第32話 「タネあかし」
21年、加筆修正
――ギルドの医務室――
「うーん、もう食べられないよぉ・・・」
「はやく起きろ、この阿呆めが」
誰かが俺の腹筋辺りをスリスリ擦っている。なんだか気恥ずかしいので、起きてやることにする。
「おはy・・・なんだこれ、すごくだるいんだが」
「当たり前じゃ。MPを使い切っていたようじゃからな」
「何それ」
なんだか、大事なことを忘れてしまっているような気がする。そもそも、どうして自分はこんなところで眠っていたのか。そして、眠る前は何をしていたのか・・・。
「どうやら目が覚めたようですね」
「おっ、お前は・・・ッ!」
そこには、かなり美形な男性が立っていた。
「・・・誰?」
「ま、まぁそうでしょうね・・・」
「ほら、どこかの誰かさんの魔法で流された奴じゃよ」
「流された?」
いや、だってそいつは全身が骨だったはずでは・・・?
「ほらよく見てください、4本腕ですよ。4本腕」
そう言いながら、その男性は4本の腕でガッツポーズをして見せる。そこで俺の疑念は確信に変わった。
「あっ・・・あーっ、あー!!お前、スクトゥムか!」
眩しいほどの銀髪がオールバックにセットされており、透き通るような水色の瞳が美しい。見た目は高身長で、全体的に筋肉質なようだ。
言われてみれば、確かに面影はある。喋り方とか、身長とか、雰囲気とか。盾と鎧がなく、骨だけの体だったはずがいつの間にか肉がついていたので気がつかなかった。
「というか、よくあの魔法を受けて生きてたな」
「あっ、やっぱり生かしておく気なんてさらさらなかったんですね!?」
だって、全力でやるっていう決まりだったし・・・?
「地下7階辺りで白骨死体として引っかかっておったから、私が蘇生して、ついでに肉付けもしてやったんじゃよ」
やっぱ死んだのか。なむー
「いやはや、川の向こうに魔王様が見えたときは『ついに見つけたー!』と思っていたんですがねぇ」
「ちょっと待て、誰を見つけたって?」
適当に流しかけたが、なんだがとんでもない単語が聞こえた気がした。
「言ってませんでしたっけ?私達、魔王様の魔力を感知したので目が覚めたんですよ。」
・・・え~っと、つまり?
「つまりあれじゃな、私の崇高なる魔力に反応して下賎な魔族が目覚めてしまったということじゃ」
「・・・エミーって、昔から口が悪いときって大体、誰かのアホを指摘するときか、自分が何かしでかしたときだよな」
「何が言いたい」
「謝罪はよ」
「ごめんなさい」
「つまり、エミーの魔力に反応して目が覚めたと?」
「そうなんですよ。まさか魔王様の娘さんと勇者だったとは思いませんでしたよ」
「おいエミー、なんかバレてるぞおい」
魔王の娘とか勇者とか。そもそもなんでこいつは俺たちと普通に会話してるんだとか。
「エミーさんから教えてもらいました」
「なんか同属っぽかったので教えました」
おいエミー。
「ちなみにクラウス・・・あぁ、もう1人のダンジョンマスターは宿でアイナと共に待っておるぞ」
「ちょ、ちょっと待て。いろいろとどういうことだ」
「まぁその辺りは帰りながらにでも追々話していこうかのう」
これから説明されることを1から10まで理解できるか、整理できるか不安になりながらもギルドの医務室を後にする。
――帰り道――
エミーに、今までのこと、スクトゥムとクラウスのことを大体説明された。
スクトゥムとクラウスは元々、魔王直属の幹部だったらしい。しかし、800年頃の大戦で勇者から深手を負い、その傷を癒すために眠っていたのだという。そして、魔王がそれを起こしにくるはずだったのが、本人が来られなくなり結局今の今まで眠っていたのだという。
「ちなみに父上は貴様達を起こしに来る途中、視察の名目でお忍びで入った飲酒店で、ニンニクを食ったせいで死んだぞ」
「ま、魔王様・・・最後まで周囲に迷惑をかけながらお亡くなりになられてしまったのか」
そりゃあ吸血鬼がニンニク食っちゃアカンわ。ちなみにエミーは具合が悪くなる程度らしい、さすがハーフ。
「いや待て、そうなるとスクトゥムとクラウスって何歳なんだ?」
800年頃の大戦といえば、有名なものは830年。そこですでに魔王直属の配下だったということは、少なくともその時代にはすでに力をつけていたことになる。
「えっと、僕が・・・今年で1824歳で、確かクリス・・・あ、クリスというのはクラウスの愛称です。で、クリスが1230になるんでしたかな?」
「ほう、ゾロ目か。めでたいじゃないか」
「えぇ、今度何かプレゼントでもしましょうかね」
「ちょっと待てぃ!」
えっとつまり?大戦が830年、大戦終結が831年でその年に眠りについたのだとして、今が2047年のはずだから・・・
「・・・1216年?」
「ピンポーン」
「つまりこの阿呆共は1200年以上、私の父を待ち続けて眠っておったというわけじゃな」
「無茶苦茶だぁぁぁぁぁぁ!」
ここのダンジョンマスターは、忠誠心のとても大きい魔族たちだったようです。
次回までに考えておくことが多すぎる




