第42話 解体人達との宴
高校二年の時に、バイトで突然隣のバイトをしている高校生らしき人に「〇〇大学ですか?」と訊かれた作者です。
やっと続話が出来ました(´Д`)ハァ…ナガカッタ…
今回は甲野の様子が少し違いますよ(。=`ω´=)ぇ?
でも御安心下さい!シリアスでは御座いません(´Д`)デショウネ
それでは(σ・∀・)σアッチ 行け
「やっと、終わった〜!」
誰かのその言葉と同時に周りの何人かの解体人は地面に倒れ込んだ。そうでは無いガルラを含めベテラン解体人も疲労感が目に見えて伝わってくる。
「見事なもんだな。」
そう言う甲野の視線の先には、骨に身が一欠片も残っていない、エンペラースネークの巨大な骨があった。
その骨の高さは甲野の身長を優に超えていた。
「そのエンペラースネークの素材が入るお主の無限収納も見事さ。」
「そんな事より、これ、解体人動けるか?」
甲野はエンペラースネークの骨を無限収納に収納しながら訊いた。
「……無理さな。」
レフィアは周りの解体人達の様子を見て言った。
「それじゃあ、少し休んでから転移するか。」
甲野は再度、岩に座りバステトを撫で始めた。
バステトはと云うと撫でなれ、とても御機嫌だ。
「お主、転移魔法なんて使えたのか?」
「俺じゃなくてキマリスだ。あの、ローブを来た痩せ型な男だ。」
ザガンは鎧で顔や身体を隠し、ブエルは擬態スキルで変装、ブエルは偽装スキルで変装している。
「……あぁ、あの男か。」
レフィアは少し考え、思い出した。
「俺は転移なんぞ使えんからな。」
取ろうと思えば取れるがな。キマリスが使えるから、無理に取らなくても問題は無い。あまり多く取りすぎても把握仕切れないからな。
「それが普通さ。そんな転移魔法を使えるのがポンポンいたら戦争状態が変わるさ。」
「戦争ねぇ〜。そう言えば、ここの戦争はどう云う感じなんだ?」
「なんじゃ、お主。どっかと戦争でもするかの?やるなら、宗教国家にしておくれ。」
「誰がそんな面倒なのをするか。やるなら、ザガン達に任せるわ。」
バステトの為ならやるがな。
「それもそうさな。おっと、戦争の事だったな。そうさな、国によって違うが、主には、相手国から宣戦布告をされてから、戦争の日時を決めて、人数が揃ってから始めるのが、一般的じゃな。勿論、そうでは無い国もあるさ。」
「なんだその紳士的な戦争は。綺麗過ぎじゃないか?」
こっちじゃあ奇襲なんぞ当たり前だぞ。
「あくまでこれは、魔法学校や王都の学校で習う教材の中身に書かれている事さ。実際の戦争はもっとえげつないさ。」
「おいおい、そんな綺麗事を子供に教えてんのかよ。大丈夫か?それ。」
「儂や他の者もそう思っとるさ。事実、魔法学校等を出て、実際の戦争の在り方に異議を唱える者も出てきているさ。」
「あぁ、面倒な奴の典型か。大方、そう言う奴は戦争を体験した事が無いんだろうな。」
大体、こう云うのは村の人間の方が子供にしっかりと教えてる事が多いな。
「それはさておき、そろそろ出発出来るぞ。新入りも休憩は十分だろ。」
甲野とレフィアが話していると、ガルラが隣からそう言った。
「全員、休憩はもう良いのか?」
「おう。依頼人のお前を待たすのも悪いし、俺らもさっさと戻って酒を飲みたいしな!」
ガルラは豪快に笑った。それに釣られ、周りの解体人達も同意しながら笑った。
「そうか。それじゃあ、そろそろ行くか。」
甲野はバステトを自分の頭に乗せた。
「キマリス。」
「は!ここに。」
甲野がキマリスの名を呼ぶと、すぐ隣にキマリスが現れた。
「クルス国まで頼む。」
「分かりました。それでは参ります。」
