第52話 隠れ家でブルさん達とBBQ
どうも、挨拶のネタに底が見え始めた作者です。
思ったより、早めに投稿出来て良かった
( ´艸`*).。*
だけど、やっぱり一気に書いたら眼がめっさ痛い
((^ω^≡^ω<ギャアアアアアアア
あと、長時間座ってると腰に来る
#)`Д´)いたっ
ま、そんな事はさておき、本編行ってらっしゃーい
(˙꒳˙ )͟͟͞͞ =ビュン!
《霊薬果実水割り》を100本程、ブルさんに渡した甲野は、自分が創った森の中にある隠れ家に来ていた。理由は、今日一日のんびりしたいのと、隠れ家近くの木に果物を生らす為だ。魔水と上級回復薬を鱈腹飲んだ甲野の魔力は、感覚でだが半分程回復していた。甲野が、近くの木に触れ、生らしたい果物を想像し、魔力を流す。すると、まるで早送りを見ているかの様に、木に次々と檸檬が生ったではないか。甲野は簡単そうに行っているが、確かに、魔力で植物の成長を促す事は可能だが、それは精々一日から一週間程度の成長しか促せない。しかも、純粋な魔力で一週間分の成長を促す事が出来るのは、数える程の人数しか居ない。
「檸檬はこれで良しっと。次は林檎か。」
甲野が檸檬がなった木を満足そうに見、別の木に移ろうとした途端、傍に居たバステトが、生っている檸檬の一つに噛り付いた。幸いにも檸檬の皮が厚かったので、身には到達していなかった。しかしバステトは、初めて見る果物に興味深々で、どうしても檸檬が食べたいのか、甲野に皮むきを要求した。
「そんなに食べたいのか?」
「にゃ!」
甲野が訊くとバステトは元気良く、何度も頭を立てに振った。甲野は、しょうがないとばかりに溜め息を一つ吐き、《無限収納》からミスリル短剣で器用に皮を剥き、手の平で豆腐を切る様に、檸檬を輪切りにした。そして《無限収納》から一枚の皿を取り出し、そこに輪切りにした檸檬を置いた。
「はい、どうぞ。」
「にゃー!」
バステトは皿の上の檸檬に真っ先に向かって行った。そして、前足をこれまた器用に使い、輪切り檸檬をムニャムニャと噛む。少しの間があった後、甲野の予想通り、バステトは悲鳴を上げながら辺りを、走くり回る。
「にゃにゃーー!?」
バステトは「何これ何これ!」と未知の、強烈な酸味に成す術が無かった。神獣をも倒す檸檬強し。甲野はそんなバステトを、可愛らしく眺めた後、深堀の皿に水を入れ、バステトの近くに置いた。バステトはその水を必死に飲む。
バステトが水を飲んでいる間に、甲野は木々に次々と林檎や桃、柿、桜桃等の果物を実らせた。しかも、ご丁寧に柿は種無しだ。
「ま、こんなもんか。」
甲野が立派に実った果実を眺めていると、水を飲み終えたのか、此方を恨めしそうに、じーっと鎮座して見ているバステトが居た。絶対に文句がある表情だ。甲野は、近くの林檎を捥ぎり、ミスリル短剣でバステトの口の大きさに合う、一口サイズに切り、自分の掌を皿代わりに、切った林檎を置いた。甲野は、怪しくないよ怖くないよ、と警戒するバステトを宥める。バステトは若干警戒をしながらも、ジワジワと甲野に近づく。この神獣チョロい。
甲野の掌にある林檎の匂いを嗅ぐ。取り敢えず、さっきの檸檬の匂いとは違ったので、ホッとするバステト。そして、意を決して、林檎を口に入れる。すると、林檎がお気に召したようで、器用に前足で頬をプニーと押し、幸せそうな顔をする。甲野は、それをずっと見ていたかったが、まだやる事があるので、皿の中に一口大に切った色んな種類の果物を入れて置いた。バステトは、ここは天国か!と言わんばかりに、果物を貪る。あ、ちなみに、皿の中には檸檬も幾つか入っている。なので……
「にゃにゃーーー!!」
