第04話 「なにがおかしい?」
21年、加筆修正
勇者の朝は早い。彼の一日は、太陽が昇るよりも前に始まる。
「ん・・・ふあ~あ・・・よく寝た」
「んみゅ・・・ゆうしゃあ・・・」
ちなみに、魔王の朝は遅い。不摂生だから。などというわけではなく、単純にヴァンパイアという種の弱点だからなのだとか。
「・・・いかんいかん、また襲うところだった」
このままでは本当にケダモノである。節操なしである。
「とりあえずは朝飯か・・・確か、マジックポーチの中にまだ何か残ってたはず・・・」
あの時は死にに行くつもりだったとはいえ、多少の食料は残っていたはずである。
「確かこの辺に・・・ん、干し肉だけか?」
・・・『多少』の食料が残っていた。
「これじゃあ1人分だな。魔お・・・エミーが起きたら相談するか・・・」
「よし、ならば貴様の血を寄越せ!」
「いやいやいやいやいや」
いやいやいやいやいや。
「どうした、私に血を吸われるのは嫌なのか?」
「そういうわけじゃないが・・・ほら、人間の血は猛毒だって聞いたぞ!」
「どこから仕入れた情報だそれは・・・」
昔読んだ本に、そんなようなことが書かれていたのだ。タイトルは確か、『世界の生き血レビュー!』とかだった気がする。
「えぇい、寄越せ!先っちょだけ、先っちょだけじゃから!」
「お前、前から思ってたけどヴァンパイアの血ぃ濃すぎだろ!」
ちなみに、母方はネレイスという海にいる魔族だそうだ。おかげで流水と日光が平気だとか何とか。チートかよ。
「ならば力ずくじゃ!第8霊界、昏睡!」
「あっ、きった・・・ねぇ・・・スヤァ」
耐性防具なしではこの程度である。
「グフフ・・・それでは、いただくとするかのぅ」
その鋭い牙が、クロの首筋へ目掛け・・・ッ!
「・・・グスン、私の純潔・・・奪われちゃった」
「『不純血』の間違いじゃろう。全く、人の処女を奪っておいて何だそれは」
和やかなお食事が終了しました。俺のほうはというと、干し肉1つを腹に放り込むよりは、まだ我慢していた方がマシだという判断に至ったため、何も食べてはいない。
「いってぇ・・・これ大分吸われたんじゃねぇの?」
「うむ、久しぶりに搾取する吸血を使ったからな」
「・・・おい、それ確かHPとMPを吸収する奴じゃなかったか?」
「・・・い、一応確認してみるといい」
「おい・・・第1位人間魔法、能力の数値化」
万一にでも、本当にHPとMPを吸っていたらブン殴ってやろうか?などと考えながら、ステータスを開く。
「えっと、HPとMPは・・・うん、確かに吸われて・・・うん?」
「どっ、どうかしたのか?クロよ」
いつでも逃げられる姿勢でいる魔王がそう聞く。何とも情けない格好である。
「いや、レベルと補助効果がおかしいんだよ・・・」
「ふむ、どれどれ・・・」
レベル :1 称号:勇者
HP :12530/12680 MP :860/910
筋力:7304 耐久:6530
敏捷:7029 魔力:500
幸運:0
装備:市民の服
マジックポーチ
魔法属性:炎、氷、風、聖、光、闇
使用魔法:人界魔法(3)
魔界魔法(3)
獣界魔法(3)
霊界魔法(7)
召喚魔法(7)
補助効果:勇者の加護
精霊王の加護
魔王の加護
「・・・クロ、貴様身体能力高すぎじゃないか?」
「いや、そこじゃなくて」
「分かっておる、レベル1と、あるはずのない『魔王の加護』じゃろう?」
そう、レベルが1に戻っているのだ。しかも、ステータスはそのままに、だ。
そんなことよりも、この『魔王の加護』である。これは異常事態なのだ。何せ、魔王からの『洗礼』を受けていない。性行為ならしたが・・・。ともかく、異常なのだ。
「ふむ・・・なら、私も変化しているかもしれんな・・・第1人界、能力の数値化」
レベル :1 称号:魔王
HP :7500/7500 MP :8500/8500
筋力:1615 耐久:1106
敏捷:3303 魔力:8550
幸運:100
装備 :市民の服
マジックポーチ
魔法属性:無、炎、水、氷、風、雷、土、邪、光、闇
使用魔法:人界魔法(10)
魔界魔法(10)
獣界魔法(10)
霊界魔法(10)
異界魔法(10)
古竜魔法(8)
龍域魔法(8)
召喚魔法(10)
補助効果:魔王の加護
勇者の加護
隠蔽(10)
偽装(10)
「やはり、『勇者の加護』が追加されているか・・・」
「待って!お前こそMPと魔力高すぎない!?ねぇ!あと、魔法と属性ほぼコンプリートじゃねぇか!」
「フッ、私は天才だからな・・・」
「くっそー・・・舐めやがってからにコンチキショウがぁ・・・」
「というか、私達2人とも幸運値が低すぎじゃろ。どうなっておるんじゃこれは」
「・・・ツいてたら、勇者なんてやってねぇっつぅの」
「・・・確かに」
極限までツキが回ってこない2人の、悲しい朝でした。
補足1:この世界の魔法は、人界、魔界、獣界、霊界、異界、古竜、龍域、神域、召喚の9種類の世界魔法からなり、さらに無、炎、水、氷、風、雷、土、聖、邪、光、闇の11種類の属性があります。
補足2:クロは「人間魔法」、エミーは「人界魔法」と言っていますが、これは誤字ではありません。人族は「人間魔法」、それ以外の種族は「人界魔法」となります。この違いの理由は、今後の物語で出てきます。
補足3:クロとエミーの詠唱が多少異なる理由も、今後の物語で出てきます。