キマリスがそう言った瞬間、その場から人の気配は消えた。
◇ ◇ ◇
転移した甲野達はそのまま冒険者ギルドに向かい、この前に受け取っていなかったエンペラースネークの依頼金と売れるだけのエンペラースネークの素材の売却金を受け取っていた。
「ほれ、依頼金の金貨500枚さ。」
レフィアはそう言うと机の上に金貨がどっさりと入った綿袋を置いた。
それから、会話はガルラが引き継いだ。
「それじゃあ、エンペラースネークの素材売却分の内訳を言うぞ。」
「骨が金貨55枚と銀貨4枚、牙が金貨70枚と銀貨8枚、皮が金貨178枚と銀貨4枚、肉が220枚と銀貨6枚、合計、金貨523枚、銀貨22枚だ。」
ガルラは金貨500枚の入った綿袋の隣に、金貨523枚と銀貨22枚の入った綿袋を置いた。
「デススネークの売却は待ってくれよ。流石にこっちもここまで金を払っちゃあ、しばらくは厳しいからな。ま、それも、エンペラースネークを売れば、どうとでもなるけどな。」
「そうか、分かった。まいど。」
甲野はそう言うと、中身を確かめもせず、無限収納に放り込んだ。
「おいおい、中身を確かめなくて良いのか?」
ガルラは、そう甲野に訊く。
「ギルド長と解体人のリーダーがそんなケチくさい事なんてしないだろ?」
「ま、まぁ、そうなんだがな……」
ガルラは少し照れくさそうに頬を掻いた。
「信用してくれてるのさ。いい事じゃないか。デススネークの群れを討伐出来る冒険者に信用されて。」
「それより、ここの領主様のお話はいつあるんだ?」
「そうさな。恐らく、明後日辺りになりそうさな。」
「明後日か。」
チッ!面倒臭い。マジでサボろうかな?
「……その顔を見れば大体何を考えてるか分かるが、国を滅ぼすのだけは止めてくれさ。」
レフィアは溜め息と若干の諦めの表情を浮かべていた。
「別に俺が何やかんや言われてもザガン達がソイツを殺るだけだが、バステトに何か言ったら俺が直々に殺るからな。」
「にゃーにゃにゃにゃっ!!」
バステトは”コーノがニャンか言われたらワタシが殺る!”と可愛らしく言った。
あぁ、もう可愛いな!!
甲野は満面の笑みを浮かべながらバステトを抱きしめた。
「にゃにゃにゃ♪」
抱きしめられたバステトは甘えた声を出し、頭を甲野に擦り付け、超御機嫌だ。
「……レフィア。」
「言わないでくれさ。ガルラ。」
「俺は、気のせいか、そこの猫の言葉が若干だが分かった気がしたんだが……?」
ガルラは自分の両耳を指でほじくった。
「儂も雰囲気で大体分かったさ。」
「「……」」
レフィアとガルラは少しの間、無言になった。
「「はぁー」」
そして、色々含んだ、大きな溜め息を吐いた。
「なんで俺は溜め息を吐かれなきゃいけないんだ?」
「にゃ?」
バステトも”なんで?”と甲野の言葉に同意した。
「考えるな。」
「察してくれさ。」
「また、地味に難しい事を言うなぁ。」
「にゃー」
バステトも首を縦に振りながら、甲野の言葉に同意した。
「……ふぅ。まぁいいか。もう仕事もねぇだろうし、俺らは酒場で酒でも呑んでくるわ。」
ガルラはそう言い、部屋を出ようとした。
「それなら、俺が奢るぞ。丁度いい酒がある。」
「マジか!?」
ガルラは物凄い勢いで身体を甲野の方へと向けた。
「少し前に市場でドワーフの銘酒が手に入った。少々、強いがな。」
な、酔っ払いさん。
甲野は小声でバステトの耳に囁いた。
「にゃ、にゃー!」
バステトは顔を紅く染め、甲野に爪をたてた。
「お、おいおい、その猫は何でそんなに怒ってるんだ?」
ガアルは突然、甲野に怒り出したバステトに困惑した。
「さぁな?」
何ででしょうね?