こうなる。甲野は、思わず吹き出す。バステトに背を向けてはいるが、肩を震わし笑っている。神獣をも絶叫させ、甲野をも笑わす檸檬はやっぱり強かった。
◇ ◇ ◇
ひとしきり笑った甲野は《念話》でゴリアテに連絡を取った。
『コーノ様。何か御用でしょうか?』
「あぁ。ゴリアテってクイーンサーペントの解体、出来るか?」
『はい。可能です。』
「流石、有能執事。どれ位掛かる?」
『そうですね……凡そ一時間でしょうか。』
「早っ!!」
『さらに一時間追加で、クイーンサーペントの部位を分け、下味を付ける事も可能です。』
「……ゴリアテって常時俺の思考読んだりしてる?」
『…………さぁ?』
ゴリアテは長い沈黙の後、一言だけ放った。甲野は、色々察し、そうか、とだけ言った。
「それじゃあ頼んだ。」
『畏まりました。』
ゴリアテは、甲野が出したクイーンサーペントの死骸を魔法で何処かへ転送した。甲野はそれを見届け、自分の準備を始めた。
そう、BBQの準備だ。どうせ、これから色々と苦労するだろうブルさんを労ってのものだ。まぁ、甲野がしたいだけというのもあるが。ま、そんな事はさておき、甲野は着々と準備を始めている。ただ、その準備している物が、それはもう色々と凄いのだ。
絶対壊れない食器、即席で錬成した高性能のBBQグリル、同じく即席錬成のこれまた高性能な椅子と机。
さらに食材も凄い。最早、お馴染みになったオークキング、貴族でさえ滅多にお目にかかれない飛龍に火竜、街を余裕で潰せる魔物エンペラースネーク、そして解体と下味待ちのエンペラースネークの番、クイーンサーペントだ。ていうか、メニューが王国の国王誕生祭以上なのだが、それを指摘してくれる人物はここには居ない。
「後、野菜とか要るなぁ。流石に肉オンリーは胃が凭たれるからな。」
けど、野菜かぁ。まだ、あそこには植えてないしなぁ、魔力で作っても良いけど、疲れるからなぁ……。まぁ、後で良いか。今は取り敢えず、準備を進めるか。
甲野が黙々とBBQの準備を進めていると、そこに突然ブエルが現れた。何故か息切れをしてる。話を聞くと、ザガンに鍛錬を強要されかけたらしい。面倒な事が嫌いなブエルは全力で逃走した。そして、甲野の傍なら安全だろうと、此処にやって来た。ご愁傷様だ。
「ザガンの鍛錬ってそんなにキツイのか?」
「地獄が天国と思える鍛錬がキツくない訳ないじゃろ?」
「……ちなみに、具体的な鍛錬内容は……」
ブエルは甲野の耳元で、ザガンの鬼畜の所業を囁く。
「……逃げて正解だな……」
「……じゃろ?」
あの甲野が心の底から同情するザガンの鍛錬……一体どんな内容なのだろうか……。
◇ ◇ ◇
一先ず、BBQの準備が出来た甲野は、ブエルにある事を訊いた。
「そう言えば、ブエルの知り合いに野菜作ってる人居ないか?」
「野菜?」
「あぁ。夜のBBQに要るんだけど、用意出来て無くてな。」
「野菜……あぁ、一人居ったわい。野菜を作っとる知り合いが。」
「その知り合いから野菜貰って来れるか?礼はするつもりだけど。」
「あぁ、礼は要らんよ。あやつは趣味で野菜を作っとるから、くれと言ったら何時でもくれるわい。」
「それじゃあ、頼む。」
「ほっほっほ、頼まれましたわい。」
ブエルはそう言うと、自分の影にトプンッと水中に潜ったような音をたて、その場から消えた。
「よし、これで野菜問題は解決だな。後は……。」
甲野は果物を食べ終えたバステトを手招きする。
「……?」
バステトは甲野の手招きに呼ばれるがままに、首を傾け、甲野に近付く。
「あぁ、もうこの子可愛い!!」
「にゃー!」
思いっきりバステトは甲野に甘えた。甲野は思いっきりバステトを甘やかした。バステト成分の補充だ。バステト成分だけは過剰補充になっても問題は無い。だってうちの子可愛いもん!
