃにゃ!!ケッホケッホ!」
『……す、すみません……くっ……ロシック……貴女、流石です……ぷっ!』
甲野が冗談のつもりで言った、オッサンという言葉をロシックが本当に言った事に、甲野組は今までに無いダメージを受けた。あの、ゴリアテが取り乱し、笑っているのだ。
ブエルに至っては、死にかけである。不死王なのに。
「言っちゃ駄目だった?」
ロシックの疑問に甲野組は答えた。
『「「「いや、最高!」」」』
「にゃにゃ、にゃ!」
全員が声を合わせて言った。ブエルとバステトはサムズアップをしている。
しかし、タリタスは顔面蒼白で、今にも卒倒しそうだった。
「ろ、ロシック……僕たちを殺す気……?」
「……?」
しかし、タリタスの言葉はロシックには届いていない。それに他の二人も、甲野組の様子を見て、別に大した事では無いことは察している。要するに、タリタスが敏感になりすぎているだけなのだ。甲野自身も、ある意味、自業自得な所があるので、怒る気は一切無い。そもそも甲野は意外と物事に対して寛容なのである。しかし、そんな甲野でも一言、言いたい。
「こんな笑うか……?」
◇ ◆ ◇
「……ここ……数百年の……中でも……一番……命の危険を……感じた……わい」
笑い地獄から脱したブエルは途切れ途切れの呼吸で言った。
『まさか、私まで笑わせられるとは思いませんでした』
「ロシックちゃん。コーノ様より強いかもね……ぷっ!」
「ウシアス。それは言えてる……ぷっ!」
「にゃ」
ウシアスの発言に、アムドとバステトが同意した。ロシックはとことこと、甲野の方まで歩き訊ねる。
「駄目だった、おっさん?」
全員がまた吹き出した。甲野はそんな面々を横目に、ロシックに言う。
「別に言っても構わんぞ」
甲野はそう言いながら、影の中に潜んでいるザガンとキマリスの名前を言った。二人は影から現れると、直ぐにブエルの両腕をがっちりと拘束した。例えるなら、宇宙人がコートっぽい服を着た外国人二人に両腕を掴まれているアレのようだ。
「え?」
突然の事に困惑しているブエルに、ザガンとキマリスは拘束に力を入れながら言う。
「さあブエル。ちょっとは特訓をしようか」
「少し訓練をサボり過ぎだぞ。ブエル」
ブエルは額に汗を……流せないが、流してそうな顔をする。
「い、いや……儂はこの馬車を護衛せんといかんので……ザガン様とキマリスも同じじゃろ?」
「コーノ様に訓練の為に一時護衛から離れても良いと許可を貰っている」
「神妙にお縄につけ」
「嫌じゃあぁぁ!」
ブエルの必死の抵抗も虚しく、二人に連れ去られてしまった。幌馬車の中の気温が、数度下がった気がした。
「……何処行ったの?」
「ん?ただの地獄じゃよ」
「?」
ロシックはコテっと首を傾げた。しかし、事情を知っているアムドとウシアス、ゴリアテは少しブエルに同情をする。
「……生きて帰ってくるかしら?」
「……さぁ?」
『まぁ、不死王ですから、殺しても死なないと思いますよ。多分』
「え!ブエルさん、不死王なんですか!」
「おいおい、マジか……」
「本当に居るのね」
「……バステトちゃんモフモフ」
やっぱり、ロシックはぶれない。一番、豪胆である。
「て言うか、思ったんだけど、不死王があんなに恐れる訓練ってなに?」
「た、確かに、そう言われれば……」
「もし、俺達がやったら、どうなるんだろうな」
三人はヤンヤヤンヤと謎の訓練の内容に花を咲かせている。ロシックはそんな三人を他所に、こっそりと甲野に耳打ちで訊いた。
「……ねぇ、どんな訓練なの……?」
「まずはな……で……これを……そんでもって…………」
訓練の内容に、バステトを胸の前に抱えているロシックは……。
「……地獄だね」
「……俺もそう思う」
「くわぁ〜」
甲野は首を縦に振り、ロシックの言葉に同意した。バステトは欠伸をした。眠たそうに、バステトプラプラと左右に揺らしている。ロシックは座ると、そんなバステトを自分の膝上に乗せ、ふわふわな毛並みを整えるように撫でる。バステトは相変わらず、気持ちよさそうに目を細める。
「可愛い……」
「だろ?」
「ただの猫みたい」
「もう、ただの猫でいいだろ」
「ふにゅ……」
いや、駄目です。この子、神獣です。一応、神獣です。多分、神獣なんです。もしかしたら、神獣です。ひょとしたら、神獣です。
前書きでも言いましたが、ブックマークや感想や誤字報告などは本当に執筆の励みになります!
(o´・ω・)´-ω-)ウン
あれがあるだけで、執筆のやる気が違います。本当に違います。
空腹時に食事をするのと、そうではない時に食事をするくらい違います。
感想や誤字報告の通知があると、「あ、小説を見てくれてるんだなぁ」って思います。
なので、お手数ですが、気が向いたら感想や誤字報告を宜しくお願い致します((。´・ω・)。´_ _))ペコリン




