第53話 クルス国出国
どうも、執筆方法はスマートフォンよりパソコン派の作者ですU ̄ー ̄U
何だかパソコンの方が「書いてるなぁ」感が凄いんですよ(´へωへ`*)
さて、眠いし前置きはこれくらいで、本編
─=≡Σ((( つ•̀ω•́)つ はよ行け
隠れ家でのBBQから、四日が過ぎた。この四日間、特に変わった事は無かった。強いて言うならば、五、六割の貴族が爵位を剥奪された事くらいだろう。え?大した事だって?いや、だってこの爵位の剥奪ってブルさんが前々から考えてた事だし、クロロも準備万端だったから、即行で終わったし。そんな理由で、甲野はのんびりと観光をしながら、出国の日を迎えた。次の目的地は王都。その為に甲野は、例の行商人からの指名の護衛依頼を受けた。そして現在、護衛対象の行商人と打ち合わせをしている。
「王都まではどれ位で着く予定なんだ?」
「順調に行きゃあ、二週間から三週間ぐらいだな。」
「二、三週間か。」
「周辺の村にも寄るからな。普通に行くより遅いぞ。」
「護衛は他にいるのか?」
「あぁ。正直、コーノ程の力がありぁ他の護衛なんぞ要らんが、冒険者ギルドで働く知り合いから、新人の教育の一環に護衛依頼を受けさせたいと頼まれてな。」
「それは一人か?」
甲野の質問に行商人は少し、困った顔を見せる。どうやら、複数人らしい。行商人は甲野の問いを否定した。
「いや、それが、パーティーを組んでいる冒険者だ。馬車には今のところ空きもある。一応パーティー全員が入る場所もあるが……」
「あぁ、飯か。」
行商人は小さく頷く。
「そう言う事だ。どうせ道中で魔物くらい討伐するだろうし、討伐した魔物や動物の肉を干したりする為の場所が、確保出来そうに無いんだ。」
「それなら、俺の馬車を使うか?」
「あ?コーノ、馬車を持ってんのか?」
「あぁ。俺の馬車に食糧とか乗っければ、場所も確保出来るだろ?まぁ、俺がそのまま持ってくかも知れないけどな。」
「はははっ、コーノの実力なら、そんな事しねぇでも、俺らを殺してからでも出来るだろ?でもまぁ、その提案は有難いな。言葉に甘えよう。」
「よし、それなら、後で馬車を持って来よう。」
甲野はその後、簡単な情報交換をし、商業ギルドに向かった。道中、出店で気になる食べ物を食べながらなので、少し遅くなった。商業ギルドで甲野を迎えたのは、若干の肥満が目立つ男だった。男はドスンドスンと聞こえそうな走りで甲野に近付く。
「やっと来た!もう来ないかと思いましたよ!」
「まだ二日しか経ってないだろ。カートル。」
「時は金なり。商人の基本です!」
カートルと呼ばれた男性は、甲野を上の部屋に来るよう急かす。
「こっちの方がそれより忙しかったですよ!兎に角、来てください!」
甲野はカートルの愚痴に適当な相槌を打ち、上の部屋に向かった。部屋に入るとカートルは事務机の上に重なっている書類の一部を手に取り、甲野に渡した。甲野はその書類を受け取り、流し目で内容を見ていく。
「いやぁ、あの回復薬が売れに売れましたよ!」
カートルの言う回復薬とは、甲野が以前作っていた回復薬の事だ。通常回復薬には薬草や植物系の魔物の素材等を使っており、味は以前ブルさんの言った通り酷い苦さで大変不味い。そういう理由もあって冒険者も、必需品とは言えあまり好んで使用する者は少ない。それに比べこの回復薬は、果実の濃縮液が入っているので、不味いどころか、被験者に依ると大変美味しいらしい。甲野自身はまだ飲んだ事は無いが。その評判が広がり、甲野特製《回復薬果実味》は売れに売れている。当初の予定数を大幅に超えて売れた事に、商業ギルドのギルド長カートルはホクホク顔だ。
「ここ最近は大した儲けもありませんでしたから、新人には中々良い経験になりましたよ。」
「ある意味、修羅場だっただろ?」
「そんなの金貨を見れば吹き飛びますよ!」
大変商人らしい言葉だった。
「んで、俺の儲けは?」
「はいはい、こちらです!」
カートルは硬貨が入った白い布を甲野に手渡した。カートル曰く、甲野の儲けは手数料を引いても金貨三十枚もあるとの事だ。回復薬は甲野の希望で、一本銀貨一枚で販売しており、販売を始めたのが手数料分を足せば僅か二日間で300本以上売れた計算になる。通常、この品質の回復薬は地域によって多少の誤差はあっても、銀貨五枚はする。それに対し甲野の回復薬は、その五分の一の銀貨一枚。それは売れに売れるだろう。
「それで、次も同じ量を売るのか?一応、手持ちには余裕あるぞ?」