「俺の唯一の癒し!」
「にゃにゃにゃ!」
甲野は、バステトの感触を楽しみながら、バステト成分を補充する。異世界に来て一番良かったと思える瞬間だった。
そして、さらに十分程、バステト成分を補充していると、思っていた以上に早くブエルが帰って来た。甲野はバステト成分を補充しながら、野菜の件を訊いた。
「どうだった?」
「ほっほっほ、貰ってきたぞ。大量にな。」
ブエルは《無限収納》から、大量の野菜を出す。全て、見事な出来であり、野菜自体に艶が見える程、瑞々しかった。甲野はそこから、胡瓜に似た野菜を齧った。パキンッと良い音を奏で、シャクシャクと心地良い歯応えと野菜の水分が、甲野の口から喉を伝い、胃袋へと流される。
「うんまっ!!」
「あやつも自信作だと言っておったわい。」
「いや、自信作ってレベルじゃねぇぞ?」
「儂は食わんから分からんがのお。」
「ところでこの野菜の名前なんだ?」
「確か”キウ”って名前と言っておったぞ?」
「へぇ、キウねぇ。」
初めて聞く野菜だな。まぁ、美味けらぁ何でもいいや。
甲野はキウを食べ終えた。そして、眼前の野菜に目を向ける。かなりの数がある。一回のBBQでは使い切れないだろう。なので、今回使う分だけ出して置き、残りは自分の《無限収納》に仕舞う事にした。そして、出して置く野菜には鮮度維持の魔法を掛ける。ブエルの話では貰った野菜は、つい先程収穫したばかりらしい。流石に収穫したての野菜が、数時間で劣化するとは思えないが念の為だ。
「さて、BBQの準備は大体こんなもんだろ。後は誰誘うかだな。」
ブルさんとアデルとクロロは確定だろ。後、レフィアも誘うか。あとは……あ、どうせならあの行商人と従業員誘うか。親睦会みたいな奴だな。そうと決まれば、さっさと行くか。
甲野はブエルの転移魔法でクルス国に戻った。
◇ ◇ ◇
「コーノに食事会に誘われたから、ある程度覚悟をしていたが……」
「これは、想像以上というか……」
「コーノって何者なの?」
「冒険者さ。」
「確かAランクでしたよね?」
「そんな冒険者に護衛してもらえるとは、私も運が良い。」
「凄いわね、この設備。」
「多分、食べ物を焼く道具だろうけど、見た事ない道具しか無いな。」
「一体、幾らするんだろう?」
「……一つ金貨30枚。」
「「「マジか!!」」」
公爵組と冒険者ギルド長レフィアと意外と有名な冒険者ゴーズ、そして行商人とその従業員四名、計九名は甲野が用意したBBQの設備に驚いていた。この設備は金額にすれば金貨100枚以上する。実は甲野、こういったBBQ等は結構凝り性で、高校生時代、学校のBBQで自分のBBQコンロやガスボンベ、キャンプによく使われるクッカーというもの等を持参した程だ。後、炭も。
「コーノ、これ程の物をどうやって用意したんだ?魔族関係か?」
クロロはコッソリと甲野に問う。甲野は何とも無い様に言った。
「ん?全部自作だぞ?あと、この森も自作だぞ?」
「…………そうか。」
クロロは色々と諦める事にした。眼前の設備だけならまだしも、周囲数十キロもの森も自作となれば、もう何も言うまい。
「ねぇ、コーノ。この生ってる果物みたいのって食べて良いの?」
「あぁ、御自由にどうぞ。」
甲野がそう言うと、各々が生っている果物を捥ぎ取る。やはり他の面々も気になっていたようだ。
「美味いな。」
「良い甘さね。」
「すっぱっ!!」
「食うのは良いけど、肉が食えなくなってもしらんからな。」
甲野の言葉に各々は手に持っている、食べ掛けの果物を持ったまま、用意されている椅子に着いた。椅子の機能性に驚く面々を後目に、甲野は肉の準備をする。魔法で各机に用意していた肉を置いた。甲野が「適当にやってくれ」と言うと、各々がそれぞれに肉を焼き始める。それを見て、甲野は肉の半分程の量の野菜を机に置く。甲野もノンビリと、バステトを撫でながら、自分の他より小さな一人分のBBQコンロで肉と野菜を焼き始める。
あ、酒を忘れてた。あぁ、今、ドワーフの銘酒しか無いからな。
甲野が酒をどうしようかと悩んでいると、ゴリアテから《念話》が入った。
《コーノ様、エールであれば、早急に用意出来ますが?》
《絶対、俺の心、読んでたな……?まぁ良いや。用意出来るなら頼むわ。》
《畏まりました。》
ゴリアテの《念話》が切れた。甲野はゴリアテのエールを待つ間、ドワーフの銘酒で持たせる事にした。魔法でドワーフの銘酒入りのタンブラーを、各机に人数分置く。
「コーノ。これ何?」
「酒だ。呑めない奴用のジュースもあるぞ?」
