第09話 「テンセイかフッカツか」
21年、加筆修正
――夜・宿屋――
「・・・さて、ここが私達の過ごしていたあの頃から約1000年が経っていたわけじゃが」
「いやどういうことだってばよ」
あの後、質屋に行って『当時の』金貨を換金しにいったところ、それっぽい反応をしていたので間違いはないだろう。店員の爺さんの目がヤバい感じになっていたが、まぁ俺たちには関係ないだろう。
「ふむ、こうなってしまうと国がどうとか眷属がどうとかよりも、ただ単純に世界中を観光とかしてみたくなってしまうのぅ」
「いやいや、ここは『どうにか元の時代に戻る方法を探す』とかじゃないのか?」
「何故戻る必要がある?」
「いや、何故って・・・」
「貴様と私が殺しあわなくていいこの時代と、貴様と私のどちらかしか生きられない時代の、どちらがいいのだ?」
「すいません僕が間違ってました」
言われてみればたしかにそうだ。あんなクソみたいな時代から別れられたと思えばそれだけでも十分かもしれない。さらに付け加えるなら、エミーと旅ができるのだ。それ以上の至福が、この世にあるだろうか。
「・・・おい、また獣の目になっておるぞ。」
「おっと・・・つい」
「そもそも、元の時代に戻れる保障なんぞ、どこにもないのだぞ?まだ、私達が『転生』したのか『復活』したのか、それすらも分からんのだからな」
「ん?それって・・・何が違うんだ?」
「そこからか・・・」
そこからのエミーは長かった。受付さんよりも、長かった。自分なりにザックリと要訳すると、『召喚された』のか、『作り出されたか』の違いと同じような感じらしい。もっと細かい説明などもあったが、俺の頭ではこれが限界だった。
「・・・よし、ようやく理解したようじゃの」
「10を聞いて1を知るとはこのことか・・・」
エミーの説明が終わった頃には、すでに日が昇っていた。
「全く、貴様は物分りが悪すぎじゃろう・・・」
「いっそ清清しく貶してくれ・・・そのほうがまだマシだ」
「なんと、貴様はマゾヒストであったか」
「違うって・・・というか疲れた。寝る」
返答も億劫なほどに俺は疲れていたらしい。いつも使っている筋肉とは別の筋肉(脳)を使ったからだろうか。
「あっ、待て!まだ今後の話が」
「ぐぅ」
この辺りで俺の意識は途絶えた。
全く進んでいる気配がありませんが、これでも私の中では順調です。気長~に見てやってください。