「いえ、少し量を減らして売ります。緊急時に対応出来る様に在庫を確保しておかないといけませんから。」
「緊急時にその体型で対応出来るのか?」
「いやぁ……あははは……」
カートルは甲野の言葉に、苦笑いをするしかなかった。
「まぁ、どうでもいいけど、太り過ぎは色んな病気になるからな?」
「……本当ですか?」
「聞きたい?」
「…………是非!」
甲野は《異世界知識》を駆使して、肥満に関する病気を並べていった。《異世界知識》は地球の知識も兼任する様で、甲野も色々と為になる内容があった。
肥満による病気を聞いたカートルは、体型の所為か汗をダラダラとかく。流れ出る汗を拭きながら、絶対痩せようと心の中で誓った。本当に痩せられるかは不明だ。
そんな為になる話をした甲野は頭に乗せているバステトと共に、アムドとウシアスの居る《第一拠点》に来ていたのだが、目の前に居るのは……
「あ、コーノ様。」
「何だか久しぶりに会うわね。」
どう見ても人間の、成人している男女が庭の掃除をしている姿だった。相手は甲野の事を認知している様だが、甲野自身は全く見覚えが無い。いや、見覚えは確かに無いのだが、眼前の二人が誰かは凡その検討がつく。
「アムドとウシアスか?」
「そうだぞ。」
「えぇ、そうですよ。」
二人は甲野の言葉に頷き、肯定の意を示した。甲野が二人を《第一拠点》に送る際、何となくステータスを視ると《人化》というスキルがあったので、そのスキルを使ったのだろう。ちなみに《人化》にはレベル表示は無かった。
スキルには、レベル表示がある物とレベル表示が無い物がある。レベル表示のあるスキルは、上達が見込める物。レベル表示の無いスキルは逆で、スキルを習得した時点でそれ以上の上達が見込めない物と分類されている。例えば、《斬撃》スキルを例に上げてみると、スキルレベル1ではゴブリンも倒せないが、レベル5になれば《斬撃》スキルの威力や精度も大幅に上がる。しかし、《人化》スキルは習得した時点で、それに伴う物は使用出来るので、それ以上のスキルレベルの昇級は必要無い。
ただ、一度習得してしまえばスキルレベルの昇級が必要無い分、スキルの習得は通常より大変難しい。
「もうすぐしたら、クルスから出るから準備しとけよ。」
「あぁ、移動ですか。」
「今回は他にも人が居るからな。」
「ん?どゆこと?」
アムドは首を傾げる。甲野は簡単に護衛依頼の内容をアムドに説明した。ウシアスは甲野の命令には絶対服従をしているので、簡単に聞いている。絶対服従しているのは、ペットのバステトを除いた使い魔全員がそうなのだが。
「成程〜。て事は、その人間の前じゃあ《人化》しない方が良いっぽい?」
「ん〜、窮屈じゃ無かったらその方が良いな。別に絶対って言う理由じゃ無いしな。」
「大丈夫です。我々の元の姿は獣の方ですから。」
「ま、そうだな。こっちの方が色々と便利ってだけだからな。」
「わかった。それじゃあ準備するか。」
甲野は《無限収納》から何と馬車を取り出した。馬車は殆ど減っていない、塩や胡椒と言った香辛料を乗せている。アムドとウシアスも、元の一角獣の姿に戻った。
「やっぱり、こっちの方が落ち着くわね。」
「そうだよな。」
元の姿に戻った二人は、人間の言葉で会話をしていた。これは《人化》スキルが関係している。《人化》スキルを持つ者は任意で喋る言葉を人語へと変換する事が出来る。
「さて久々にこっちでのんびりするか。」
◇ ◇ ◇
「あぁ、やっぱり畳は良いなぁ。」
「んにゃ~」
甲野と先程まで眠っていたバステトは、ゴリアテ自信作の和室でゴロゴロとしている。直ぐ隣には正座で甲野特製魔水を優雅に飲んでいるザガンとキマリス。そして「へんじがない。ただのしかばねのようだ。」というナレーションが流れて来そうな、大の字で倒れている骸骨が居た。そのブエルの背骨にゴロゴロとしている、バステトが乗っかかって来た。
「テッテテー!バステトはボス、ブエルを倒した!」
「にゃ!」
「……アイテムは落とさんからな……」
「大丈夫、剥ぎ取るから。」
「にゃぁ。」
甲野の言葉に反応したバステトは、爪をブエルに見せる様に前に出し、舐める仕草をする。
「全く、物騒じゃのう。」
ブエルは、よっこいしょと身体を起こした。バステトはブエルの背中から、飛び下りる。そのまま、バステトはゴロンと寝転んでいる、甲野の背中に乗り移った。
「うっ!」
思ったより勢い良くバステトが圧し掛かったので、甲野は思わず呻き声を上げる。