ブルさんの問いに甲野は簡潔に答える。そして、下戸かどうかを訊くと、全員酒が呑めるらしいので、タンブラーの中身は酒のままだ。一応、ドワーフの銘酒は、”隠れ家”に生っている果物の果汁で割っているので、タンブラー一杯で酔う事は無い。
「ま、それじゃあカンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」
甲野の適当な乾杯の音頭に、他の面々もタンブラーを手に取り、上に掲げ応じる。そして、それぞれが肉の焼ける良い音を肴に酒を呑んだ。すると、やはりと言うべきか、あちらこちらで酒の美味さに驚く声が聞こえて来る。一方甲野は、そんな声を肴に酒を呑む。時々、トングで肉をひっくり返して、肉の焼け具合を確認する。バステトも、焼けている肉を見て、甲野のズボンに涎を垂らしている。甲野はそんなバステトに、酒の代わりの果汁100%の林檎ジュースの入った何時もの深堀の皿を置く。バステトは眼をキラキラさせながら、可愛らしい短い舌で、林檎ジュースを飲む。甲野はもう一つ、バステト用の肉を置く為の浅底の皿を置いた。そして、焼けた肉を少し冷ましてから、バステトの皿に置いた。バステトは可愛らしい猛獣の様に、置かれた肉に噛み付いた。甲野も焼けた肉を自分の皿に置き、タレを浸けて食べる。
余談だが、このタレはゴリアテが用意した物で、どうやって用意したかは分かっていない。甲野が訊けば快く教えてくれるだろうが、甲野自身、大した興味は無かったので、訊いていない。
しかし、このタレが物凄く美味かった。
「うんまい!」
肉も美味いけど、このタレがヤバイな……。甘じょっぱいタレだけど、濃過ぎず、甘過ぎず、くど過ぎず。いや、むしろアッサリとしてるけど、肉の油を逃さず……色々言いたい事はあるけど、美味い!それに酒に良く合う!
「……コーノ。このタレも自作か?」
こういう時にやってくるのは必ず、この中で一番の常識人、クロロだ。クロロがタレの制作者を訊いている事に、アデル達は気が付いていない。
「いや、うちの者が作ったんだけど、ここまで美味いとは思わんかった。」
「このタレ、少し貰えないか?うちの料理人に使わしたい。」
貴族には大概、専属の料理人がいる。クロロもその一人だ。クロロ自身、料理をするので、時々、家の料理人と料理をしたりもする。
「それなら土産に全員分渡すか。」
「良いのか?」
「あぁ、構わんぞ。それと、配ったグラスも土産に入ってるからな。」
甲野は自分の机に置いてあるタンブラーを指差す。クロロは何か言いたげだったが、礼を言うだけに留めた。甲野もタンブラーの価値を分かっているだろうと思っての事だ。
「にゃにゃ!」
「ん?あぁ、スマンスマン。」
甲野がクロロと話していると、バステトは新たな肉を要求した。甲野は苦笑しながら、トングで肉を網の上に置いていく。ちなみに、火は勿論炭火だ。そして、この炭を用意したのも勿論ゴリアテだ。ゴリアテさん、貴方、もう執事兼料理人でよくないか?
すると、ゴリアテが転移魔法で大量のエールを樽で送って来た。忘れそうになるが、ゴリアテはゴーレム。魔法など使えても精々、下級魔法の一部程度。そのゴーレムが転移魔法を使うとなれば、冒険者全員卒倒ものだ。まぁ、冒険者全員が卒倒する所も、見てみたくはあるが。
甲野が樽をよく見ると、御丁寧に蛇口付きで、捻るとエールが出て来る。甲野は適当に、好きな酒を呑んでくれと言った。ブルさん達もそれに同意し、何人かは空になったタンブラーを持って、エールを注ぎに行った。甲野は、まだドワーフの銘酒が残っていたので、それを飲み干してから行くつもりだ。
その間、バステトの肉を焼いたり、自分の分を焼いたりと、のんびりとしている。ブルさん達も、各自でワイワイとっていて、大変楽しそうだ。まぁ、明日からは、色々と事後処理で忙しくなろだろうが……。
「にゃ~♪」
「うん、肉は美味いし、酒も美味いし、バステトはは可愛いし、幸せ。」
「~~♪」
甲野はバステトの頭を撫でる。バステトも甲野の手の感触が心地良いのか、眼を細め喉を鳴らす。甲野はタンブラーに入っている酒を飲み干す。
そして、しみじみと、この幸せを噛み締めるのだった。
あ、ちなみに余談なのだが、話の流れでブルさんに、神獣の加護がある事を話したら、バステトが神獣だった事と、その神獣の加護を授かった事のダブルで絶叫していた。苦労人ブルさんは何処でも苦労人だ。
「ところで、あのエール、やけに美味かったけど、何処のエールなんだ?」
『さっき作りました。』
「……あっそ。」
ゴリアテの称号に《酒造り》が加わりそうなのであった。




