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2度目の人生はスーパーイージーモードで  作者: モロコの三枚おろし
第1章 始まりの町 アンファング
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第16話 「コロスということ、コロサレルということ」

さーち、あんど、ですとろーい


21年、加筆修正


 この男、名をトニーというが、トニーは内心焦っていた。


(このガキ共・・・さっきから思ってはいたが、何故少しも動揺しない、怯えもしない?)


 そう、3人の仲間が一瞬で殺され、その原因が目の前にいる。それなのに、この2人が見せた素振りといえば、「面倒くさそうな顔をしながら、陣形を変えた」ことくらいである。しかも


(というか、なんで女が前なんだよ!普通、魔法使いは後衛じゃないのか!?)


 魔法使いが前、軽戦士が後ろという、一般的な縦並びの陣形で「魔法使いが前」なのである。はっきり言って、これは異常だ。


 普通ならば、動きやすい軽戦士が前に出、魔法使いがそれを援護するというのが常識である。さすがにバカでも分かる。知らなかった、などということはないだろう。それなのに、前後に移動したのだ。


 何か仕掛けてくるかもしれない。それとも、何かを仕掛けてはいけないのかもしれない。この動揺と焦りにより、トニーは動けないままひたすら熟考していた。




 エミーは内心全く焦ってはいなかった。というよりも、面倒くさがっていた。


(全く、ある程度の教養はあると踏んでいたのじゃが・・・とんだ阿呆だったようじゃな)


 陣形を変えた、その意味は実は至ってシンプルなのだ。「大きい魔法を撃つから、前衛が邪魔にならないように後退する」これである。


 斜め前や横ではなく後ろに下げたのは、それだけ大きい魔法を撃つぞ。と、教えているようなものである。事実、現在放とうとしている魔法は第5位魔界魔法。こんな低位の地下墓地。ダンジョンの通路などで撃つような魔法ではないのだ。当たれば、よくて消し炭である。


 しかし、トニーは生粋の脳筋系近接職。魔力の流れが見えないのだ。それに、ケニーたちが相手をするのは、高くても20レベル程のパーティー。それも、ダンジョン内の、しかもこんな狭い通路で魔法をぶっ放すような非常識人なんていなかったのだ。だから、魔法使いが前に出てくるなどありえないと勝手に思い込んでしまっている。それ故に、動けない。


(ふむ・・・適当に3位程度の魔法でも詠唱してビビらせたほうがよかったかのぅ)


 そして、先に動いたのは、エミーであった。



「おい、ガキ」

「ガッ・・・あぁ!?」

「貴様、我と共に行動していた奴等を殺したな?」

「あ?・・・見りゃ分かんだろ」


 ここにきて、トニーはようやく冷静になることが出来た。相手は、少なくとも常識があるのだ、と。


「そうか。ならば、こういう言葉は知っておるか?」

「あん?」

「『殺すものは、常に殺される覚悟をしなければならない』という言葉じゃ」

「・・・クククク。生憎、俺は知らんなぁ。そんなガキが考えたみてぇな戯言は」

「そうか・・・」


 それも当然である。何せ、1000年以上前の言葉だ。忘れられていても、トニーに非はない。


 しかし、悲しいことに相手はその時代を生きた者。この返答は、挑発として取られてしまう。


「それだけ死にたいなら死ぬがよい。『我、劫火を司る者なり。我の呼び声を聞き、受け入れ、絶望せよ。龍の名の下に、集え。魂よ・・・』」

「な、なんだぁ?その詠唱文は?」




 魔法を放つには、3つの工程を必要とする。



 まずは、放つ魔法の『世界』と『属性』、そして『規模』を頭の中でイメージする。今回は、第2位龍域魔法の炎属性だ。



 次に、空気中の魔力(現在では、ステータスの魔力と区別するように『マナ』と呼ばれているらしい)を操作し、イメージした形通りに魔法を組み立てていく。


 このとき、空気中の魔力を操作するのはとても難しい。高位の魔法であれば、それは尚更である。その組み立ての補助となるのが、『詠唱』である。詠唱により魔力を誘導し、そして組み立てていくのである。


 当然、そのような補助なしでも組み立てられるものは少ない。少ないだけで、0ではない。現に、この場に2人いる。



 最後に、組み立てられた魔法を、自分のMPを消費し、『魔言(まごん)』を言い、放つのだ。魔言とは、いわば発動用のキーワードなのだ。(「第1位人界魔法、能力の数値化(ステータス)」など)


 つまり、これを言わない限り絶対に魔法を放てないのである。しかし、キーワードの中にも省ける点はある。極限まで省いた状態が、エミーの使っているあれである。(「第1人界、能力の数値化(ステータス)」など)


 それでも、魔言を省くとデメリットがある。詠唱省略程度でも、魔力を余計に使うのだ。無詠唱ともなると、尚更とんでもない量になるらしい。エミーにとってそれは、誤差レベルのことらしいのだが・・・。




 さすがに、トニーもこれだけの常識は兼ね備えてある。


「何だかよく分からんが、魔言を言われる前に叩いちまえばいいってことだろ!」


 そういうことである。だからこそ、魔法使いは後ろにいるのが定石なのだ。


「頭がなくなっても体のほうは俺たちが可愛がってやるよっ、死ねぇ!」


 そう言いながら、トニーは剣を横なぎに振るう。しかし、いつまで経っても斬った手ごたえがない。


「おい、オッサン」

「オッサんじゃ・・・えっ?」


 正面、剣先が当たらないギリギリの範囲の場所に、女の連れの男がいた。そして、女の姿がどこにも見えない。


「あ~えっと・・・後ろ後ろ」

「後ろが何だってんだ・・・はああああぁぁぁぁ!?」


 先ほどまでトニーが立っていた場所、その場所に女がいた。先ほどの攻撃をどうやって回避した?いつ回り込まれた?そして、何故、手元に(・・・)炎を灯しているのか(・・・・・・・・・)?それが、トニーの最後の思考時間であった。



「気にするな。後には何も残らんように焼いてやる。第2位龍域、死送炎(おくりび)


 そう言うと、手元の炎が大きくなり、こちらへと真っ直ぐに飛んでくる。その大きさは異常そのもので、最終的には通路を多い尽くすほどの獄炎となり・・・そこで、トニーは考えることをやめた。

女の子って、怒ると怖いって言いますもんね。

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