「『バステトはコーノに5ダメージを与えた!』と言ったところじゃな。」
「バステトが……裏ボスだったか……」
「にゃっにゃにゃー!」
バステトは甲野の背中で、ドラクエのレベルアップの効果音と共に遠慮無くゴロゴロと転がる。甲野はアニマルセラピー効果で只管癒される。
「ふぁ〜」
「にゃ?」
『眠たいのですか?』
甲野の欠伸に、静観していたゴリアテが言う。甲野は眠たそうに返事をする。
「……あぁ、何か眠くなって来た……」
畳の素材であるイグサの香りには気持ちを落ち着かせる効果がある。畳が身近にある日本人が、畳のある部屋に入ると、心が落ち着くのはそれが原因だ。
『それでは、時間が来たら私が起こし……って、もう眠っていますね。』
「……」
甲野はゴリアテの喋っている最中には、もう熟睡をしていた。その雑魚寝している甲野の隣では、バステトが自分の尻尾で身体を巻く様に尻尾を丸め、甲野と一緒に昼寝をしていた。使い魔四人衆は、そんな甲野とバステトを微笑ましく見ながら、ブエルがゴリアテの用意した少し大きめの毛布を掛ける。甲野は掛けられた毛布の中で、ゴソゴソとしている。
そして、各々がそれぞれの事をし始める。ゴリアテは甲野が起きた時の為に、冷たい水を用意し始める。
一方その頃、苦労人のブルさんはと言うと……
「ムフフフフ。」
「ブルさん、気持ち悪い。」
「酷い!」
ブルさんは自分の執務室で目の前の書類を見ながら御機嫌な様子だった。それもその筈。ゴブリンの餌くらいにしか使えない、貴族を排除出来たのだから当然だろう。以前から不要な貴族を排除したいと思っていたが、中々証拠を残さないので如何したものかと困っていたが、それが今回、クイーンサーペントという災厄のお陰で、爵位の排除対象であった貴族が尻尾を見せ、それが決定打となり、今回の排除劇になった。
「後は、空いた席の補充だけだね。」
「うん。貴族候補はもう決めてるけど、それでも幾つか残るもんね。」
「それなら、コーノに爵位をあげたら?クイーンサーペント討伐の報酬として。」
アデルの言葉にブルさんは難しい顔をする。
「ん~、僕もそうしたいけど、コーノって爵位要ると思う?」
「……要らないね。上級魔族三体と神獣が居るコーノに爵位なんて、必要無いね。」
その中にはさらに、ゴーレムと一角獣二体が入るのだが、まだ二人はその存在をしらない。
「そういう事。コーノも貸しで良いって言ってけど、絶対返せないよね?」
ブルさんの答えが決まっている問いに対し、何故か腕を組みブルさんの膝の上に座り答える。
「まぁ、無理だろうね。」
「ね?ところで、アデル?」
「ん?」
「重い。」
「フフフ、良いでしょ?偶には……」
「いや、確かに良いけどさぁ……」
アデルはブルさんの太腿に指を滑らす。
「ねぇ……ちょっと一休みしない……?」
「……それも良いかもね……」
ブルセクトはアデルの首に腕を絡める。二人の顔が近付く中、執務室のドアが開いた。そこに居たのは、クロロだった。
「公爵様、御報告したい事が…………あ。」
何かの書類だろう紙の束を持ったクロロが、執務室の中に居る二人の状況を見て固まった。ブルセクトとアデルもまさかの事態に、クロロの方を見たまま硬直している。まるで石化にでも掛かったかの様に、三人共呼吸をするのも忘れ互いを凝視している。そして、たっぷり十秒程二人を凝視したクロロは、執務室の中に踏み込んでいた足を一歩下げこう言った。
「……御楽しみの最中失礼しました。それでは!」
そう言い、ドアを乱暴に閉める。ドアの向こうからは駆け足で執務室から遠ざかる、クロロの大きな足音聞こえる。
「ちょっと待ちなさーい!!」
「クロロォ!!せめて弁明くらいさせてぇぇ!!!」
やっぱり、ブルさんはブルさんだった。そしてこの後、二人はクロロの口止めに日々の激務より苦労したとかしなかったとか。
◇ ◇ ◇
「おぉ!こらぁまた立派な馬車だなぁ!」
「知り合いの貴族から貰ってな。魔法を掛けてるから壊れる事はないぞ。」
「壊れないってそらぁまた……」
「ところで、そっちが例のパーティか?」
「あぁ。」
冒険者達は甲野に見られ、何故か身体がビクッと震わす。
「あっ、ぼ、僕がリーダーのタリアスでしゅ!」
「俺はセンボだ!」
「私はコリーで、この子がロシック。」
ロシックと呼ばれた小柄な少女以外が簡単な自己紹介をする。ロシックは何も言わず、ただ甲野の方を見てペコリと頭を下げた。宜しく、と言う事なのだろうか?
