第21話 「ドレイのしょぐう」
21年、加筆修正
「単刀直入に言うが、彼女は処女で間違いはなかったぞ」
「いや、そこじゃねぇだろ」
「まぁそんなことはともかく」
「ならそこから入るなよ」
出だしからグッダグダである。
「しかし、処女であったことは事実じゃがお世辞にも旨い血ではなかったな」
「ん?そうだったのか?」
よく覚えてはいないが、エミーが血を吸っている時、すごく幸せそうな顔をしていた気がするのは何故だろう。
「うむ、廃棄処分された薬物のような味がしておったぞ」
「うげ、まじかよ・・・」
となるとあの顔は演技であったということになる。さすがは魔王、演技力も高いようだ。
「というかそもそも、なんで薬物の味なんてしたんだ?」
「それじゃが、前主人とやらに薬を飲まされたり打たれたり掛けられたり漬け込まされたりでもしたんじゃろう」
「そ、そうなのか・・・」
ということはやはり、あの多量の傷はそういうことをされ続けて出来たのだろう。それを考えると、多量の情が沸いてくる。
・・・。
「連れては行かんぞ?」
「やはりこいつ、読心術を極めていやがる!」
先手を打たれてしまった。くそう、くそう。
「先日も言うたであろう、縁がなかったと思って割り切れ。それくらいではないと嫌でも目立ってしまうぞ」
「むむむ・・・」
確かに、今は山のほうから来た新米冒険者ということになっている。そのような2人がいきなり先日までいなかった少女(一般人)を連れているとなれば、少なくともギルドからは注目されることは間違いない。
現在、訳あって(特にないけど)目立った行動は控えるようにしているのだ。・・・今更なんだと言われそうだが、目立たないように行動しているのだ。当然、悪目立ちするようなことも避けなければならない。
「な、なら俺の生き別れの妹ということでっ!」
「必死か!」
割と必死である。だって・・・かわいそうじゃん?
「それによく考えてもみろ。前主人とやらが、1人だけしか奴隷を所持していなかった。などとは考えられんだろう」
「・・・」
「・・・」
「ちょっと世界救ってk「待てぃ!」」
「ん・・・むにゅ」
「「・・・むにゅ?」」
そんなアホみたいな会話をしていたら、少女が目を覚ましたようだ。
「えっと、おはよう?」
「あっ・・・おはよう、ございます」
挨拶をする少女の顔が少し赤い。昨夜のことを思い出し、少し照れているようだ。
「・・・って、いつまでも『少女』呼びはまずいよな」
そう、昨日からなんだかんだあったが未だに名前すら知らないのだ。本人が名乗りださないのもあるが、いろいろと忙しすぎたのだ。そう、俺は悪くない・・・悪くないんだ!
「今、貴様の考えていることを当ててやろうか?」
「あっあっあっ、すいません。それはちょっとお控え願います」
情けない勇者である。
「で、結局君の名前は?」
「ありませんよ?」
「えっ」
「えっ?」
まさかの返答だった。少女曰く、赤子の頃に奴隷商人に拾われ、そのまま主人に名前をつけてもらうということになっていたらしい。しかし、その前主人とやらには結局名前をつけてもらえず仕舞いであったという。
「そんなに困っておるならステータスを見ればいいじゃろうに」
「それだ!」
一発でその方法を思いつく辺り、やはり天才は格が違うようだ。
そういうわけで少女のステータスを覗くことになったのだが、今思えば普通に名づけてしまえばよかったのかもしれない。まぁ、これがきっかけでエミーから連れていってもいいという許可が下りるのだが。
「名前は、と・・・は?」
「む、どうしたのじゃ?」
「こ、これって・・・」
アイナ
レベル:2 称号:勇者
HP :15 MP :3
筋力:3 耐久:4
敏捷:3 魔力:4
幸運:0
装備:麻の服
魔法属性:なし
使用魔法:なし
補助効果:勇者の加護
ヒロイン2人目、まさかの勇者ちゃんです。クロとエミーの2人の呼び方をどうしようか、今から悩んでおります。




