第37話 大捕り物 ついでに解術
うん、ネタ切れそう…
吐血寸前…
「な、なんだと〜〜〜ッ!?」
ヴァインガは甲野の発言に驚愕の声を出した!
それもそうだろう。まさか薬屋が置いて行った薬が毒だとは微塵も疑わない。
「そ、それは本当か!?」
「俺が嘘を言って何の得がある?」
まぁ、信じたくない気持ちも分かるけどな。
「そ、そうだが……」
「しかし、何故薬屋が私の娘に毒など……!」
ヴァインガは顎に手を当てブツブツと考え事をし始めた。
「誰かに怨みでも買ってるんだろう。貴族ともなれば怨みを買うなんて珍しくもないだろ。」
「それよりもアリサは助かるのか!?」
ヴァインガは甲野の肩を掴み悲壮感を露わにし甲野に訊いてきた。
「万能薬と言っただろ。問題無い。」
甲野はヴァインガの眼をしっかりと見て言った。
「そうか!それは良かった!」
「それよりも良いのか?自分の娘に毒を盛った薬屋がもう近くまで来てるぞ。」
「なに!?」
ヴァインガはそう言うと何か魔法を使って、誰かと会話をしている様に見えた。
「よし、この部屋で引っ捕える!」
「お前達は入り口で待機!」
「「「はっ!!」」」
近くに居た兵士達はそう言うと、部屋を出ていった。
大方、さっきのは念話だろうな。
「彼奴は絶対許さん!私の娘に毒を盛りおって……!」
ヴァインガは自分のアリサに毒を盛った、薬屋への怒りに身体を震わせていた。
「報復なら手伝おうか?拷問が得意な知り合いがいるが?」
ザガン達なら喜んでやりそうだからな。
ちなみにザガン達は別に拷問好きと言う訳では無い。そういう魔族は居るが、ザガンの場合、己の主に無礼をした者への拷問なら嬉々としてやるだけだ。
・・・ま、まぁ、それもどうかとは思わないでも無いが・・・
「いや、これはウェン侯爵家の問題だ。気持ちは嬉しいがコーノは手を出さないでくれ。」
「ま、そういう事なら俺は手出しはしないがな。」
俺に被害が無い限りだがな。あと、ヴァインガの娘さんの事は一応見とくか。
△ ▽ △
「毎度どうも!娘さんのご様態どうですか?」
しばらく経つと入り口のドアから頭部が禿げた中年太りした肥満体系の男性が現れた。
「どうです!効きませんでしたか?それならこれはどうですかね!これは魔力過多症にも効くと言う新薬です!是非、これを試して見て下さい!」
そして、薬屋と思われる男は何処かのセールスマンのように聞かれてもいない事を突如言い出し、何を思ったか魔力過多症に効くと言う薬を出てきた。
おいおい、魔力過多症は治療法が無い不治の病だろ。どうせ毒の類だろうな。
甲野はそう思い薬屋が手に持っている小瓶に入った液体を鑑定した。
名前:デススネークの濃縮毒
価値:金貨10枚
詳細:即効性の強力な毒。服毒してすぐに呼吸困難に陥り血を吐き苦しみながら死ぬ。入手は容易ではないが、困難という訳では無い。その道に精通している者なら容易に入手出来る。
まぁ、だろうな。
甲野は目線でヴァインガに毒だと知らせた。
「今なら特別にお安くしておきますよ!」
「・・・もういい・・・」
「はい?」
「もういいと言ったのだ!この詐欺師めが!」
「な、何を言うんですか!?」
ヴァインガに詐欺師呼ばわりされた薬屋は狼狽し始めた。
「貴様が私のアリサにやった薬は毒だとすでに分かっている!」
「・・・・・・チッ。もうわかったのかよ。」
薬屋は舌打ちし、ヴァインガの言葉を肯定する。
おいおい。どっかの二流サスペンスでも、もう少し否定するだろ。これがカマかけだったら即アウトだぞ。
「此奴をひっ捕らえろ!」
ヴァインガがそう言うとドアの外で待機していた兵士が部屋の中へ殺到し持っていた剣を薬屋へと向けた。
「ほぉ~、良いのか?俺を捕えるとアリサが助からなくなるぞ?」
薬屋は兵士達に囲まれ剣を向けられても余裕そうな表情で言い持っていたバックの中から液体の入った小瓶を出した。
甲野それを訝しげに思いながら鑑定した。
名前:中級回復薬《劣化版》
価値:銀貨1枚
詳細:劣化した中級回復薬。素材が悪かった為、効果は下級回復薬程度しかない。さらに本来必要な調合品が足りておらず、保存も効かない。
まぁ、一応薬だが下級回復薬程度の効果しかなかったら、使ったとしても焼け石に水だな。
しかも当の本人はその事に気付いてないみたいだしな。これじゃあ詐欺師じゃなくて道化師だな。
「構わん!その薬が本当に効果があるのかどうかも疑わしい上に、アリサの件ならこの冒険者が万能薬を持ってきてくれたわ!」
「・・・なんだと?ならばその薬諸共此奴を始末するだけだ!」
薬屋はそう言うと、魔道具と思われる指輪を発動させ甲野へ魔法を放った!
「なっ!?」
ヴァインガはすぐに甲野を守ろうと、兵士に指示を出そうとするが間に合わない!