無口キャラか?よくラノベで見るけど、実際見たのは初めてだな。
甲野はそんな事を思いながら、自分の紹介をする。
「俺は甲野だ。まぁ、オッサンでも組長でも適当に呼んでくれ。」
「は、はいっ!」
パーティーのリーダーであるタリアスは何か緊張している様だ。甲野はこっそりとカートルに尋ねる。
「なぁ、何でこんな緊張してるんだ?」
「多分、ギルド長が脅したんだろ。コーノには無礼を働くって。」
「俺は貴族じゃねぇぞ?」
「同じ様なもんだろ?公爵に大きな貸しがあるあんたなら一言で貴族になれるぞ。最低でも子爵以上に。」
「誰が成るか。貴族なんぞ。」
「まぁ、確かに貴族には面倒事が付き纏うからな。」
二人がそんなヒソヒソ話をしていると、タリアスが恐る恐る、本当に恐る恐る手を挙げ二人に話し掛ける。
「あ、あのぅ。」
「ん?」
「ご、護衛の人数の配分を決めなくて、良いのですか……?」
「配分かぁ。」
腕を組み、甲野はタリアスの言う人数の配分を考える。
ん〜、別に俺一人でも良いんだけどなぁ。でも、ギルド側は新人冒険者の教育も入ってるからな。
甲野は20秒程悩んだ末、こう結論を出した。
……よし。見学も勉強の一環って言うしな。
「四人は俺の馬車に乗ってくれ。」
「え?でも、行商人の皆さんを護衛しなくては……」
「構わねぇよ。コーノがそう言ってんだ。」
護衛対象の行商人がそう言う為、タリアスも甲野の提案に応じるしか無くなった。そして甲野は何時もの様に自分の影に居る、ザガン達使い魔三人衆を呼んだ。その呼び出しに答えたザガン達は甲野の影から姿を現す。勿論、変化姿で。
「「「「え!?」」」」
その突然の光景にタリアス達、護衛組は唖然とする。それに対して行商人組は少し驚いただけで、何事も無かった様に商品の点検を引き続き行う。以前のBBQの際に、甲野の非常識加減を嫌と言う程実感しているので、この程度では大して驚きもしない。
「ザガンは上空から馬車の周囲数キロを監視してくれ。キマリスは地上で上空からは見えない森の中を使い魔と共に警戒。馬車に近付いて来る魔物は討伐してくれ。ブエルは先頭馬車に乗り、馬車の周囲数十メートルを監視してくれ。」
「「「ハッ!!」」」
「それじゃあ散!」
甲野の言葉を合図に、ザガンとキマリスはその場から姿を一瞬で消す。
うん。散って何かやってみたかった。何か忍者っぽいし。
甲野は小さな願望を叶え、拳をグッと握り締めた。
「さて、儂はのんびりと護衛をするかのう。」
ブエルは自分の配置である、馬車に足を進めた。ふと、新人冒険者の方を向くと、口を大きく開け、目玉が零れ落ちそうな程見開いている。甲野はタリアスの目の前で手を振るが、反応は無い。少し大きな声で言うと、漸く、四人は現実に戻って来た。
「はっ!」
「お、戻って来た。それじゃあ、さっさと乗ってくれ。あっちも準備出来たみたいだしな。」
「は、はい!」
タリタスは一瞬さっきの三人は何者なのかと訊きそうになったが、冒険者の暗黙の了解である、冒険者に対しての詮索になると思い、訊くのを止めた。そして、甲野の馬車に乗った四人は訝しげに馬車の床を見た。本来の木の板では無く、何かの植物が編み込まれた、長方形の板が数枚、床に嵌め込まれていたからだ。すると、甲野は靴を脱いで馬車に上がる様に言った。
「で、でも、それじゃあ魔物が来た時に、すぐに飛びだ……」
「良いから良いから。護衛はあの三人に任せとけば良いから。」
