百合ing Holy day〜ゆりんぐ・ホーリー・デイ〜
「あのね、楓ちゃん。今日わたしの誕生日だから魔法少女になってみたの」
「……どういう意味で……って、わたしもいつの間にか魔女の格好にされてるし」
「これからも守ってあげるね。楓ちゃん」
「……ありがとう」
◆
「……墨子さん?」
「へっ!?」
声と肩ぽんぽんで我に返った、木隠墨子です。
「…………智恵さん」
「墨子さん、もうすぐケーキが焼けますよ」
「…………生クリーム、そろそろいけるぞ」
……そうでした。
今日は十月八日。わたしの誕生日で、そのパーティーのためにわたしの家へ倉田先生……楓ちゃんのお姉さんと先生の恋人の智恵さんが来ていたんでした。そして今は、わたしと倉田先生と智恵さんの三人でケーキを作っていたところでした。スポンジケーキを焼いている途中で、ついついうたた寝してしまっていたみたいです。
「……そういえば、楓はどこだ?」
「あ、楓ちゃんなら………………」
◆
「……とんだ生殺しだよまったく…………」
「……『なまごろし』って、何」
「……別に知らなくたっていい」
「……そう」
「…………木隠墨子め、アタシの気持ちを察しておいてこの仕打ちかよ。まったく、人を動かすのが上手いもんだ」
「……」
「……ん? あぁ、安心しな。さすがに妻子ある女を襲うつもりはねーよ」
「…………。…………妻……『子』…………?」
「おーい! おーまーたーせー!」
「……明梨、駐車場に車置いてくるのに何分かかってんだよ」
「ごめんね、椎名、倉田さん。なかなかスペース空いてなくって」
「ったく。アタシ達は倉田楓の買い出しのアッシーくん……もとい付き添い兼盾役としてやってきたオマケみたいなもんなんだから、あんまり本人を待たせるようなことすんなよ?」
「ほんとにごめんってば」
「……わたしは別に。むしろ、ありがとう」
「…………あー、そういうのいいから。ほら、さっさと探しにいくぞ。木隠墨子への誕プレ」
「……ん」
「おっけー! ……あと椎名、今顔赤くなってたね」
「うっさい。いろんな意味で」
「しゅん……」
楓ちゃんが何を買ったのかはご想像にお任せします。「ホーリーデイ(聖なる日)」と「ホリデー(休日)」をかけたのはここだけの話。