そうバステトの耳元に囁くと、バステトはブリキのおもちゃの如く、首をギッギッギッと甲野の方へと向けた。
「……にゃ、にゃ~ん」
バステトは誤魔化すかの様な鳴き声を出した。
……ま、それで許してやるか。
バステトはそれを聞くと、ほっと胸を撫でおろし、甲野の頭の上ででろーんと足を伸ばした。
「それじゃあ、酒場に行くか。解体人はいるんだろ?」
「よーし、ただ酒が飲めるぞー!」
◇ ◇ ◇
「カンパーイ!」
酒場には解体人達の声が響いた。その解体人達のテーブルには大量の酒やツマミ、料理等がズラリと並んでいる。
「よっしゃあ!今日はコーノの奢りだぞ!じゃんじゃん飲め!」
「おう!」
解体人達はそれを掛け声にジョッキに入ったエールを一気に飲み干した。
「お代わり!」
そして、新たなエールを注文した。
「よく飲むなぁ。」
そんな解体人達を見ながら、ジュースで割った”ドワーフの銘酒”をチビチビやっていた。
「そらぁあんた、ただ酒だからな。飲めるだけ飲んで、食えるだけ食う!それが解体人の常識ってもんだ!」
誰かが、エールの入ったジョッキ片手にそう言った。
「ははは、それもそうか。バステト、なんか食べたいのはあるか?」
甲野がそう訊くと、バステトは解体人達のいるテーブルにある肉料理の足で指した。
「あれか。」
甲野はバステトが足指した料理を近くの従業員に注文をした。
「そう言えばコーノ、あの酒はまだか?」
ガルラが言う”あの酒”とは勿論、今、甲野が飲んでいる”ドワーフの銘酒”の事だ。
「分かってるよ。」
甲野はそう言うと、無限収納から”ドワーフの銘酒”の入った酒樽を取り出し、ガルラの持っている、空のジョッキに並々と注いだ。
本当はこんな風に飲む酒じゃないが、まぁ、無礼講って事で良いだろ。
「おぉ、これか。」
ガルラは”ドワーフの銘酒”が入ったジョッキをマジマジと見つめた。
「なんスか?その酒?」
すると、ガルラが持っている酒に興味をそそられた解体人達が集まってきた。
甲野が簡単に説明すると、予想通りと言うか、想像通りと言うか、集まった解体人達は、「ドワーフの酒なら、是非とも飲んでみたい」と言い出した。
それに対し甲野は志願者達にガルラと同じくらいの、ジョッキ半分程入れた。
酒樽の中を見ると、中の酒は三分の一まで減っていた。
『あの人間達は阿呆何ですか?神獣のバステトが酔った程の酒ですよ。』
影の中から様子を伺っていたザガンがそう言った。
本来、精霊や神獣の類は、体内に入ったアルコール類を素早く分解し、魔力へと変換させる為、酔う事が無い。これは食べ物であっても同様の事だ。食べ物や固形物も体内で分解し魔力へと変換さす為、排泄などの必要が無い。
だが、神獣のバステトが酔うと言う事は、アルコールの分解が追い付いていない事を指す。
なので、神獣のアルコール分解速度が追いつかない程強い酒をドワーフではなく、人間が飲むと、当然、アルコールが体内で分解しきれずに、急性アルコール中毒を引き起こす。
「大丈夫だろ。あの酒は俺が水で割ってある。酔いこそするが、死ぬほどの事は無い。まぁ、バステトみたいにはなるだろうがな。」
バステトは、その甲野の言葉には、肉料理に夢中で、気づいていない。
『ですが甲野様。アレを御覧下さい。』
甲野はザガンに言われるがまま解体人達の方を見た。
そこには”ドワーフの銘酒”をジョッキに入れられた三分の一程を飲み、完全にダウンしている解体人達がいた。
「あらあら。お早い事で。」
その光景を一言で表すなら、死屍累々だった。
「何だか何処かで見たことのある光景だな。」
あぁ、あれか。確か”第27話”と同じ光景だな。
甲野はそんな光景を見ながら、向こうでの出来事を思い出した。
そう言えば、向こうでも似たような光景を見たことがあるな。確か、新入社員の祝いの席だったな。あぁ、懐かしいな……
甲野は少しの間、目を瞑り、向こうの出来事を思い出していた。
「……にゃ~ん」
バステトはそんな甲野を心配そうにしながら寄り添ってきた。
「ん?どうした?」
甲野はバステトを抱きかかえた。
『心配しているのですよ。甲野様のその様な顔は我らも知りませんから。』
「……あぁ、偶になるんだよ。昔の事を懐かしく思うことがな。」
甲野はうっすらと笑みを零しながらバステトの頭を優しく撫で、そう言った。
「それじゃあ、もう少し飲むか。」
甲野はお手製の徳利に入っている ”ドワーフの銘酒”を御猪口に入れ、一口、口に含んだ。
「……ふぅ。」
甲野はしばらく、昔の懐かしさに浸りながら、一夜の酒を楽しんだ。
勿論、バステトを撫でながら。
少し静かになった酒場には時折、猫の鳴き声が響いていた。
昔の事を懐かしみ哀愁漂う甲野・・・
それを心配するバステトやザガン達・・・
何だか良いですねぇ〜
次回は正真正銘、まったり、のんびり行きますよ!
バトル系は一切無しでございます!
それではバイバイ(ヾ(´・ω・`)