甲野はタリタスの言葉に被せて言う。タリタスも渋々と言った感じで、納得する。
「は、はぁ。」
「それにほれ。」
「ん?」
甲野が指差した馬車の中を見ると、無口少女ロシックが馬車の床でゴロゴロとしていた。勿論、甲野に言われた通り、靴を脱いで。タリタスは慌ててロシックを止める。
「ちょ、ちょっとロシック!」
「……これ、気持ち良い。」
「ほれ、お前らもさっさと乗った乗った。行商人も待ってるぞ。」
ロシックを除く三人は、甲野の言葉で慌てて靴を脱ぎ馬車に乗り込んだ。すると、足の裏側を不思議な床の感触が伝わる。慣れぬ感触に若干のくすぐったさはあるものの、ロシックの言う通り寝転がってみると、確かに気持ち良い。そんな四人を甲野は満足そうに見ていた。
「よし、アムド、ウシアス、前の馬車に着いて行ってくれ。」
「ウイッス。」
「分かったわ。」
「「「!?!?」」」
動き出す馬車の中で、護衛組の冒険者は一人を除いて思いも寄らない場所からの言葉に、バッと起き上がる。声のした方を見るが、そこには馬車を引く一角獣とその傍でバステトとのんびりしている甲野以外誰も居ない。そう、御者も居ないのだ。その事に気が付いたタリタス達はまたもや慌てて、甲野に言う。
「コ、コーノさん!御者が居ませんよ!」
「あぶねぇぞ!?」
「そ、そうよ!?」
「……猫、触って良い?」
おっと、一人だけ己の願望を叶えに来た人が居た。甲野は転がって来たロシックに、寝転んだままバステトを渡す。バステトを渡されたロシックは、無表情だが楽しそうにモコモコのバステトを撫で回す。流石バステト。出会って十分で一人魅了した。
「いやいや、猫を触ってる場合じゃないよ!?」
「そうだぞ!」
「……わ、私も触って良いかしら?」
あ、もう一人魅了された。現に恐ろしき神獣の魅了。甲野は未だに御者が居ない周知狼狽している二人に言う。
「御者が居なくても、二人?いや、二匹か?まぁ良いか。あの二人なら言えば、勝手に行ってくれるぞ?」
「ぎょ、御者泣かせですね……」
「す、すげぇな……」
センボの言葉に、アムドが反応をする。
「そうだろ、すげぇだろ!」
「何言ってんの。人族の言葉が判るんだから、当たり前よ。」
「「!?」」
「後、見ての通り、人間の言葉判るからな?」
「す、すごいですね……」
「馬車を引く馬が一角獣って事にも吃驚したけど、それ以上だな……」
「これで驚いてたら、途中で心臓が持たないぞ?」
「そうよ。コーノ様に対しては、常識を捨てた方が良いわよ?」
アムドとウシアスの痛烈な物言いに、甲野は抗議する。
「それは言い過ぎじゃないか?」
「ペットが神獣の時点で非常識と思うけど?」
「アムドに同意見。」
そのアムドの言葉に、バステトを撫でていたコリーは撫でている手がピタッと止まる。そして、バステトに手を合わせ、拝みだした。
「何か御利益ありそうだから、拝んどこ。」
意外と余裕な様子だ。だが、そんな中、撫でる手を止めないロシックが一番、大物と言えるだろう。
「ほ、他に何かありますか……?」
「そうね……」
「あ!あれはどうだ?前にブエルさんが……」
甲野の非常識話に花を咲かせながら、一行はクルス国を出国した。
最初は普通にブルさんとアデルのイチャコラシーンを書こうかと思ったけど、やっぱりこっちの方が面白そうだった( ồωồ)و グッ!
さて、次回の《チート主人公》の続話はまた遅くなりそうです(多分)
そして、この文を書いてる今、阿呆みたいに眠い。うん、それだけ。




