第27話 「ふたりめのダンジョンマスター」
21年、加筆修正
「・・・とは言ったものの、どうすっかなぁ」
正直、エミーが特に何も言わなかったので恐らく倒しに行くつもりなのだろうが、今回の依頼内容は「何とかする」ことである。ダンジョンマスターを倒してしまえば万事解決、とはいかないのである。
まず一番最初に出てくる問題が、町に被害をできるだけ出さないようにすることである。これは、自分もダンジョン内に入って戦えばいいのだろうが、それでは敵の腹の中に入っていくようなものである。しかし、町に被害を出さないようにするにはそれが最適解だと思える。ちなみにエミーは結界を張って、その中で戦っているようだ。俺にはあんな芸当できないので無視。
――カタコンブ、B1――
とりあえず階段を下りたところで待ち構えることにした。魔力感知による範囲が狭い(と言っても、一般人の中ではかなり広いほう)ので、無闇に動き回って行き違ってしまいました。なんてことにはならないようにするためだ。
「まぁ、ここ以外に出入り口があったらダメなんだけどな」
色々と考えていても時間の無駄だと判断し、マジックポーチの中から適度に使いそうな装備を選別し、取り出していく。
――5分後――
「・・・こねぇ!」
さすがに遅い。1人目が出てきてからおよそ10分が経過している。ワープポイントや、転移系魔法を感知する魔宝具を動かしているが、地上に誰かが出た痕跡もない。
そして一番の証拠に、2分ほど前にエミーが暇つぶしにこちらの様子を見に来た。現在は捕縛したダンジョンマスターを、尋問ついでに地上で警戒を続けているようだ。何かあればサインを出すと言っていたので、特に何も起きていないことは明白である。
――さらに3分後――
「・・・やっときた」
先ほどのダンジョンマスター登場からおおよそ13分が経過。時間差で来る理由がいまいちよく分からないのだが、ようやく来たようだ。
「もしもし、そこのお方」
「あぁうん、俺?」
とりあえず敵の容姿を観察していく。全身が灰色に近い色のプレートアーマーで覆われており、どういう種類の魔族かは判別できない。
背中には4種類の盾が掛けられているようで、歪な形をした翅のようにも見える。盾を使う近接職なのだろうが、そうだとすると残り2枚の盾の説明がつかない。いまいち戦い方の読めない格好をしている。
「いや何、少し人探しをしているんだけどね。すごくガタイがよくて、無駄に派手なマントを羽織ったオッサンを見かけなかったかい?」
おや、心当たりがあるような、ないような・・・?
「・・・いや、テンションの高い全裸なら見かけたが」
「えっ、何その変態」
「そっちも割と変態側だと思うんだが」
「現実から目を背けていたのに、君は酷い人だ」
現実だったらしい。
「そうか~、この辺に来てるとは思うんだけどなぁ・・・それじゃ。親切な方」
「あっ、ちょっと待って」
「なんだい、親切な方。私はかなり先を急いでいるのですが」
「いや、俺は君を何とかしろと言われててね・・・悪いけれど、無力化させるか説得しなきゃいけないんだ」
そう、『討伐』でないのであれば『捕縛』か『説得』でもいいのだ。そう考えた結果がこれだったのだ。
「そうか・・・君も僕達の『敵』なのか・・・」
受け取った側は、少し違う受け取り方をしてしまったようだが・・・。
「いいでしょう。止めたいのであれば、力ずくで止めてみなさい」
そこまで言うと、背中に掛けられている盾のうち、一番小さい盾を右腕に。一番大きい盾を左腕に携えた。
「私は不器用なのでね。死なない程度に殺してしまっても文句は言わないでくださいよ」
相手が武器を構えるのを見届けている間、こちらも左右の腕に装備していたセスタスの具合を確認する。
「・・・そっくりそのまま、その言葉を返させてもらう」
「所属なし、スクトゥム、参ります!」
「何それ?・・・えっと、クロ、参ります?」
エミーの圧勝は確定しているようなものですが、まぁ軽い気持ちで見届けてやってください




