第二話 見えた道
『おぉ……、この輝き方は!!』
便宜上"前回"と呼ぶが、前回の俺は魔力測定の際に前代未聞の潜在魔力を見せた。そして、周りに褒められ流されるまま王都へと向った。
問題は俺が勇者となるのは逃れられないと言う事実。潜在魔力を測定する水晶は、どれだけ魔力を隠そうとしてもそれを看破するからだ。そして、なにより"勇者"は一人しか存在しない。
もし、俺が勇者とならなかった場合。現在要る魔王がそのまま世界を崩落させて、終わり。そんな未来が待っている。
「リューク!楽しみにしてた測定の日だよ?魔法使いたいって言ってたもんね!早くしてよ?」
測定は村で一番の家、当然村長の家なのだが。そこで執り行われる事となっている。ゆえにある程度の恰好をする為、支度をするのだが考え事が過ぎシルフィに怒られてしまった。
「あぁ、今行くから少し待っててくれ」
軽く現状を纏めよう。今、俺が分かっている情報は。
・俺は今人生をやり直している(大前提であり、今俺の見ているコレが幻想だとしてもだ)
・人生をやり直している為、勇者の旅で作り上げられた肉体は無い。自分の身体の動きが想像した最善の動きよりも悪い事から分かる。
・シルフィは、まだ俺と付き合っていない。この頃から俺はシルフィを好きだったが、旅の途中で告白するまでは仲の良い幼馴染だった。
そして、軽く現状を確認していて一番の収穫だが
「≪我、原初の魔法を望む者。火を操りて、我が望む物を燃やせ≫【初級魔法・火起】」
目を閉じながら身体の中の魔力の流れを操作し、自室の外で待っているシルフィに聞こえない声で詠唱する。目を閉じたまま詠唱を完了させると、ほのかに感じる熱量に目を開き。そして、自分が握った筆の先に火が灯っているのを確認し俺は笑った。
そもそも魔法は、"知識"と"イメージ"と"魔力"が必要で。逆を言えば、それさえあれば行使可能であるということだ。俺は知識が有る。イメージも出来る。そして、勇者の素質のある俺は魔力も有る。
今回の俺は、最初から魔法を扱える。これだけの事実だが、俺は神に感謝した。そして直ぐにそれを撤回し、俺は筆に灯ったままの火を振り消した。魔法が扱えれば、前回取れなかった行動が取れる。
絶対に俺はシルフィを死なせない。その為には手段を問わないつもりだ。
「もう!!いつまで待たせるの?」
「悪い悪い、さ。行こう」
しびれを切らしたシルフィが部屋の扉を開いて膨らんだ頬を見せながら怒って来る。
このあどけない顔を守る為に、俺は前回を教訓に全てを変えて見せる。そんな決意を胸に、前回の俺が癖になっていたシルフィの手を握った。
「う、うぇ?リュ、リューク?」
「どうした?少し時間押したから走ってくよ」
顔が赤いシルフィを笑いながら、俺はお袋に声をかけて走り出した。
少しだけ、こうやって安全な時に良い思いをするぐらいは許されるだろう?