第38話 「シショウとデシ?」
――ダンジョン、B7階――
俺とエミー、そしてセンラの3人は、ダンジョン『カタコンブ』の地下7階にきている。話を聞くに、8階へ降りる階段の途中辺りまで、水が浸水してきているのだとか。今回はギルドだけで調査を行うという名目で、6階から下は人払いされていた。
そこにギルドマスターのセンラが、ちょうど居合わせていた魔術師2人に、無理を言って頼みこんで連れてきた。ということになっている。
ちなみに魔術師2人というのは、俺とエミーのことだ。魔法で顔と声帯を変えてもらい、ローブに深めのフードという、まさにお約束のような恰好だ。
少し離れたところで、センラとギルド職員が話をしている。調査の経過報告がどうとか、他人には見られたくないから、ついでに休憩などどうとか言っている。
「なぁなぁ、エイミスさんや」
「どうした、ロウ爺」
一応補足だが、俺がロウで、エミーがエイミスだ。・・・さらに補足だが、爺さんと弟子という設定だ。
「俺、結構上から水を流した気がするんだが、途中途中に水滴とか崩壊とか無かったのかなと思って」
「あぁ、それか。確かクロが使ったのは、激瀧じゃったな」
センラとの交渉の後、エミーにあの時の魔法を詳しく説明したところ、滅茶苦茶怒られた。
「激瀧はその特性上、よくない物のみを押し流す魔法じゃ。壁や地面には全く効力がないし、水滴であろうと流れ続ける。どこかで引っかかることがあっても、真上以外に行ける場所がある限り、どこまでも流れていくぞ」
「そ、そんなにすごい魔法なのか・・・」
「水はどこまでも流れていくが、物は引っかかったりしてどこかで止まるのがネックなんじゃがな。まあ些細なことじゃろう」
そこまで話を聞いたところで、センラがこちらへ戻ってきた。職員たちとの話が終わったようだ。
「これで人払いのほうは問題が無いはずです。しかし、万が一がありますので、私は同行させていただきます。よろしいですか?」
「うむ、まあよいじゃろう。そちらにも面子というものがあるのじゃろう。邪魔さえしなければ、ワシはよいぞ」
「お師匠様の魔法を間近で見れるだなんて。貴男!光栄に思いなさいよ!」
エミーよ、それはもう誰なんだ。何を目指しているんだ。
「そ、それではその水際まで行ってみるとするかのう」
センラに案内してもらい、下の階へと通じる階段まで向かう。後からつけてくる者もいなければ、探知系の魔法が働いている様子もない。この辺はセンラの人望の表れだろうか。




