第15話 「しょしんしゃがりとのエンカウント」
ようやくいい感じの悪い人と会えました
21年、加筆修正
「た、助けてくれ~!」
そんな声が聞こえてきたのは、B6攻略中であった。放って置けない兄さん(エミー命名)と、その愉快な仲間たちはその声のしたほうへと向かっていく。そして、俺たちはというと。
「ふむ、罠じゃろうな」
「罠だろうな」
ひっかかるわけがなかった。戦闘音なし、周辺に魔物の残骸もなし、曲がり角の向こうの部屋。全てが怪しすぎるのである。そして何よりも・・・。
「向こうからドス黒いオーラを感じる・・・ありゃあ、放って置けない兄さん達は死んだな」
エミーが微動だにしなかったことである。空気中の魔力が不安定になりやすいダンジョン内でさえ、魔法の補助なしでも約300m先までほぼ把握できるらしいエミーが動かないということは、そういうことなのだろう。本当に誰かが襲われていたとしたら、少しでも顔に出たりするからである。
「お、おいどうしたんだ!・・・ぐあああああ!」
「り、リーダー!?ぎゃああああ」
「ちょ、ちょっと何!・・・きゃああああ」
はい、全滅。とりあえずご冥福だけは祈っておいてやろう。
「えっと・・・迷える子羊の魂を、どっか適当に眠れる場所まで導きたまえ~・・・だっけ?」
「昔からそうだったが貴様、神のこと嫌いすぎじゃろ」
「あの頃の夢は『神様をぶん殴る』だったからな。今でもそうだ」
「き、貴様という奴は・・・」
そんな話をしていると、曲がり角の向こうから話し声が聞こえてきた。仲間とでも合流したのだろうか。
「ふむ、別に始末してやっても構わぬのだが、バックに誰かいるかも分からん、面倒事になるかもしれんのぅ」
「どうする、帰る?」
「そうするか・・・と思ったが」
「うん?」
「間に合わなかったようじゃな」
「何に間に合わなかったんだい?お嬢ちゃん」
そう言いながら、正面奥の曲がり角から血まみれの軽戦士のおっさんが出てきた。
まずいな。クロはそう思っていた。そして、今晩の飯は何を食おうかと考えていた。
面倒だな。エミーはそう思っていた。そして、この男のバックに誰もいないとは限らないと考えていた。
カモだな。男はそう思っていた。そして、このことをどうやって仲間たちに知らせようかと考えていた。
両者、睨み合いながら相手の出方を伺っている。そのように、周りから誰かが見ていれば言っていたであろう。しかし、ここにいる3人の中で目の前の『戦闘』のことを考えていたのは、終始、この初心者狩りの男ただ1人だけであった。
3人の冒険者を一瞬で屠ってしまった初心者狩り。クロ達は、彼に勝つことは出来るのだろうか(目を逸らしながら