「全く、こんな狭い所で魔法を発動させるなよ。」
甲野は呆れ気味にそう言うと無限収納を発動させ薬屋が放った魔法を収納した。
「はっ?」
薬屋は突然、自分の放った魔法が消えたと錯覚し茫然とした。
「ほら返すぞ。」
甲野はそう言い無限収納を薬屋の前に出し薬屋が放った魔法を薬屋に返品した。
「グフォバラ!!!」
すると薬屋は謎の声を出し部屋の外へと己が放った魔法で飛ばされた。兵士達はそれを咄嗟に躱した。
なんだよ「グフォバラ」って?普通こう言う時って「グフォ!!!」じゃね?
甲野がどうでもいい考えているとヴァインガがすぐさま兵士に命令を降した。
「そいつを地下牢へ入れておけ!」
「「「はっ!」」」
兵士は素早く気絶している薬屋を縄で拘束し地下牢へと、連れて行くのだった。
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ヴァインガは疲れた表情で、近くにあった椅子に重く腰掛けた。
「はぁー」
「私のせいでアリスを苦しませていたとは……」
ヴァインガは重い溜息の後に自虐的に言った。
その表情はとても暗かった。
まぁ、良かれと思ってした事が自分の娘を苦しませていたと解れば無理も無いな。或る意味、自分で娘に毒を盛っていたと同じだからな。
「悲壮感に浸るのは良いが、早く娘を治さなくていいのか?」
甲野は心の中で同情しつつもヴァインガにそう言った。
「・・・そうだな・・・」
ヴァインガはそう言うと、未だに暗い表情のまま重い腰を上げ、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「・・・その薬、俺が与えてもいいか?」
突然、ヴァインガは甲野にそう言った。
「あぁ別に良いぞ。誰が与えようと薬の効果は変わる訳も無いからな」
心情的な何かがあるんだろうな。
ヴァインガは甲野からを《霊薬 劣化版》受け取った。
そして、受け取った薬の蓋を開け、ゆっくりとベットに弱々しく寝ている自分のアリサの口へと薬を流し込んだ。
すると、アリサはそれを少しずつだが、確かに飲んでいる。
ヴァインガはそれを固唾を飲んで見、薬をゆっくりと与え続けている。
そして、小瓶の中が空になり、アリサは最後の一滴を飲み干した。
すると、アリサの瞼がゆっくりと開いた。
「お………………ん」
アリサが何かを言おうとするが声が掠れて聞こえない。
「ア、アリス!」
「喉が枯れてるんだろう。果実水でも飲ませれば大丈夫だ。」
「なるほど・・・聞いたな!すぐに果実水を持って来るんだ!」
ヴァインガの言葉を聞いた使用人が部屋を飛び出していこうとすると、甲野を応接間へ案内した老執事が扉の前に立っていた。
「このような事があるかと思いまして。」
そう言う老執事の手には陶器で出来たコップに入った果実水を持っていた。
老執事は手に持っている果実水の入った陶器のコップを、目の前に居る自分の主人へと渡した。
「・・・助かる。」
ヴァインガは老執事に感謝し、コップを受け取った。ヴァインガにコップを渡した老執事はそっと部屋を出る。
「アリス、果実水だ。ゆっくり飲むんだ。」
そう言いヴァインガはアリサの口元へと果実水を持っていく。。
「ん…………ん……ん………………」
アリスはヴァインガの言う通り果実水をゆっくりと飲み始めた。
そして、アリスは果実水を飲み干した。
「お……とう……さん……」
「アリス!」
アリスの声は、まだ掠れてはいるが先ほどよりは幾分かはマシになった。話す声も聞き取れる。
「な……んで……泣いて……るの……?」
「良かった……本当に良かった……」
ヴァインガは、アリサが目を覚ました事に安堵し涙を流した。
そして、アリスを力強く抱きしめた。
「おとう……さん……い……たいよ……。」
アリスは、そんな言葉とは裏腹に小さく笑みを浮かべていた。
甲野は今のヴァインガに話しかけるのは野暮だと思い、音を立てず部屋を出た。
「甲野様」
部屋を出た甲野に、そう声を掛けたのは先ほどの老執事だった。
「なんだ?」
甲野がそう言うと老執事は持っていた何かが入った清潔感のある真っ白な袋を甲野に渡した。
「依頼金です。」
甲野は老執事から袋を受け取り中身を確認した。
中にはちゃんと依頼金の枚数と同じ数の金貨が入っている。
「……確かに。」
甲野はそう言うと依頼金の入った袋を無限収納に仕舞った。
「甲野様、この度は有り難う御座いました。」
老執事はそう言い頭を深く下げる。
「依頼だからやったまでだ。これが依頼じゃ無かったらこんな事はやらん。」
「貴方にとってはそうでも、ヴァインガ様や私、使用人共々、感謝しています。何かありましたら、このウェン侯爵家へお越しください。ヴァインガ様もそれを望んでいます。」
老執事は頭を下げ、不動のまま言う。
「あぁ機会があればな。」
甲野はそう言うと、老執事を背中に廊下を歩きはじめた。
老執事は甲野の足音が聞こえなくなるまで深く頭を下げていた。
隣の部屋に響くヴァインガとその娘。そして使用人達の歓喜に湧いた声を聞きながら・・・
そう言えば、ミスリルって何か柔らかくて武器に向かないって友達から聞かされました!
しかも純度が高ければ余計に向かないだって!
まぁ、そこは“異世界都合“って事でね(´>∀<`)ゝ




